韓国の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が今度は「相続税減税」政策を掲げ、保守寄りの動きを見せた。
首都圏で1軒の住宅を所有する者を対象に、相続税の減税を推進するという。
しかし与党「国民の力」側は「狼少年の言葉を国民はよく知っている」と批判し、単なる空約束に終わるだろうと指摘。進歩系の「祖国革新党」をはじめとする野党内からも「進歩陣営に背を向けた」「今は減税を議論するときではない」との声が上がった。
これに対し、李代表は「世の中が変わったのに変えなければ、それこそ愚かだ」と正当性を改めて強調した。
最近、李代表と「共に民主党」は「相続税減税」のメッセージを繰り返し発信している。
「共に民主党」が推進する「相続税・贈与税法改正案」の骨子は、相続税の一括控除額を現行の5億ウォンから8億ウォン(約8410万円)に引き上げ、配偶者控除額を5億ウォンから10億ウォン(約1億512万円)に引き上げるというものだ。
これは、住宅価格の上昇を考慮し、相続税の基準を現実に即したものにするという趣旨だ。
李代表は2月14日に国会で開かれた「相続税控除の現実化を目指す政策討論会」の書面祝辞で、「上昇した住宅価格と変化した状況に合わせて相続税を見直そうという声が上がっている」とし、この方針を明らかにした。
さらに2月15日にはSNSで「共に民主党は一括控除額5億ウォン、配偶者控除額5億ウォンをそれぞれ8億ウォン、10億ウォンに引き上げる。この場合、最大18億ウォンまで非課税となり、首都圏の大多数の中産層が住宅を売却せずに相続できる」と主張した。
彼は2月17日の党最高委員会でも、「相続税の一括控除額と配偶者控除額は28年前に制定されたものだ。その間に物価や住宅価格はすべて上昇したのに、相続税の基準だけが据え置かれたため、税負担が増えている」と指摘した。
また、「超富裕層の税金は減らしておきながら、サラリーマンの課税基準は据え置かれたため、累進課税の枠に入り、実質的な所得は増えないのに税負担だけが増えている」とし、「減税ではなく増税を防ぎ、税制を公平にしようということだ」と、相続税の緩和を正当化した。
これに対し、与党「国民の力」は「空約束に終わる」と即座に批判した。
クォン・ヨンセ非常対策委員長は2月17日の非常対策委員会で、李代表の保守寄りの動きについて「とりあえず言ってみて反応を見ているだけ」と批判し、「李代表はつい数日前、半導体産業の労働時間に関する発言を翻し、補正予算案の全国民向け現金給付の項目を入れたり削除したりするショーを繰り広げた人物だ」と非難した。
キム・サンフン政策委員会議長も同じ場で、李代表の全国民向け生活支援金や半導体特別法の問題を取り上げた上で、「オオカミ少年の3回目の嘘は相続税になりそうだ」と述べた。
続けて「李在明代表は15日、自身のフェイスブックで今週中に相続税を処理すると述べ、国民の力が最高税率の引き下げに固執しているかのように主張した。しかし国民は、昨年12月10日に共に民主党が国会本会議で相続税・贈与税法改正案を否決したことを覚えている」と指摘した。
当時否決された相続税・贈与税法改正案も、子どもに対する相続税の人的控除額の引き上げ、事業継承における控除対象および控除限度の拡大、相続税・贈与税の課税標準と税率調整などを含んでいた。
これについてキム議長は「共に民主党は最高税率の引き下げに最初から強く反対してきただけでなく、実質的に相続税の議論そのものを遮断してきた。それなのに今になって国民の力が最高税率の引き下げに固執しているために議論が進まないかのように歪曲している」と批判した。
一方、「祖国革新党」をはじめとする進歩系陣営では、李代表の政策方針の変更に対し、不満を示す声が上がっている。
「祖国革新党」のキム・ソンミン代表権限代行は同日の最高委員会で、「税収が減少し、国家財政が厳しいなかでの減税政策は状況をさらに悪化させる」とし、「今、どのような形であれ減税を行えば、国家財政が必要なところに使われなくなる。今は減税を議論すべきときではない」と主張した。
また、「相続税は中産層の税金ではない。庶民は支払いたくても支払えない」とし、「2025年1月11日のソウル不動産広場情報によると、ソウルのアパートの平均取引価格は9億9544万ウォン(約1億467万円)と調査された」と指摘した。そして「2023年基準で、全体の被相続人29万2545人のうち、相続税を支払ったのはわずか1万9944人で、全体の6.6%に過ぎない。減税の恩恵は中産層や庶民にはほとんど及ばない」と強調した。
非・李在明派の有力政治家たちも、李代表に対して連日苦言を呈している。
キム・ギョンス前慶尚南道知事は「党のアイデンティティや路線を変更するなら、民主的な討論・熟議の手続きを必ず経るべきではないか」と述べ、キム・ブギョム前国務総理も「党の本質を規定する政策を代表が一方的に変えてはならない」と批判した。
特に「共に民主党」内では「李代表は進歩派の裏切り者だ。国民の力の大統領候補になってもおかしくない」という声まで上がった。
これに対し、李代表は2月14日のYouTube放送で「私は政治を始めたときから、成長しなければ分配もできず、豊かにもなれないという立場だった」とし、「保守寄りにシフトしたといわれるが、私はもともとこの立場だった」と反論した。
また、同日の最高委員会でも「世の中が変わり、状況が変化したのに、それに応じて変化しないのは愚か者だ。状況に応じて変化するのは当然だ」と述べ、「共に民主党はもともと経済中心の政党だ」と改めて強調した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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