北朝鮮との冷戦状態にある韓国では、いまだに若者たちを対象にした約2年間の徴兵制度が実施されている。厳しい軍服務期間は外との関わりをほとんど持てなかったが、ここ数年になって徐々に解放されてきた。
その最大の転換点が、2019年4月に韓国国防部が執った「兵士のスマートフォン使用許可政策」だ。それまでは一部だけがテストケースとして使用を許されてきたものが、全面的に解禁された。
その際、問題となったのが通信制限と料金だ。実際に軍務をこなしている間、Wi-Fi環境がない場合がほとんどであり、通常のデータ通信が主流となるだけに、無制限ではもったいないが、使用量が制限されたプランを使うとそれでは足りないという事態が起きたのだ。そのため、スマートフォン料金を通じて貧富の格差が起きる懸念があった。
それを解消するために国防部は、スマートフォン各社と交渉し、韓国では軍人限定の格安プランが誕生することになった。これによって軍内部でスマートフォンによる格差が生まれることもなくなった。
しかし、こうしたスマートフォンの解禁は、すべてがプラスに働いたわけではない。実は軍人がスマートフォンを持ち込めるようになってから、不法賭博の事例が急増したことがわかったのだ。
7月4日、国防部から提出された資料によると、2017~2021年に部隊で一般兵が不法賭博を利用して摘発された事例は、計1557件に上り、摘発総額は605億ウォン(約60億5000万円)に達することがわかった。
年度別には、 2017年52件(26.6億ウォン)、2018年104件(32.5億ウォン)から、“スマホ可”となった2019年535件(169.4億ウォン)、2020年564件(237.6億億ウォン)となっており、2019年のスマートフォン解禁時には摘発件数が5倍に増加した。
この結果には韓国内でも「軍人には用途を限定した端末を与えるべき」「軍服務期間には国防に専念しなければならない。携帯電話は国防に必ず必要な事項でもなく、将兵の福祉向上手段にもなれない」「軍務中にスマートフォンが本当に必要なのだろうか」など、批判的な意見が多く上がっている。
現代人にとってスマートフォンは、もはや己の一部といえるほど、生活に密接している。若い軍人に使用を許可するのはいいのだが、厳格なルールがなければより悲惨な事態になる可能性もあるのではないだろうか。
(文=サーチコリアニュース編集部)
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