2017年に発生した性暴力事件の加害者として、約7年後に逮捕・起訴された30代の韓国人男性が、最終的に実刑ではなく、執行猶予付き判決で釈放されたことが明らかになり、韓国国内で波紋を呼んでいる。
事件の舞台となったのは、2017年9月に仁川(インチョン)市内で開催された、ある地域の祭り。その仮設テントの中で、30代の男性Aと共犯のBが、酒に酔っていた女性Cに性的暴行を加えたとされている。当時、AとBは現場から逃走し、事件は“未解決”のまま捜査が難航していた。
転機が訪れたのは2023年。Bが別件の性犯罪容疑で京畿道・果川市(キョンギド・クァチョンシ)で逮捕された際、警察が採取したDNAが、2017年の事件現場に残されたDNAと一致したことが判明。Bは取り調べで「ともに犯行に及んだ」と供述し、Aの関与が明らかになった。
一方のAは逮捕直前まで、京畿道の女子高で行政職の公務員として勤務していた。勤務中は過去の犯罪歴なども知られていなかったとみられる。
結局、Aは「性暴力犯罪の処罰などに関する特例法(特殊準強かん罪)」の容疑で起訴され、これまで拘束状態で裁判を受けてきた。韓国の同法は、複数人による性暴力や、凶器を使用した暴行など、被害者の抵抗を困難にする状況での犯罪を厳罰化する目的で設けられており、通常は重い実刑が科されることが多い。
3月に行われた公判で検察は、Aに対して懲役5年を求刑。「被害者との合意が成立しておらず、犯行は悪質そのもの」と厳しく指摘していた。
しかし、4月9日に仁川地裁・富川(プチョン)支院で行われた判決公判で裁判所は、Aに対して懲役3年・執行猶予5年を言い渡した。つまり、実刑にはならず即日釈放されたのだ。
裁判所がこのような判断を下した背景には、前日に被害者との間で「処罰を望まない」とする合意書が提出されたことがあった。韓国では刑事事件においても、被害者との合意(示談)が量刑に大きな影響を及ぼす場合がある。
判事は「量刑に関して非常に悩んだが、被害者が処罰を望まない旨を示しており、被告人が初犯であることも踏まえた」と説明。「事件を通じて被告人が社会的信用や職業を失った点も勘案し、執行猶予付きの判決とした」と述べた。
加えて裁判所は、Aに対して120時間の社会奉仕、40時間の性暴力加害者向け講義の受講、そして5年間の児童・青少年・障がい者関連施設への就業禁止措置を命じている。
ただし、SNSやネット上では「7年も逃げ続けたうえで、合意書一枚で実刑を免れるのはおかしい」といった厳しい声も多く、韓国の刑事裁判における“合意の重み”について改めて議論が起こっている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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