韓国では2024年、廃業した自営業者が98万6000人に達したことが明らかになった。廃業率は9%で、新型コロナウイルスのパンデミック時(92万2000人)の数値を上回っている。
景気低迷の長期化や金利上昇、最低賃金の引き上げなどが重なり、零細自営業者が次々と廃業に追い込まれている状況だ。新規開業に対する廃業率も2013年以降で最高水準を記録した。
2024年、個人事業者として114万7000件が新たに開業した一方で、91万件(79.4%)が廃業した。つまり、自営業者10人が新たに開業する間に、8人が廃業している計算になる。
今年の状況も厳しい。1月20日(現地時間)に就任したドナルド・トランプ大統領の通商政策の変化と、韓国内の政治的不確実性が重なり、消費者心理が急激に冷え込んでいるためだ。
最近発表された消費者心理指数は、2008年の世界金融危機以来、最大の下落幅を記録した。自営業者にとって、綱渡りのような状況が今年も続く可能性が高い。
フランチャイズ加盟店のオーナーたちは、さらに大きな負担を背負っている。忘れた頃に再燃する本部側の「オーナーリスク」がその一因だ。
経営が厳しいなかで踏ん張っているにもかかわらず、本部オーナーの不祥事によって消費者の不買運動というリスクまで背負わされている状況だ。
韓国で有名なフランチャイズ「キムガネ」がその典型例だ。
韓国警察は2024年末、キムガネ創業者のキム・ヨンマン会長を起訴意見付きで検察に送検した。女性従業員に性的暴行を加えようとした疑い(準強姦致傷および性暴力処罰法違反)を受けている。また、キム会長には横領の疑いも浮上している。被害女性との示談過程で会社の資金を不正流用した疑惑が持たれているのだ。
この事件の後遺症は大きかった。オンラインコミュニティを中心に「キムガネ不買運動」の動きが広がりつつある。当然ながら、その被害は加盟店のオーナーに降りかかるが、当事者であるキム会長は経営権争いにしか関心を示していない。
事件が発覚した当初、キムガネ本部はキム会長を解任し、息子のキム・ジョンヒョン氏を代表に任命した。そして「加盟店オーナーと被害女性の二次被害を防ぐため、最善を尽くす」とも発表していた。だが、この約束はわずか数日で反故にされた。
会社が混乱している隙を突き、99.4%の株式を保有するキム会長がひそかに経営へ復帰したのだ。その後、キム会長は息子を解任し、社内取締役だった妻のパク氏も退職させた。一方、息子のキム前代表と妻のパク氏は、キム会長の職務を停止させる仮処分申請を裁判所に提出し、事態はさらに混迷を極めている。
こうした状況を見かねた一部の加盟店オーナーは、フランチャイズ契約を解除したり、店舗の看板を変更したりしているという。しかし、残る400以上の店舗オーナーは、何もできずに苦しんでいる。匿名を希望したある加盟店オーナーは、「事態が落ち着くのを待つしかないのが現実だ」と嘆いた。
創業専門家たちも同様の見解を示している。創業通TVのキム・サンフン代表は、「フランチャイズ業界では短期間で成功し撤退するブランドが多いなか、キムガネは比較的長く存続し、一定の評価を得ていた。最近は業績がやや落ちているが、新規出店は続いていた」として、「しかし、オーナーの不祥事に加え、経営権争いまで発生し、ブランドイメージの悪化は避けられない。その影響は加盟店オーナーが直接受けることになる」と語った。
実際、フランチャイズ業界ではオーナーリスクによって加盟店が被害を受ける事例が少なくない。
ピザチェーンの「ミスターピザ」がその代表例だ。2015年まで韓国ピザ市場でトップのブランドだったが、2016年以降、成功神話が揺らぎ始めた。
創業者のチョン・ウヒョン元MPグループ会長がソウル市内の商業ビルで、警備員を暴行した事件が発覚したためだ。この騒動は瞬く間に広がり、消費者の間で「ミスターピザ不買運動」が一気に拡大した。
チョン会長は被害者の警備員に謝罪し、公式ホームページにも謝罪文を掲載した。2017年には経営から退いたものの、消費者の怒りを鎮めることはできなかった。
その後、ミスターピザは低迷の一途をたどった。かつてシェア40%以上を誇り、400店舗あったフランチャイズ加盟店は、2022年には183店舗まで縮小した。売上減少により、営業利益と当期純利益もすべて赤字に転落。経営権は何度も移ったものの、状況は好転しなかった。
最終的にミスターピザの運営会社であるDaesan F&Bは、2023年1月にピザ事業部門を物的分割し、新法人を設立した。この過程で横領・背任事件が発生し、Daesan F&Bの元・現職の経営陣の間で法的紛争が起こった。
加盟店オーナーたちも大きな被害を受けた。公正取引委員会のフランチャイズ事業情報提供システムによると、ミスターピザ加盟店の売上(3.3平方メートルあたり)は2021年の868万4000ウォン(約92万円)から、2022年には674万7000ウォン(約71万円)へと1年で22.3%も減少。平均売上も2億ウォン(約2100万円)台で、競合であるドミノピザ(8億ウォン台)や後発ブランドのBANOLIM PIZZA(5億ウォン台)と比べて大きく劣る状況となった。
