「医学部定員増のうち、2000人を非首都圏の医学部を中心に大幅に配分し、地域の必須医療を強化する」
この尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「公約」は、わずか1年で「空約」になりつつある。
「2000人の増員」は実現せず、ようやく増やした1500人ですら、大半が授業を拒否しているからだ。
韓国教育部は、新学期に合わせて圧力をかけるメッセージを出したが、医学部生たちはまったく動じる気配がない。さらに悪いことに、医学部増員を掲げた尹大統領が弾劾訴追され、政府の統制力が失われた状況だ。
最大野党「共に民主党」のチン・ソンミ議員が3月4日、教育部から提出を受けた資料「2025年度1学期の医科大学受講申請現況」によると、2月25日時点で全国40の大学医学部の受講申請者数は計4219人だった。
40校のうち、10校では1人も受講申請をしていなかった。そのため一部の大学では、開講を延期した。カトリック大学医学部は、予科1年生と本科の両方の開講を4月28日に延期した。
2025年の医学部新入生のうち、3分の1は尹政権の「定員増加政策」によって入学した学生だ。
本来、医学部の入学定員は3058人だった。しかし尹大統領は、医療改革の一環として「定員2000人増」を打ち出した。2024年2月20日の閣議で、尹大統領は「この数(2000人)でもまったく足りない」とし、「2000人増員は文字通り最低限の拡充規模だ」と政策を推進した。
しかし医療界と教育界の反発を受け、最終的に前年比1497人増に調整された。
こうして入学した新入生までもが大規模に授業を拒否している背景には、先輩の影響があると指摘されている。
教育関連のコミュニティには、「うちの子は先輩に説得されて、雰囲気的に(授業ボイコットに)同調したらしい」「授業拒否の投票も行われたらしい。今年は留年させられそうで不安」「新入生に休学を強要するのは違法ではないのか」といった、学生や保護者の複雑な心境を綴った投稿が相次いでいる。
閉鎖的な医学部の特性上、先輩の意向に逆らうのは難しいとの声もある。
医療関係者は「すべての活動が先輩や仲間と共に行われる。特定の医局に入れば、一生顔を合わせることになる可能性がある」と述べ、「独立的に授業を受けたり、実習に出たりすることは不可能に近い」と説明した。
試験の過去問題集を受け取るためにも、先輩の機嫌を伺わざるを得ないという嘆きも聞かれる。
授業を受ける学生への「烙印」も新入生にとって負担になっている。医師・医大生向けの匿名コミュニティ「メディスタッフ」では、集団行動から離脱した延世(ヨンセ)大学医学部の約50人の実名リストが共有されたと報じられた。
このコミュニティでは、復学した学生への嘲笑も横行していたという。こうしたオンライン・オフライン双方の圧力が、最終的に学生を授業拒否へと追い込んだとみられている。
医学部の先輩たちは増員政策に反発し、昨年に続き今年も集団休学している。
チン・ソンミ議員室によると、2024年の第2学期、全国40の医学部の出席率はわずか2.8%だった。つまり、在籍学生100人中3人しか授業に出ていなかったということになる。
学生の出席が10人未満だった大学は22校にのぼり、1人も出席しなかった大学は7校に達した。
教育部は、授業を拒否する新入生に対し、圧力をかけるメッセージを発信した。教育部のキム・ホンスン医大教育支援官(局長)は、記者会見で「2025年度の入学生は増員を知った上で入学したのだから、定員増加を理由に授業を拒否するのは正当ではない」とし、「授業を拒否する2025年度生には、大学が学則を厳格に適用する」と警告した。
しかし、こうした教育部の警告が医学部生に効果をもたらす可能性は低いとの見方が支配的だ。
結局のところ、昨年と同様に、政府が集団休学を認めるのではないかとの観測が強まっている。これを意識したのか、キム局長は「今年は集団休学の一括承認など、学事上の柔軟な対応を絶対に許可しない」と強調し、「大学が休学生の処分を学則通りに行うか監視する」と付け加えた。
専門家は、学生の復帰には「増員の全面的な見直し」が避けられないと指摘する。
保健医療団体連合のチョン・ヒョンジュン政策委員長は、『時事ジャーナル』との電話取材で「今すぐ医学部生や研修医を復帰させるには、尹政権の定員増政策を完全に撤回し、医療界の要求を受け入れるしかない」と述べ、「教育部の勧告が通じないことは、この1年間で明らかになったのではないか」と疑問を呈した。
チョン委員長は「医師として、定員は段階的に増員すべきだと考えるが、医師たちを論理的に説得できる強力な根拠資料が必要だ」と指摘し、「医療人材の需給調整を担う独立性と客観性が確保された機関を通じて、定員増を再調整すべきだ」と強調した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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