冬が例年になく長引いたことで、心の寒さまでもが一緒に長引いた。
まもなく訪れるかと思われた春はたびたび足踏みし、冬が残した不安は、時を忘れたかのように降り注いだ3月の大雪のように、突如として冷たく身を刺す。
韓国の憲法裁判所による大統領弾劾審判の宣告が遅れ、国民の日常は「一時停止」を超えて、より濃い暗闇の中へと沈み込んでいった。
世の中が元の姿を取り戻すにせよ、再び揺らぐにせよ、「食の力」だけはしっかりと満たしておかなければ耐えられないはずなのに、その一膳すら確保するのが容易ではない。
弾劾政局という長いトンネルに閉じ込められた庶民の日常は、またしても苦しくなっている。あちこちで弾劾審判の宣告をめぐって内戦を懸念する声が上がっているが、国民の生活そのものがすでに内戦状態だという見方もある。
何よりも、民生と切っても切れない食品の価格が次々に値上がりしている。
ラーメン、パン、ハンバーガーなどの価格が、まるでこの時を待っていたかのように一斉に値札を付け替えた。統計に現れた数字も穏やかではない。2月の生産者物価指数は、2024年11月以降4カ月連続で上昇傾向を続けている。
特に、国民の暮らしに密接に関係する農産物と水産物の価格上昇の流れが尋常ではない。農産物の生産者物価は2月に3.6%、水産物は1.0%上昇した。物価がこれほど上がれば、当然ながら消費は冷え込む。韓国銀行が発表した3月の消費者心理指数は93.4で、前月より1.8ポイント低下した。
自分で食事を用意して食べたり、買って食べたりする人々と同様に、食事を提供することで生計を立てる人々の生活もまた厳しい。自営業者たちの悲鳴が今、各地で鳴り響いている。
その中でも、デモが行われる広場の近隣にいる商人たちは、弾劾政局の破片を最前線で受ける被害者として注目すべき存在だ。憲法裁判所の周辺で飲食店など各種店舗を経営する人々のため息は特に深い。早く終わると思われていた周辺のデモが、憲法裁の宣告遅延により長期化し、売上の減少という泥沼にはまっていると語る人が多い。
「これまでこんなことはなかった。家賃の支払いすら困難で、商売を続けられるか悩んでいる」と語るある商人の言葉のように、彼らは毎日が戦争のような日々を耐え抜いている。
憲法裁の前で記者会見を行った小商工人・自営業者団体の代表は、「デモがあるたびに『お前たちだけがつらいのか』というコメントがつく。自営業者は国民からも踏みにじられている」と訴え、「自営業者・小商工人の人権はどこにあるのか」と嘆いた。
憲法裁判所をはじめとするデモ現場近くの商人たちを苦しめているのは、当面の売上減少だけではない。一部の商人は、突発的にかかってくる思想検証の圧力にもたびたび苦しめられていると訴える。
間違って目をつけられると「左派の店」「右派の店」と烙印を押され、いわゆる評価テロ(レビュー荒らし)を受けることも少なくないという。「料理に左派や右派があるのか」と語るある飲食店主の言葉も、過激なデモ参加者の前では空しく響くばかりだ。
高物価・高金利・高為替という“三高”と、国政の不確実性の中で、内需経済の一翼を担う自営業・小商工人たちの体力は日に日に衰弱しているが、いまだにこれといった物価対策、自営業者・小商工人対策は聞こえてこない。
弾劾政局を一刻も早く終わらせるべきであるのと同様に、「民生の冬」も急いで送り出さなければならない。国民が楽になってこそ、国家も楽になり、民主主義も安定するのは当然だ。
自営業者・小商工人への支援、物価の安定、山火事の被害復旧や被災者対策など、今まさに目の前に積み重なっている課題は多い。それだけに、政府と国会が弾劾問題以外にも民生のために「何か仕事をしている」と明確に示すことが重要だ。
深まるばかりの国民の飢えは、そうした希望の光が差してこそ、ほんの少しでも満たされるのだ。
(記事提供=時事ジャーナル)
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