それにもかかわらず、ミスターピザはフランチャイズ契約を解除した加盟店の近隣に新店舗を出店する「報復出店」を行い、4億ウォン(約4200万円)の課徴金を科され、検察に告発された。
フライドチキンレストランチェーンの「キョチョンチキン」の状況も似ている。
数年前までキョチョンチキンは、業界トップの座を不動のものとしていた。醤油ソースを使った「キョチョンオリジナル」がヒットし、「レッド」や「ハニー」といった独自の味付けも相次いで成功。創業者のクォン・ウォンガン会長が独自に開発した醤油ガーリックソースが、フライドチキンとヤンニョムチキンが主流だった市場に新風を吹き込んだ。
しかし、2019年にオーナー一族によるパワハラ問題が発覚し、ブランドイメージが大きく傷ついた。会長の6親等の親族で会社の役員を務めていたクォン・スンチョル常務が、飲食店の厨房で従業員を暴行していた事実が遅れて明るみに出たのだ。
この不祥事の責任を取る形で、クォン会長は一時的に経営から退いたが、業績は回復しなかった。その間にキョチョンチキンは、bhcチキンやBBQチキンに押され、業界3位に転落した。
2023年末時点で、キョチョンチキンの売上は4259億ウォン(約48億円)、営業利益は240億ウォン(約25億円)となり、前年と比べて売上は14.6%減少し、営業利益も16.4%縮小した。株価の下落幅はさらに大きい。この1年間でKyochon F&Bの株価は35.4%下落。2020年11月12日の上場時に記録した最高値(3万1000ウォン)と比べると、83.5%もの下落となった。
加盟店オーナーたちもまた、オーナー一族のパワハラ問題の被害者となった。キョチョンチキンの加盟店の売上(3.3平方メートルあたり)は、2021年の3510万ウォン(約370万円)から2022年は3491万ウォン(約368万円)、2023年には3183万ウォン(約336万円)と2年連続で減少。平均売上も7億5372万ウォン(約7900万円)から6億9430万ウォン(約7300万円)へと7.9%落ち込んだ。加盟店数がわずかながら増加した点が、他のオーナーリスク企業との違いといえる。
このほかにも、「ホシギ二羽チキン」「Bon Goussボブバーガー」「BBQチキン」「SPC」「アリラーメン」などのオーナーたちが不祥事に関与し、そのたびに消費者の不買運動が起こり、加盟店オーナーたちが苦境に立たされてきた。
韓国政府は2019年から、「フランチャイズ本部や経営陣の違法・不正行為によって加盟店オーナーに損害が発生した場合、賠償責任を負わせる」という内容の「フランチャイズ取引の公正化に関する法律改正案」を施行している。
しかし、オーナーリスクと加盟店の売上減少の因果関係を証明するのは容易ではない。実際、一部のフランチャイズ加盟店オーナーが本部を相手取り集団訴訟を起こしたものの、ほとんどが敗訴しているのが現状だ。
専門家たちは「オーナーリスクによって被害を受けた加盟店オーナーを守るための現実的な対策が急務だ」と口をそろえている。
イタ創業研究所のキム・ガプヨン所長は、「加盟店オーナーも多額の資金と労力を投入している。しかし、本社や創業者は加盟店オーナーをビジネスパートナーではなく、単なる金儲けの手段と見なす傾向がある。これが最大の問題だ」と指摘する。
キム所長によれば、フランチャイズ業界のオーナーリスクの事例を詳しく見ていくと、「パワハラ」や「家庭問題」に関連するケースが多い。加盟費用を受け取り、一気に大金を手にしたことで自制心を失うケースが少なくないという。
このような業界の悪しき風習を変えていかなければ、第2、第3のオーナーリスクがいくらでも発生する可能性があり、その被害は結局、加盟店オーナーが背負うことになると警鐘を鳴らした。
創業通TVのキム代表は、「オーナーリスクが発生した場合、本社の法的な賠償責任を明確にし、無形の被害についても補償を受けられる基準を設けるべきだ」と提言した。
そのうえで、「現行のフランチャイズ取引法では、オーナーリスクによる加盟店の被害に対する賠償規定があるが、損害賠償に関する条項が抽象的で、被害の立証責任も加盟店オーナー側にあるのが問題だ」と指摘し、「フランチャイズ業界に蔓延するオーナーリスクを防ぎ、加盟店オーナーの被害を防ぐためには、関連法の見直しが必要だ。さらに、公正取引委員会が現在運営している『フランチャイズ事業情報提供システム』の情報公開書も、創業希望者がより実感しやすい形に改善する必要がある」と付け加えた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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