韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が約5カ月ぶりに国会本会議場を訪れた。
就任直後の2025年6月に「第2次補正予算案」提出に際して行った初の施政演説以来、今回は2026年度本予算に関する施政演説を行った。
前回の補正予算演説が「経済危機および民生回復」をキーワードに景気刺激政策に焦点を当てていたのに対し、今回は「AI(人工知能)を基盤とした未来転換」と「韓米関税交渉の妥結」を強調したという評価が出ている。
李大統領は11月4日午前10時頃、ソウル汝矣島(ヨウィド)の国会議事堂本会議場で「AI時代において、未来の成長と財政の持続可能性を共に考慮した戦略的投資であるだけに、国会の積極的な協力をお願いする」と述べ、来年度の総支出を前年比8.1%増の728兆ウォン(約77兆8100億円)規模に編成した2026年度予算案の早期処理を求めた。
李在明政権初の本予算案の核心キーワードは「AI」だった。李大統領はこの日の演説で「AI」という単語を28回も口にし、強調した。続いて「国民」を21回、「投資」「成長」をそれぞれ11回、「未来」を9回、「協力」を8回、「経済」「国会」をそれぞれ6回、「K(イニシアチブ)」を5回ずつ言及した。
李大統領は「総支出を前年より8.1%増の728兆ウォンに編成し、『AI三大強国』への飛躍を目指す大転換に10兆1000億ウォンを投入した」と述べ、「これは今年の3兆3000億ウォンから3倍以上増加した規模である」と説明した。
また「“フィジカルAI”先導国家の実現に向け、国内の優れた製造力とデータを活用し、重点事業に集中的に投資する」と語った。
ロボット、自動車、造船、家電・半導体、工場など主要産業分野を中心に、今後5年間で約6兆ウォンをAI大転換に投じる計画も明らかにした。さらに、福祉・雇用・納税・新薬審査などの分野を中心に公共部門へのAI導入を拡大し、高度人材1万1000人を育成、国民が誰でもAIを主体的に活用できるよう支援する方針を示した。
李大統領は「未来に備えるために必要な予算は果敢に編成したが、不必要な予算は大幅に削減した」と述べ、「政府の予算はすべて国民の税金であり、そのすべてに国民一人ひとりの汗と涙が込められている。だからこそ、無駄に使われることがないよう努力した」と強調した。
これは6月26日の補正予算案演説が「民生回復」に焦点を当てていたときとは、明確に異なる。
あの時、李大統領が最も多く言及したキーワードは「経済」(24回)であり、次いで「政府」(18回)、「国民」(16回)、「回復」「成長」「消費」(各10回)だった。これらは大統領選や就任演説でも強調してきた主要スローガンでもある。その他にも「予算」「支援」(各9回)、「補正」「民生」(各8回)、「景気」「危機」(各7回)などの表現も多く使われた。
李在明政権の実用外交路線も、この日の演説で改めて強調された。
李大統領は、最近慶州(キョンジュ)で行われた「APEC(アジア太平洋経済協力)外交スーパーウィーク」において、米韓関税交渉が妥結し、さらに中韓首脳会談を通じて関係強化の成果を上げたことに言及し、「最悪の状況でも最善の結果を出すために、魂を削る思いで全力を尽くした」と語った。
今回の米韓関税協議の核心である対米投資パッケージについては、「年間投資上限を設け、多くの方々が懸念した為替市場への影響を最小化した。投資プロジェクトの選定や運用過程にも多層的な安全装置を設け、投資金の回収可能性を高めた」と説明した。そのうえで「今後も政府は国益を中心とした実用外交を基盤に、大韓民国の国力を高め、その地位をさらに向上させていく」と述べた。
また、中韓首脳会談についても「両国は戦略的協力パートナーとして、実用と共生の道を共に歩むことに合意した」とし、「『民生が最も重要だ』という共通認識のもと、両国中央銀行間で70兆ウォン規模の通貨スワップ契約や、越境犯罪対策を含む6件のMOUを締結した」と説明した。
李大統領は6月の補正予算演説でも、初の米韓首脳会談前に「外交に色はない。進歩か保守かではなく、国益か否かが唯一の判断基準である」と述べ、「国益中心の実用外交で通商問題に対応する」と強調していた。また、「朝鮮半島の平和と安定を確保することも重要だ」と述べ、国の正常化に向けた超党派の協力を国会に求めていた。
それから約5カ月後、米韓関税交渉の妥結によって、李在明政権が目に見える成果を上げたという評価が出ている。特に今回の協議では、安全保障パッケージの中で原子力潜水艦の核燃料供給協議に進展があった点も注目されている。
李大統領は「自主国防の基盤をより強固にし、ウラン濃縮や使用済み核燃料再処理のための画期的な契機を設け、将来のエネルギー安全保障を強化することができた」と自評した。
経済分野でも前回とは異なる方向性が見られた。補正予算の際には消費クーポンや流動性供給など景気刺激策が中心だったが、今回の本予算ではAIやR&D、GPU(グラフィック処理装置)の確保、先端産業、Kカルチャー、防衛投資拡大など、「技術革新」を軸にした構造改革を強調した。
李大統領は、米韓首脳会談でNVIDIA社のGPU 26万枚を確保したことについて「これで国内民間企業もGPU確保に苦労することはないだろう」と述べた。そのうえで、政府としても高性能GPU 1万5000枚を追加購入し、政府目標の3万5000枚を早期に確保する方針を明らかにした。
(記事提供=時事ジャーナル)
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