多数の裁判を抱える「被告人」が大統領候補となるのか…李在明代表、側近の有罪判決で“司法リスク”深刻化

2025年02月17日 社会 #時事ジャーナル
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韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が、早期大統領選に向けた引き金を引いた。

【注目】韓国の“次期大統領候補”は李在明代表が40.8%で1位

だが「大統領再挑戦」の行方は、依然として不透明な状況だ。

罷免の危機に追い込まれた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の政治的運命とは別に、李代表を取り巻く司法リスクの足かせが依然として外れていないためだ。

李代表の主要な裁判の進行状況や判決のタイミングによって、大統領選の構図や与野党の政治的勢力図にも変化が生じる可能性がある。

一方、与党「国民の力」は、李代表や「共に民主党」にとって打撃となり得る側近たちの「相次ぐ有罪判決・拘束」を材料に、検察と司法当局への圧力を強めている。

岐路に立つ李在明、過去の大統領選が足かせ

「共に民主党」を率い、次期大統領選の最有力候補とされる李代表は現在、「5つの裁判・12の容疑」という難題に直面している。

そのなかでも、最も早く判決が出ると見られている公職選挙法違反に関する控訴審の行方が、李代表の大統領選出馬の可否を左右する指標となるとみられている。

検察の起訴から26カ月後の2024年11月に1審判決が出たが、控訴審は「迅速審理」の対象となり、3月中にも判決が言い渡される見通しだ。

特別な変数がなければ、尹大統領の罷免を審理する憲法裁判所の弾劾判決の時期と重なる可能性が高い。

控訴審の進行が速まるにつれ、法廷の緊張感も高まっている。特に控訴審の裁判部が検察に対し、「李代表の虚偽発言」を特定するよう求めたことで、検察と弁護側の攻防がさらに激化する見通しだ。

李代表は、当初2人だった控訴審の弁護団を、選挙法の専門家を含む7人に増員し、徹底抗戦の構えを見せている。

1審では、「キム・ムンギとのゴルフ写真は捏造された」「柏峴洞(ペクヒョンドン)開発に関連し、国土交通部からの圧力があった」という発言が、「当選を目的とした虚偽の事実の流布」と認定され、懲役1年・執行猶予2年の判決が下された。

「共に民主党」李在明代表
(写真=時事ジャーナル)「共に民主党」李在明代表

この判決が確定すれば、李代表は10年間被選挙権を失い、大統領選への出馬が不可能となる。また、罰金100万ウォン(約10万6000円)以上の刑が確定した場合も、国会議員の資格を失い、5年間の公職選挙出馬が禁止される。

李代表が「1審判決の覆し」に全力を注いでいる理由だ。

ソウル高等裁判所・刑事6-2部(チェ・ウンジョン、イ・イェスル、チョン・ジェオ部長判事)は2月12日、李代表の公職選挙法違反に関する控訴審の第3回公判で、起訴内容を明確にする必要があるとして、事実上の起訴状変更を求めた。

検察側は「起訴状に李代表の虚偽発言の内容はすべて記載されている」と主張したが、裁判部は「どの部分が該当するのか不明確だ」と指摘した。検察が起訴状に記載したのは、李代表が2021年12月、大統領選を前に4つのテレビ・ラジオ番組に出演し、「キム・ムンギを知らない」と発言した内容だ。

控訴審の裁判部は「キム・ムンギとゴルフをしていない」という趣旨の発言が、李代表の直接的な発言ではなく、検察の解釈によるものではないかとの点を問い詰めた。

裁判部は「海外出張中にキム・ムンギとゴルフをしていないというのは、被告人(李代表)の直接の発言ではなく、検察の解釈ではないのか」と指摘。これに対し、検察は「その通りだ。キム・ムンギとゴルフをしていないことを間接的に表現したものだ」と認めた。

さらに、検察は「オーストラリア出張中にキム・ムンギに関する記憶がないという李代表の発言を、ゴルフ問題と結びつけて考えると、一般市民は“李代表がキム・ムンギとゴルフをしていないから覚えていないのだ”と受け取るだろう」と主張した。

裁判部は、李代表の発言のうち、具体的にどの部分が虚偽に該当するのかを明確にするよう求め、検察は「検討する」と答えた。

控訴審の結果は、まもなく明らかになる見通しだ。裁判部は証人を3人のみ採用し、結審公判を2月26日に開く予定を再確認した。通常、結審公判の約1カ月後に判決が出るため、3月中には控訴審の判決が確定する可能性が高い。

