「尹錫悦(ユン・ソンニョル)弾劾」に備えた対策なのか、それとも「尹錫悦復活」の前奏曲なのか。
憲法裁判所が3月24日、ハン・ドクス大統領権限代行・国務総理に対する弾劾審判で「棄却」の決定を下したことを受け、政界では尹大統領の弾劾審判に与える影響について様々な解釈が出ている。
与党側は「野党の暴走にブレーキがかかった」とし、今後行われる尹大統領の弾劾審判でも同様の判断が下されることを期待する姿勢を見せている。
一方、野党側は、憲法裁判所が「国政の混乱を最小化する」という観点から、尹大統領の弾劾に備えて今回の判断を下したという立場だ。
しかし、水面下では裁判官の間で意見が大きく分かれた点を受け、「尹大統領の弾劾審判も安泰とはいえない」という不安も広がっている。
憲法裁判所は3月24日、ハン・ドクス国務総理に対する弾劾案を棄却した。
憲法裁判所は「ハン総理の法違反が、任命権者である大統領を通じて間接的に与えられた国民の信任を裏切るものだと断定することはできない」として棄却理由を示した。
これは「12・3非常戒厳」関連で弾劾訴追されたり、刑事裁判にかけられたりした公職者のうち、初めて下された司法判断だ。これにより、ハン国務総理は弾劾訴追から87日ぶりに職務に復帰することになった。
ハン国務総理は大統領権限代行を務めてから、わずか2週間後の昨年12月27日に弾劾訴追された。訴追の根拠となったのは、①尹錫悦大統領の「12・3非常戒厳」に関する共謀・黙認・放置、②国会が推薦した憲法裁判官候補3人の任命拒否、③キム・ゴンヒ大統領夫人および海兵隊員殉職事件に関する特検法への再議要求(拒否権)行使、④内乱常設特検の任命不履行、⑤ハン・ドンフン前「国民の力」代表との共同政権構想の5点だ。
8人の憲法裁判官のうち、チョン・ゲソン裁判官のみが認容意見を示した。ムン・ヒョンベ、イ・ミソン、キム・ヒョンドゥ、チョン・ジョンミ、キム・ボクヒョンの5人の裁判官は、「憲法または法律違反と認めることはできない」として棄却意見を示した。
チョン・ヒョンシク、チョ・ハンチャンの2人の裁判官は、「大統領の権限を代行する国務総理に対する弾劾訴追は、大統領と同様に慎重に行使されるべきであり、弾劾案可決に必要な定足数を満たしていない」と判断し、却下意見を示した。
憲法裁判所のこの判断を受けて、ハン・ドクス権限代行と与党「国民の力」は歓迎の意を表した。
ハン代行は、同日午前10時21分ごろ、憲法裁判所の弾劾棄却判決直後に政府ソウル庁舎に出勤し、「国民全体が激しく対立する政界に対して『そうするべきではない』という声を明確に上げていると考える」と述べ、「今や左右の区別はないと私は考える。ただひたすら我が国が上へ、前へと発展していくことが、われわれにとって本当に重要な課題である」と強調した。
「国民の力」シン・ドンウク首席報道官も憲法裁判所の決定直後、「今回の決定は『政治が越えてはならない一線、憲法が守らねばならない境界が明確に存在する』という事実を示したものだ」とし、「政治的目的のために国政を空白状態に追いやった共に民主党の責任は非常に重い」と論評した。
さらに、「共に民主党は無制限な議席数を武器に、無責任な弾劾局面を主導したことを深く反省し、国民の前に謝罪せよ」とした上で、「今こそ政争と極端な対立ではなく、民生と国益のための責任政治に復帰するよう強く求める」と述べた。
与党内の次期大統領候補たちも一斉に歓迎の立場を示した。
ホン・ジュンピョ大邱市長はフェイスブックに「遅ればせながらではあるが、ハン・ドクス国務総理に対する憲裁の棄却判決を歓迎する。陣営論理に基づいた判決になると思っていたが、憲法論理に忠実な判決だったので安心した」と投稿した。
ハン・ドンフン前「国民の力」代表も「国務総理に対する弾劾訴追は、そもそも無分別かつ無責任な行為だった」とし、「これで李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表による国務委員・検察官・独立機関長に対する弾劾訴追は9戦全敗となった」と記した。
ユ・スンミン元議員も「昨年12月27日に共に民主党がハン代行の弾劾訴追を議決したのは、犯罪被疑者である李在明代表の焦りと、共に民主党の傲慢さが招いた暴挙だった」と批判した。
ハン・ドクス権限代行に対する弾劾審判の結果について、「共に民主党」の指導部は公式な立場をまだ表明していない。
ただし、党内では「予想していた」という反応も少なくない。彼らは、法理とは別に、憲法裁判所が「政治的な理由」でこのような判断を下した可能性があるとみている。
憲法裁判所が今後の尹錫悦大統領の弾劾審判に備えて、「政府ナンバー2」を国政のコントロールタワーとして復帰させたという見方だ。
「共に民主党」院内のある核心関係者は、「憲裁の判断がどうであれ、これに従うというのが共に民主党の基本的立場だ」としつつも、「罷免に至るような違法・違憲行為がなかったというだけで、ハン国務総理が『12・3内乱』をきちんと防げなかったという歴史的事実は変わらない」と述べた。
さらに、「ハン国務総理が復帰したことで、尹大統領の弾劾時に懸念されていた国政の空白リスクはむしろ解消された形だ」と評価した。
野党側の次期大統領候補であるキム・ドンヨン京畿道知事も同日、フェイスブックを通じて、ハン権限代行に対する弾劾案の棄却は「尹錫悦弾劾を認容するための事前の国政安定措置だった」と述べた。
憲法裁判所が尹大統領の非常戒厳に関する違法性を認定して弾劾を認容するために、「国政安定」を目的としてハン代行の弾劾を棄却したという見解だ。
ただし、党内の一部では「不安感」も広がっている。
弾劾訴追の手続きや統帥権者(大統領)の政治的決定の範囲などをめぐり、裁判官間で意見が分かれているためだ。「共に民主党」のある再選議員は、「(ハン代行の弾劾審判と)尹大統領の弾劾審判は別物と見ているが、憲裁8人の裁判官一人ひとりの判断が世論や常識と完全に一致しているとは言い切れない点は明らかだ」と語った。
「共に民主党」は、復職したハン代行に対して、マ・ウンヒョク憲法裁判官候補者の任命を促すと同時に、憲法裁判所に対しては「尹大統領の弾劾審判の早期宣告」を要求している。
キム・ヨンミン院内政策首席副代表は同日、フェイスブックに「ハン・ドクスの弾劾が棄却されたが、個別意見を総合すれば、チェ・サンモクがマ・ウンヒョク裁判官を任命しなかったことは、より明確な弾劾事由になった」とし、「ハン・ドクス総理はマ裁判官を即時任命すべきである」と主張した。
「共に民主党」のハン・ミンス報道官は、非公開の最高委員会会議後、記者団に対して「尹錫悦大統領の罷免宣告まで非常行動体制を維持する」と述べた上で、「国会議員が常任委員会ごとに罷免を求める記者会見や一人デモを行う予定だ。また、国会から光化門まで徒歩で行進し、罷免を訴える計画」と明かした。
続けて、「内乱の早期終息のためにも、こうした状況を総合的に考慮して、憲法裁判所は尹錫悦大統領の弾劾審判の宣告期日を速やかに設定し、罷免を宣告すべきだ」と強調した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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