大手コーヒーチェーンのスターバックスが、2020年までに全世界の店舗で使い捨てプラスチック製ストローの使用を廃止するという。マクドナルドやバーガーキングも、同じくプラ製ストロー廃止への動きを見せている。
いわゆるマイクロプラスチック問題への取り組みの一端だが、韓国もいよいよ本格的なプラスチック退治モードに突入するという。
韓国では過去に「殺人加湿器事件」や「殺虫剤入り卵事件」など、化学物質によるトラブルを経験しているだけに、どんな対策を練っているのか気になって調べてみた。
まず、その消費量だ。
2016年の調査結果によると、韓国は1人当たりの年間プラスチック使用量が98.2kgで、世界で最も多いという。
こういった状況を見越したのか、韓国の行政機関のひとつである環境部は、2010年ごろから大型スーパーを対象にビニール袋販売全面禁止を推進し、コンビニなどではビニール袋を有料化するなど、それなりの規制をかけてきた。
ちなみにビニール袋が有料化したばかりの2016年には50代の男性が20ウォン(約2円)のビニール袋代を要求したコンビニ店員に逆上、殺害する事件が起きている。
そもそも韓国でコンビニ店員と客がもめたという話はよく聞こえてきたが、いくら“火病(ファビョン)”が蔓延するとはいえ、殺人事件まで起きてしまうほどだっだのだから衝撃的だった。
中国が資源ごみの輸入禁止措置を打ち出した今年4月には、韓国の一部リサイクル業者がプラごみの回収作業を中断するという事態が発生し、数多くのアパート団地内で回収されないごみが山積みになる珍風景が繰り広げられた。
韓国社会にさまざまな課題を投げかけたこの“プラごみ大乱”をきっかけに、5月には「2030年までプラごみ発生量を現在の50%に減縮し、リサイクル率を34%から70%へ引き上げるための総合対策を推進する」と、韓国政府が発表している。
青瓦台(チョンワデ:韓国大統領府)はプラごみを減らす取り組みの一環として、早速ゲストの記念品をマグカップに変え、全職員にもマグカップを支給したというだから、それなりの本気度が伺えるだろう。
この流れに乗って、先日の8月2日からソウル市のコーヒーおよびファストフード店におけるプラスチック容器の規制がスタートした。
使い捨てプラ製容器は持ち帰りの場合のみ使用可能で、店内での使用は一切禁止されるという内容だが、これがまた大きな混乱をもたらしているらしい。
そもそも、韓国はカフェがコンビニより2倍ほど多く、スターバックスの数が世界で5本指に入るほど多い“コーヒー好き”だ。“カフェ巡り”のために日本へ訪れる人もいるというから、コーヒーへのこだわりは相当なものである。
韓国農林畜産食品部が2017年10月に発表した報告書によると、成人1人あたりの年間コーヒー消費量は400杯。2012年には288杯だったのが、毎年平均7%ずつ増え続けているという。
もはや韓国人にとってコーヒーはもはや嗜好品ではなく、必需品になりつつあるわけだが、その一方でコーヒーにまつよるトラブルも絶えない。バスの車内にコーヒーを持ち込んだ乗客同士の“コーヒートラブル”が頻繁に起きていた。
そういうこともあって、プラ容器規制による混乱も起きているという。
韓国のカフェではマグカップの使用に抵抗感を表す客と店員がもめたり、マグカップの数が足りずにアイスドリンクを紙コップで提供したりといったトラブルがあちこちで起きた。
アイスドリンクの需要が増える猛暑真っ只中だけに、規制について知らなかった市民の中には苛立ちを覚えた人も多かったという。
ただ、過渡期を乗り越えれば、いずれ“脱プラスチック”もうまく定着しそうな気配もある。
実際に、さまざまなカフェチェーンがプラスチックの代わりに紙で出来たストローやストローなしで飲めるドリンキングリードの導入を進めているようで、マイボトル利用時には割引サービスを提供するチェーンも出てきているとか。
コンビニ業界もココナッツの皮で作られたお弁当容器や、プラスチックのいらない包装方法を導入するとの対策を出している状況だという韓国。こうした隣国の動きは、日本の「マイクロプラスチック問題」を考えるうえで、ひとつの参考になるではないだろうか。
文=慎 武宏
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