「絶対に投票したくない候補」でも断トツの1位…韓国“次期大統領”の呼び声高い李在明の光と影

2025年01月12日 政治 #時事ジャーナル
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「国民の忠実な奉仕者として、国民と歴史の命令に従い、光の革命のための有用な道具となります。国民が指し示す希望の道を躊躇なく切り開いていきます」

【注目】なぜ…尹大統領の支持率が40%に急上昇

韓国の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は昨年12月27日、国会で声明を発表し、「偉大な国民の底力で国家反乱勢力の醜悪な妄想を取り除き、私たちはより強い模範的な民主国家へと生まれ変わるだろう」と述べ、このように宣言した。

声明の主な内容は、ハン・ドクス首相を弾劾し、内乱勢力を根絶するというものだった。しかし、政治界では事実上の「大統領選挙出馬宣言」との解釈が出ている。

李在明代表は「決定的な瞬間」をつかんだのだろうか。

強固な「党心」に加え、「12・3非常戒厳」に憤る世論が相まって、いわゆる「李在明大勢論」が形成されつつある。内乱罪の被疑者に転落した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領への国民の失望が、李代表への支持に転化した形だ。

ただし、実際に「李在明旋風」が吹いているかどうかについては意見が分かれている。「尹錫悦も嫌だが、李在明も嫌だ」という浮動層が少なくないとの分析もあり、李代表の司法リスクの行方や、与野党の競争者たちの出馬動向なども変数として指摘されている。

「李在明大勢論」に火をつけた尹錫悦

李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

「12・3非常戒厳」の日まで、政局は現在とは大きく異なっていた。

政府と与党は、政治ブローカーであるミョン・テギュン事件、キム・ゴンヒ大統領夫人による公認介入疑惑、尹錫悦と与党「国民の力」のハン・ドンフン元代表との対立の余波に苦しんでいた。

一方、危機感は野党内にも広がっていた。

2024年11月15日、李在明代表が公職選挙法違反事件の1審で、議員資格を喪失する有罪判決を受けたためだ。李代表の1審判決がそのまま確定した場合、李代表の大統領選出馬は挫折し、「共に民主党」は補助金として受け取った選挙費用434億ウォン(約47億円)を返還しなければならない。

与野党の明暗は分かれた。「国民の力」は反撃の機会をつかんだかのように見えた。

「国民の力」のチュ・ギョンホ元院内代表は判決直後に緊急記者会見を開き、「巨大野党が防御の堤を何重にも築いたとしても、正義の川の流れを止めることはできない」と述べた。

一方で「共に民主党」側では、「李在明代表個人だけでなく民主党全体を崩壊させる判決を下した」(ウ・サンホ元非常対策委員長)、「民心は天心だというのに、天を恐れないのか」(チョン・チョンレ議員)といった懸念や司法への批判が続出した。

李代表に対する「司法の時計」が急速に進むなか、与党内では「耐えれば勝つ」という空気が広がった。当時、与党は以下のようなシナリオを描いていた。△李代表の選挙法違反事件が1年以内に有罪判決を受ける、△野党内で親李派と反李派の内紛が勃発、△次回地方選挙と大統領選挙の双方で有利な局面を迎える―。

しかし、このシナリオは「12・3非常戒厳」以降、大きく崩れた。

反国家・親北勢力を一掃しようとした尹大統領の無謀な賭けは失敗し、政府と与党は激しい逆風に直面した。同時に、李代表に対する「司法の時計」よりも、尹大統領に対する「弾劾の時計」がさらに速く進み、早期大統領選挙の可能性が取り沙汰されるようになった。

これにより「李在明危機論」は「李在明大勢論」へと転じた。激怒する民心を背に、李代表が圧倒的な「次期大統領候補1位」として浮上したのだ。

『中央日報』がEMBRAINパブリックに依頼し、昨年12月29日から30日にかけて全国の18歳以上の男女1006人を対象に実施した次期大統領候補の支持率調査(標本誤差は95%信頼水準で最大±3.1ポイント、回答率15.3%)によると、李代表は唯一、二桁台の支持率を記録し、35%で1位となった。

2位は8%を得たホン・ジュンピョ大邱市長、3位は6%を得たハン・ドンフン元代表だった。

李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

他の調査でも李代表は大差で競合候補をリードしている。

『東亜日報』が調査会社リサーチ・アンド・リサーチに依頼し、昨年12月28日から29日に全国の有権者1000人を対象に次期大統領に最もふさわしい人物を尋ねた調査(標本誤差は95%信頼水準で±3.1ポイント、回答率9.3%)でも、李代表が39.5%で1位を記録した。続いてホン・ジュンピョ市長(8.9%)、オ・セフンソウル市長(8.7%)、ハン・ドンフン元代表(8.0%)が誤差範囲内で競り合った。

現在の権力構造だけでなく、未来の権力のバランスも野党側に傾きつつあるなか、与党内では「戒厳令さえなければ」という自嘲混じりの声が出ている。

元「国民の力」最高委員のキム・ジョンヒョクは昨年12月12日、YTNラジオで「李在明代表をそのまま放置しておけば、来年3月から5月頃に選挙法違反事件の2審判決が出て、政権再創出の好機を迎えられた。しかし突然、非常戒厳を宣言したことで、すべてがブラックホールのように吸い込まれ、巨大な逆風に見舞われた。何を考えての判断なのか理解できない」と批判した。

尹政権は揺らぎ、与党は分裂している。李代表にとっては、政権奪還の絶好の機会をつかんだ形だ。これまで「ケタル(李代表の熱烈支持層)」に限られていた支持基盤が、「反戒厳民心」を背に拡大する足掛かりを得たとの評価もある。

