現地誌が徹底分析「ユン大統領はなぜ戒厳令を? いつ誰と何を目的に踏み切ったのか」

2024年12月05日 政治 #時事ジャーナル
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ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領による「12月3日の非常戒厳」が不発に終わった中、韓国政界では戒厳令を推進した「ユン心(ユン大統領の意向)」について、さまざまな推測が飛び交っている。

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与野党の議席数に差がある現状では、そもそも「非常戒厳」は当初からほぼ不可能に近いシナリオだったというのが政界の大方の見方である。

にもかかわらず、ユン大統領は側近たちの強い反対を押し切り戒厳を強行した。ユン大統領はいつ、なぜ、誰と「非常戒厳」を決断したのだろうか。

(写真=ユン・ソンニョル大統領Facebook)

建議したのは中学・高校の同門、反対した閣僚は誰か

12月4日の政界の情報によると、ユン大統領に「非常戒厳」の必要性を直接説明し、建議・実行に移したのはキム・ヨンヒョン国防部長官だという。

彼はユン大統領の中学・高等学校時代の1年先輩で、2022年3月の大統領当選後、大統領職引継委員会で大統領官邸を青瓦台(チョンワデ)から移す龍山(ヨンサン)に移転タスクフォース(TF)副チーム長を務めた最側近である。

2022年5月から大統領警護処長に任命され、2年以上にわたりユン大統領の警護を総括し、最近では国防部長官に任命された。

ユン大統領とキム長官は、私的な場では「兄弟のような関係」とされる間柄で、ユン大統領が最も信頼する側近として、国政に関する悩みを頻繁に共有してきたと伝えられている。

自然と「キム・ゴンヒ(金建希)特別検察法」や「検事の弾劾」、「予算削減」といった野党の攻勢が、ふたりの間で話題に上ったとみられる。その過程で、ユン大統領とキム長官が「非常戒厳の宣言」を解決策と見なしたようである。

しかし、キム長官以外の側近たちは「非常戒厳」に反対したり、懸念を表明したとされる。

非常戒厳前に大統領室で開かれた閣議には、ハン・ドクス国務総理やチェ・サンモク副総理兼企画財政部長官、キム国防部長官、イ・サンミン行政安全部長官、チョ・ギュホン保健福祉部長官、ソン・ミリョン農林畜産食品部長官、キム・ヨンホ統一部長官らが出席し、その大半が「反対」を表明したと伝えられている。

特にハン総理は戒厳令の宣言直前まで「社会的混乱の懸念」や「国会の反発」などを理由にユン大統領の決意を翻そうとしたが、ユン大統領は結局「非常戒厳」を強行した。

そして、12月3日夜10時25分頃に宣言された「非常戒厳」は、翌日未明1時頃に国会が「戒厳解除要求案」を議決したことで、事実上2時間30分で終わりを迎えた。ヘリコプターで投入された戒厳軍が国会の封鎖に失敗したためである。

その後、激怒した野党は大統領の弾劾カードを切った。国務総理が懸念していた「シナリオ」、大統領と国防部長官が克服可能だと誤認した「最悪の状況」が現実となったのだ。

イ・ミョンジェ代表のせい? ミョン・テギュンが怖くて?

与野党の議席差がある現状では「非常戒厳」は当初から容易ではない選択肢だった。国会が在籍議員の過半数で戒厳解除を要求すれば、大統領は従わざるを得ないからである。それでもユン大統領が「非常戒厳」を強行した理由は何なのか。

まず、政界では「ユン・ソンニョル-イ・ジェミョン(李在明)-ハン・ドンフン(韓東勳)」に連なる権力の三角関係の信頼が崩れ、行政府の長であるユン大統領が「非理性的な選択」をしたのではないかとの見方が出ている。

非常戒厳の直前まで野党「共に民主党」イ・ジェミョン代表は「金建希特別検察法」を推進し、予算削減を進めていた。そんな中、与党「国民の力」党員掲示板論争後に、ハン・ドンフン代表と親しい派閥が「金建希特別検察法」に賛成する可能性があるとの見方が出た。

与野党の双方に激怒したユン大統領が、ついに「国会」全体を「敵」と見なす極端な選択をしたのではないかという推測が浮上している。

共に民主党はこの日、国会でブリーフィングを行い、非常戒厳当日に国会に侵入した首都防衛司令部の特殊任務部隊がイ・ジェミョン代表やハン・ドンフン代表、ウ・ウォンシク国会議長を逮捕しようとしたと主張した。共に民主党の主張によれば、戒厳軍司令部がこれらを「反国家勢力」と見なしていたことになる。

慶熙大学の公共ガバナンス研究院のチェ・ジヌォン教授は「政治とは互いに譲り合いながら問題を解決するゲームであるが、ユン大統領と民主党は“殴り合い”をしている」とし、「ユン大統領はボクシングをしていいたのに、野党に押されると総合格闘技を始めた。つまり反則をしたようなものだ」と例えた。また「大統領がリーダーシップの限界をさらけ出した」と批判した。

一部では、公認介入疑惑の核心当事者であるミョン・テギュン氏が非常戒厳の「トリガー(引き金)」になったのではないかとの仮説も提起されている。

非常戒厳の前日、昌原(チャンウォン)地検は政治資金法違反の疑いでミョン氏を起訴した。検察の起訴後、ミョン氏は「“特別検察だけが私の真実を明らかにできる”という結論に至った」と述べ、「特別検察を切実に要請する」と明らかにした。

革新新党のイ・ジュンソク議員はこの日、CBSラジオ『キム・ヒョンジョンのニュースショー』で「ミョン氏が特別検察をしようというのは、事実上、自分が持っている資料を積極的に提供する意志を表明したのも同然だ」とし、「すでに検察側や他の主体にそうした部分を提供していたならば、ユン大統領が情報を入手し、“通常の方法ではもう耐えられない”との判断をしたのではないかという議員たちの見方もあった」と語った。

一部の政界では、ユン大統領の「過度なイデオロギー的偏向」や「味方と敵の識別」を問題視する声もある。ユン大統領が自分と家族、政府、保守陣営を批判するすべての勢力を説得するのではなく、打倒すべき敵と見なしたことで「非常戒厳」という非合理的な選択肢を取ったという見解である。

光云大学チン・ジュングォン特任教授は、YouTubeチャンネル『時事ジャーナルTV』に出演し、「ユン大統領はいつも極右のYouTubeだけを見て、そこに出てくる話を受け売りしているのではないか。三一節(独立運動記念日)や光復節(解放記念日)の演説だけ見てもわかる」とし、「そうしているうちに、その世界の中に閉じ込められてしまったようだ」と指摘した。

また「大統領室も内閣も与党も、大半が戒厳の事実を知らなかったのではないか」と述べ、「一種の“ハナ会(軍事独裁時代の秘密結社)”のようなサークルの中に閉じ込められ、終末論的な考えに陥り、この事態を引き起こしたのではないか」と分析した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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