一見、匿名性の高く見えるネットの世界では、つい本音が出てしまうといったことが少なくない。
日本でも一部の男性ネットユーザーに見られる傾向だが、韓国では「女性嫌悪」が社会的イシューになってしまっている。
ネット上はもちろん、学校や職場などでも女性に対する侮辱行為や言葉が見受けられ、そのレベルはとても女性大統領が牽引する国とは思えないほどだ。
ネット上では昔から女性を侮辱する言葉が次々と作られてきたが、最近頻繁に使わるのが“キムチ女”である。
もともとは「デート費用はすべて男性が負担して当たり前」と考える図々しい女性を指す俗語だったが、ネット上ではいつの間にか韓国女性全般を指す言葉として使われている。
ちなみに、日本女性のことは“寿司女”と呼ぶ。
「非常識なキムチ女と違って、寿司女の振る舞いは素晴らしい」という褒め言葉として使われているらしいが、いずれにせよ、あまりよい響きではないだろう。
15万人が「いいね!」を押しているFacebookの「キムチ女」コミュニティページのあらゆる女性侮辱コンテンツを見ても、韓国に広まっているミソジニー(女嫌い)が深刻な状態であることがわかる。
ある男性お笑い芸人がポッドキャスト番組で「女は頭が悪いから男にはかなわない」「処女じゃない女には怒りを抑えられない」などの侮辱発言を口走った過去が明かされ、大きな話題にもなった。
彼の発言に最も憤慨したのは、ネットの女性限定コミュニティ「女性時代」の会員たち。女性関連のニュースに敏感に反応し、世論を主導する韓国最大の女性コミュニティだけあって、彼に対し「女性嫌悪勢力だ」「謝罪しろ」など、芸能活動を自粛せざるを得ないほどの非難を浴びせた。
韓国には、日本の2ちゃんねるに例えられる「イルべ(日刊ベスト)」という巨大掲示板をはじめ、数多くの掲示板が存在するのだが、お笑い芸人の女性侮辱発言騒ぎをきっかけに、「女性時代」はまさに彼らの公衆の敵となった。
例えば、「女性時代」の一部の会員たちが非公開掲示板で日本のBL漫画や小説、美少年たちのゲイ動画などを違法配信していたことが暴露されている。
表では道徳的な正義感を振りかざしていたのに、裏で成人コンテンツを楽しんでいる彼女たちのダブルスタンダードに、ネット民の多くは激しい嫌悪感を示すことに。
ネット上のミソジニストたちはその勢いに乗って一致団結して彼女たちを罵倒した挙げ句、伊藤潤二のホラー漫画のセリフを変えたパロディーを配信。彼女たちを最狂集団に仕立て上げるという“男女対戦”状況を作ったのである。
こうした女性嫌悪はネットを超え、現実世界にも表れている。
最も影響を受けているのは、ネットに触れる機会の多い学生たちだろう。最近の高校では、男子生徒が同じクラスの女子生徒に対して「女のくせに」といったセクハラや侮辱発言を罪悪感なく口にするのが普通だというのだから、彼らの未来が心配になってくる。
いくら儒教の国とはいえ、今は21世紀。いまだに女性は無知で、非合理的な考えを持っているという偏見は、いくらなんでも時代遅れ。男性に見切りをつけた女性のなかで、“おひとりさま”ブームが起ころうとしているのも偶然ではないだろう。
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