この状況を受け、「共に民主党」の指導部も李代表の出馬を支援する事実上の「早期大統領選キャンプ」へと変貌した。昨年10月に発足した執権プラン本部を中心に、「李在明式の公約」の枠組みを整備しているとされる。

主要テーマは「食住問題解決」であり、イデオロギーではなく「民生」を掲げることで、進歩層だけでなく中道層の支持も取り込む戦略とみられる。

李在明、「絶対に投票したくない人物」でも1位

野党の一部では、尹大統領と「国民の力」指導部の「右寄り化」が、李在明代表の「食住問題解決」を際立たせる好機になっているとの見方もある。

「共に民主党」のある再選議員は、「尹大統領は官邸で極右のYouTubeチャンネルばかり見ているため、自身を守るという『太極旗部隊』の叫びが本当の民意だと思い込んでいるようだ。大きな勘違いだ」と指摘。「非常戒厳のせいで経済が崩壊し、国が分裂した。親尹勢力が支配する国民の力がこの現実を直視できるはずがない」と述べた。

ただし、李代表に対する評価がすべてバラ色というわけではない。

李代表への支持は簡単に崩れる「砂の城」に過ぎないという分析もある。突発的に生じた「反尹錫悦・反戒厳」の民意と「親李在明・親民主」の票心は区別すべきだという見方だ。つまり、尹大統領の弾劾に賛成し、与党を批判する層すべてが「李在明大統領」を望んでいるわけではないという解釈だ。

実際、最近になっていわゆる「保守の固定票」が急速に結集し始めており、「李在明大勢論」に対する大衆の反発心理も見られるようになっている。

『デイリーアン』が世論調査専門機関「世論調査コンジョン」に依頼し、1月6日から7日にかけて全国18歳以上の男女1003人を対象に「次期大統領候補のなかで絶対に投票したくない人物は誰か」を尋ねた調査(標本誤差は95%信頼水準で±3.1ポイント、回答率4.1%)によると、「李在明」と答えた割合が42.1%で最も多かった。次いで「ホン・ジュンピョ市長」が16.8%、「オ・セフン市長」が9.9%で続いた。

尹錫悦大統領
(写真=韓国大統領室)尹錫悦大統領

「投票したくない大統領候補」に関する回答は、支持政党によって大きく分かれた。「国民の力」支持者の81.9%は、李代表を「大統領選で絶対に投票したくない候補」と答え、強い嫌悪感を示した。中道保守の改革新党支持者の中でも「李在明代表に投票しない」と答えた割合が38.4%で最も多かった。

これに対し、「共に民主党」支持者のうち、「李在明代表に投票したくない」と答えたのはわずか5.3%で、支持者の間では「ホン・ジュンピョ市長に投票したくない」という回答が28.4%で最も多かった。

世論調査コンジョンのソ・ヨハン代表は「李在明代表が大統領候補のなかで、高い支持率と同時に高い嫌悪感を示しているのは、司法リスクが最大の要因となっているためだと考えられる」と分析した。「12・3非常戒厳」後に尹大統領が「政治的死」の危機に陥った一方で、7件の事件と11件の容疑で5件の裁判を抱える李代表に対する大衆の懸念も依然として拭い去られていないという指摘だ。

機会を狙う野党の対抗馬たち

尹錫悦時代の終焉が語られる一方で、「李在明時代の幕開け」を望まない人々が増えるとなると、これは与党だけでなく、野党の大統領候補たちにもチャンスとなり得る。

親文在寅(ムン・ジェイン)派を結集しているキム・ドンヨン京畿道知事や、中道・進歩派に支持基盤を持つキム・ブギョム元首相などが李代表の対抗馬として挙げられている。

もっとも現時点では「李代表と彼らでは格が違う」という評価が支配的だ。しかし、いくつかの変数も存在する。非常戒厳の影響で注目されていないが、李代表の司法リスクが「現在進行形」である点だ。

李代表の公職選挙法違反事件に関する2審の初公判は、1月23日に開かれる。公職選挙法第270条によると、選挙法関連事件の1審は6カ月以内に、2審と3審はそれぞれ3カ月以内に処理する(選挙法6・3・3原則)とされている。

この原則に基づけば、昨年12月6日にソウル高裁に割り振られた李代表の選挙法違反事件の2審は早ければ3月、最高裁の最終判決も6月までには出る見通しだ。もし早期大統領選挙前に判決結果が出れば、非常戒厳で沈静化した「李在明危機論」が再燃する可能性がある。

追い詰められた与党も、この点を攻撃しようとしているようだ。

「国民の力」のクォン・ソンドン院内代表は、1月8日に国会で開かれた議員総会で「李代表は他者に対しては弾劾や告発を濫用し、自身の犯罪については口を固く閉ざしている」と批判。「このような分裂的な政治手法は、早期大統領選挙を目指すためのものだ。政府・与党を力で脅し、自分の裁判を遅らせて早期大統領選挙のレースに乗り込もうとしている」と糾弾した。

政治評論家のパク・サンビョンは「仮にすぐに早期大統領選挙が実施されるなら、与党は必敗だ。国民を本当に恐れるなら、非常戒厳を断行した尹大統領をこのように庇うことはできないはずだ」と述べつつも、「まだ大統領選挙の情勢が本格化していないため、多くの国民は誰を支持するかを決めていないだろう」と続けた。

そして「最近の支持率調査結果には、李在明代表の司法リスクが織り込まれている。ただ、もし司法リスクがない他の野党候補が大統領選に出馬しても、与党が劣勢である状況は変わらないだろう」と分析した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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