ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が45年ぶりの「非常戒厳令」を発令したことで、韓国が大混乱に陥った。
非常戒厳令とは、戦争や国家的危機において大統領が発令する措置で、行政・司法権限が軍に移管される重大な事態を指す。
12月3日夜に発令された非常戒厳令は、直後に世界中の注目を集めたが、国会が解除要求案を可決したことで、わずか6時間後に解除されるという異例の展開を見せた。
現在、なぜユン大統領がこのような“悪手”に出たのかについて様々な意見が出ている。
なかでも注目集めているのは、最大野党「共に民主党」のキム・ミンソク首席最高委員の主張だ。キム委員は、ユン大統領の「戒厳令試行」疑惑を初めて提起した人物でもあるからだ。
キム委員は12月4日、MBCラジオ番組『キム・ジョンベの視線集中』に出演し、「ユン・ソンニョル大統領が『反国家勢力』という表現を使い始めたこと自体が非常に怪しかった」と述べ、「これが戒厳論の論理的な下地を整える作業であり、その構築段階だった」と明かした。
そしてユン大統領が非常戒厳令に踏み切った動機について、「何よりも最大の核心的な動機は『キム・ゴンヒ(ユン大統領夫人)を刑務所に行かせたくない』ということだった」と語った。
キム・ゴンヒ大統領夫人は現在、学歴偽造疑惑から株価操作疑惑、公認介入疑惑と様々な疑いの目を向けられている。「大統領室による捜査外圧などの権力型不正の真相究明特検要求案(キム・ゴンヒ常設特検案)」が国会法制司法委員会に提出されている状況だ。
キム委員は、そんな危機的状況にあるキム・ゴンヒ夫人をユン大統領が刑務所に行かせたくないから、「非常戒厳令」を発令したと推測したわけだ。
また、ラジオ番組でキム委員は「チェ上兵問題とも関連しており、大統領をはじめ国防部長官などもすべて関与していると見ている」と述べ、「真実が明らかになれば刑務所行きを免れない者たちが、自らを守るために問題を起こした」と指摘した。
チェ上兵問題とは、殉職した海兵チェさんの事故の真相究明について、大統領室や国防部、海兵隊が捜査妨害や事件隠ぺいを行った可能性があるという疑惑だ。
さらにキム委員は「常識では理解できない動機が存在し、私たちが公開した違法な会合のような例も前例がなかった」と述べ、「そのような状況まで把握し、(非常戒厳令に至る)流れを判断した」と強調した。
実際にキム委員は9月20日には、政府が戒厳令を発令する際に国会の同意を必要とする内容を盛り込んだ戒厳法改正案も発議している。彼は当時、国会で行った記者会見で「現行法にはクーデター的な戒厳を防ぐ仕組みが不十分だ」と述べ、「法改正を通じて国民の不安の種と戒厳の可能性を根本的に排除する」と強調していた。
仮にキム委員の推測が事実であるとすれば、ユン大統領は「キム・ゴンヒ夫人を刑務所に行かせたくない」という思いから非常戒厳令を発令したことになり、韓国国民の怒りを通り越して呆れることになるだろう。
はたしてユン大統領の狙いはなんだったのか。大きな注目が集まっている。
(文=サーチコリアニュース編集部O)
■なぜ韓国のキム・ゴンヒ大統領夫人は「非好感ファーストレディ」に転落したのか
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