尹大統領のおかげで支持率をキープしているが、そのせいで中道層は逃げていく…韓国与党が抱えるジレンマ

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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の最終的なメッセージは「非常戒厳は正当な統治行為であり、すべての原因は巨大野党にある」というものだった。

【注目】「弾劾は棄却され、復帰後に改憲する」“最終陳述”の真意

尹大統領は2月25日に行われた第11次憲法裁判所の最終弁論において、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が主導する野党の「利敵弾劾」と「扇動弾劾」を主張した。

特に尹大統領は、非常戒厳の正当性を「スパイ」と「北朝鮮」を背景に説明し、「スパイが消えたのではなく、大韓民国の自由民主主義を崩壊させる体制転覆活動へとさらに進化した」と述べ、「こうしたスパイ活動を阻止する社会の防御網はむしろ弱まり、各所に穴が開いた状態だ」と強調した。

与党である「国民の力」は、尹大統領の最終弁論について「真摯な発言」として歓迎した。

最近、尹大統領と強硬な支持層の結束が進み、非常戒厳の正当性に対する両者の一致が顕著になっている。だが、この点が与党と保守層のジレンマでもある。

尹大統領は68分間にわたる最終弁論で、判決結果を受け入れるというメッセージを含めなかった。政治的には国民分裂の加速化、選挙を控えた状況としては支持層拡大の困難が懸念される。

弾劾審判で最終陳述する尹錫悦大統領
(写真=憲法裁判所)2月25日、弾劾審判で最終陳述する尹錫悦大統領

李在明の「2審宣告」だけを待つ与党

現在、保守層が結束する原動力は「李在明の審判論」にある。これは依然として最も強力に作用している保守結束の要因だ。

ちょうど尹大統領の最終弁論の翌日である2月26日には、李代表の公職選挙法違反に関する控訴審の結審公判と検察の求刑が行われた。

検察は1審と同様に懲役2年を求刑し、「李代表は大統領選挙での当選を目的に、国民に対して繰り返し嘘をついた。公職選挙法の適用基準が被告の身分や政治的状況によって変わるならば、民主主義の実現を目指す法の趣旨が無意味になる。社会に警鐘を鳴らしてほしい」と述べた。控訴審の判決は3月26日に予定されている。

はたして「国民の力」は、この控訴審での有罪判決だけを期待し、局面の転換を狙ってよいのだろうか。

李代表は、選挙法違反の控訴審で有罪判決を受けたとしても、大統領選挙が早期に実施される場合には出馬する可能性が高いとみられている。そのため「李在明の審判論」は「国民の力」にとって深刻なジレンマとなっている。

李在明代表
(写真=時事ジャーナル)李在明代表

この論調に基づく保守層の結束が進んでも、中道層、首都圏、若年層の支持率はなかなか回復の兆しを見せていない。

韓国ギャラップが2月18日から20日に実施した調査によると、「どの政党を支持するか」という質問に対し、「共に民主党」が40%、「国民の力」が34%だった。

政党支持率の変動は続いており、「中道・首都圏・若年層」の世論がより重要となる。中道層では「共に民主党」42%、「国民の力」22%と、20ポイントの差がついた。首都圏のうち、ソウルでは「共に民主党」40%、「国民の力」37%、仁川・京畿道では「共に民主党」44%、「国民の力」31%だった。若年層では、20代(18歳以上)は「共に民主党」27%、「国民の力」25%、30代は「共に民主党」46%、「国民の力」28%だった。

街頭集会で保守層が結束し、「李在明の審判論」を掲げ続けているが、若年層では「共に民主党」により多くの支持が集まっている。

弾劾をめぐる政局を分析するうえで、もう一つの重要な指標は「政権維持」と「政権交代」に対する世論だ。

韓国ギャラップの調査では、「次の大統領選挙についてどの意見に賛同するか」との問いに対し、「政権維持」が37%、「政権交代」が53%だった。

中道層では「政権維持」が27%、「政権交代」が62%と、交代を求める声が圧倒的に多かった。首都圏では、ソウルが「政権維持」41%、「政権交代」54%、仁川・京畿道が「政権維持」34%、「政権交代」57%となった。若年層では、20代が「政権維持」32%、「政権交代」47%、30代が「政権維持」27%、「政権交代」62%だった。青年層の世論は「政権交代」を強く支持している。

李在明が掲げる「中道保守論」

与党は李在明代表が掲げる「中道保守論」に対し激しく批判を展開しているが、政治的に明確な局面転換の策は見えてこない。

「国民の力」ハン・ドンフン前代表
(写真=時事ジャーナル)「国民の力」ハン・ドンフン前代表

李代表が虚偽の発言を繰り返していると主張し、「中道保守」という理念的なアイデンティティを攻撃しているが、その影響は無視できない。政治的メッセージは単純明快で繰り返されるほど浸透しやすく、「国民の力」が争点化することで有権者の印象により深く刻まれる現象が生じている。

ビッグデータは、李代表の「中道保守」の表明に対してどのような反応を示しているのか。

ビッグデータ深層分析ツール「SomeTrend」を用いて、2月17日から26日までの「中道保守」に関するビッグデータの感性関連語を抽出してみた。その結果、「中道保守」に関連する感性関連語として「犯罪」「批判」「論争」「懸念」「反発」「合理的」「支持する」「真摯さ」「非難」「ポピュリズム」「疑惑」「危機」「信じる」「破壊する」「葛藤」「本心」「混乱」「偽物」「模造品」「一方的」「包容」「逮捕」「擁護する」「資格がある」「誤解」「勝利する」「暴言」「平和」などが挙がった。

全体的には否定的な認識が強く出ているが、これは主に政争の過程で発生したものと考えられる。それでも、「合理的」「真摯」「包容」「平和」といったキーワードからは、中道保守を掲げることで得られる政治的な効果が小さくないことがうかがえる。

「国民の力」の支持層は「李在明の審判論」を叫び、強硬保守層の結束には成功しているものの、これが大統領選挙で勝利の鍵を握る「中道層」の取り込みにはつながっていない。

そのため「国民の力」が今打ち出すべきスローガンは、「保守刷新論」または「保守革新論」だ。まずは自己改革が求められる。

(記事提供=時事ジャーナル)

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