李代表が申請した違憲審査の請求が裁判部に受け入れられれば、憲法裁判所の判決が出るまで裁判は中断されるが、すでに2021年2月、選挙法上の虚偽事実公表罪は「合憲」との判断が下されているため、李代表の申し立てが認められる可能性は低いと見られている。

部長判事出身のある弁護士は「控訴審開始時点から裁判部は新規の案件を受け付けないよう求めるなど、迅速に進める意向を示していた」とし、「政治的な関心が高い事件であるため、慎重な審理を経て、予測可能な時期内に判決を下すだろう」と見通した。

側近の有罪判決が続き、厳しさ増す

大統領選の行方を左右するのは、李代表の有罪・無罪を確定させる最高裁の判断だ。3月末までに控訴審が終われば、どのような結果が出ても上告は避けられない。

もし憲法裁判所が3月中に尹大統領の罷免を決定すれば、60日以内に大統領選を実施する必要があるが、その場合、李代表の選挙法違反に関する最高裁の判決よりも早く選挙が行われることになる。

法曹界では、控訴審が終わった後、最高裁への記録送付や全員合議体での審議などを考慮すると、判決まで数カ月はかかるとの見方が強い。

仮に李代表が党内予備選を勝ち抜いて大統領候補になったとしても、最高裁の確定判決と他の4つの1・2審裁判を抱えた「被告人」という立場からは逃れられない。

裁判の遅延戦略を批判されてきた李代表は、控訴審の終結が近づくにつれ、「早く終わるだろう」「早く決着するのが望ましい」と発言し、2審判決への自信を示している。

しかし弁護団を大幅に増員し、徹底抗戦の構えを見せている点からも「危機感の表れではないか」との指摘も出ている。

公職選挙法違反の控訴審と並行して、李在明代表の偽証教唆疑惑に関する控訴審も3月11日から本格的に進行する予定だ。

この事件の1審を担当したソウル中央地裁・刑事33部(キム・ドンヒョン部長判事)は、2024年11月に李代表に無罪を言い渡している。裁判部は「通常の証言要請と変わらず、弁護権を逸脱したとは見なしがたい」と結論付けた。

李代表は、自身の「検事なりすまし」事件に関連し、2018年12月、当時進行中だった公職選挙法違反の裁判において、元城南(ソンナム)市長の秘書だったキム・ジンソン氏に繰り返し電話をかけ、虚偽証言を求めた疑いで起訴された。

この件について、キム氏には偽証の罪で罰金500万ウォン(約53万円)の判決が下されたが、検察はこの判決に不服を示し、「成功した偽証教唆は処罰できない」という論理には問題があるとして控訴した。

控訴審では事実関係が比較的単純なため、判決までにそれほど長い時間はかからないと予想されている。

しかし、李代表を追い詰める司法問題は、他の法廷でも現在進行中だ。

選挙法違反のほかにも、「共に民主党」全体に打撃を与えかねない新たな問題が浮上し、与党「国民の力」は攻勢を強めている。

李代表が関与する事件の中でも最大規模で、審理に最も時間を要すると見られるのが「大庄(テジャン)洞・城南FC・柏峴洞・慰礼」の4件を統合した裁判だ。この裁判は、李代表の偽証教唆事件で無罪判決を下した刑事33部が担当している。

そんななか最近、李代表の側近とされるキム・ヨン元民主研究院副院長が、不正政治資金事件の控訴審で懲役5年の実刑判決を受け、法廷拘束された。

キム・ヨン元民主研究院副院長、ユ・ドンギュ元城南都市開発公社本部長
(写真=時事ジャーナル)キム・ヨン元民主研究院副院長(左)、ユ・ドンギュ元城南都市開発公社本部長

注目すべきは、1審に続き、2審でも「李代表が最上位に位置する」とするユ・ドンギュ元城南都市開発公社本部長の証言が信用できると判断されたことだ。李代表としては、ユ元本部長の証言の信頼性を崩す必要があるが、今回の判決は大きな打撃となる。

また、キム元副院長の2審判決は、李代表の裁判にも影響を及ぼす可能性がある。

特に争点が多く、記録も膨大な「大庄洞開発疑惑」の裁判は、2023年3月に起訴されてから2年近くが経過しているものの、1審はまだ序盤の段階だ。

慰礼新都市事件の審理に11カ月を要し、大庄洞事件の本格的な審理は2024年10月から始まったばかりであり、大庄洞疑惑の核心証人とされるユ元本部長の尋問に3カ月以上を費やしている。李代表が裁判途中で退廷した際、ユ元本部長が尋問を拒否したことも影響し、審理が長引いた。

裁判部も「1~2年はかかる」として、長期化が避けられないとの立場を示している。

また、2月の司法人事異動で担当裁判長のキム・ドンヒョン部長判事は留任するものの、担当事件が変更される可能性があるほか、補助判事が交代した点も変数となる。

新たな裁判部が「チョン・ヨンハク録音ファイル」を証拠として採用する場合、140時間に及ぶ録音データを再生する必要がある。過去には、民間業者「ファチョンデユ(火天大有)」の大株主キム・マンベ氏の裁判で、裁判部の交代により証拠の再検討だけで2カ月以上を要したことがある。

韓国最高裁のチョ・ヒデ大法院長は、繰り返される裁判の遅延が司法の信頼を損なう問題であると認識し、刑事訴訟規則の改正手続きに着手した。

改正案では、チョン・ヨンハク録音ファイルのように膨大な証拠がある場合、重要な部分のみを再生することを認めるほか、同じ内容の文書が存在する場合には、音声の再生を省略できるようにする方針だ。この改正案は、最高裁判所の会議で承認されれば即時適用される。

また、李代表の「サンバンウルの北朝鮮送金疑惑」と「京畿(キョンギ)道法務カード不正疑惑」を担当する水原(スウォン)地裁の裁判部にも異動があった。この裁判を担当していた水原地裁刑事11部のシン・ジヌ部長判事は、水原高等裁判所に異動となった。

李代表は、2024年12月に共犯として起訴されたイ・ファヨン元京畿道平和副知事が1審で有罪判決を受けたことを理由に、シン部長判事の忌避を申し立てていた。

この影響で裁判は約3カ月間停滞していたが、水原地裁は2月12日、裁判部の構成が変わったため、李代表の忌避申請は審理の必要がなくなったとして却下した。

与党は「李在明捜査」で総攻勢

「共に民主党」李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

与党「国民の力」は、李代表と「共に民主党」の早期大統領選の動きを強く牽制し、李代表の司法リスクに対する攻勢を一段と強めている。

「国民の力」の法律顧問委員長を務めるチュ・ジンウ議員は、キム・ヨン元副院長が受け取った不正政治資金および賄賂(総額6億7000万ウォン=約7100万円)が、2021年の李代表の大統領選予備選挙キャンプの資金に流れたという疑惑について、捜査を求める意見書をソウル中央地検に提出した。

先立って「国民の力」は、2024年11月に李代表を政治資金法違反の疑いで告発している。

また、キム元副院長に対する控訴審判決文に「李在明」の名前が130回、「予備選挙資金」という言葉が28回も登場する点を指摘し、資金の流れと最終的な使途についての実態解明が必要だと主張している。

与党内部では、李代表の公職選挙法違反疑惑が確定すれば、大統領選挙補助金434億ウォン(約46億円)を返還しなければならず、大統領選キャンプの資金疑惑まで追及されれば、党全体が揺らぐ可能性があると見ており、これを徹底的に攻める構えを見せている。

チュ議員は「キム・ヨン氏は李在明の大統領選キャンプの財政を担当していた中心人物であり、不正資金の出所は大庄洞の共犯であるユ・ドンギュ、ナム・ウクだった」と指摘し、「腐敗の臭いが充満している。次は李在明が捜査を受ける番だ」と厳しく批判した。

李代表の主要な裁判の控訴審判決と最高裁への上告は、早期大統領選の行方とも絡み、司法機関にとっても大きな課題となる見通しだ。

ある司法関係者は、「控訴審の結果がまだ出ておらず、大統領選の局面がどのように展開されるかも不透明な状況であるため、あらかじめ対応策を議論することはできない」と述べた。

さらに、「前例のない事態が発生し、司法機関が重要な判断を下さなければならない局面が訪れた場合、厳格な法の原則に基づいて結論を出すことになる」との立場を示した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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