ドナルド・トランプ米大統領が、関税から非関税障壁へと視野を移している。
【注目】トランプ「日本と韓国がパートナーになりたがっている」
為替、政府補助金、ダンピングなどを、関税賦課の合理的根拠として活用しようという目的だ。
これに対して韓国政府は、非関税の不正行為とは、韓国は無縁であるという立場を示している。しかし「非関税貿易障壁のごまかし」の中には為替や農業基準など、長年にわたり韓国の非関税障壁として指摘されてきた項目も含まれており、安心するのは早計だという指摘もある。
4月20日(現地時間)、トランプは自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」を通じて「非関税貿易障壁のごまかし(NON-TARIFF CHEATING)」を明示した。
為替操作を筆頭に、△付加価値税△原価以下のダンピング△輸出補助金および政府補助金△保護貿易的な農業基準△保護貿易的な技術基準△偽造・違法コピーなど知的財産権の窃盗△関税回避を目的とした積み替え――が含まれた。
関税交渉のテーブルに非関税障壁を直接持ち出した格好だ。
主管官庁である韓国の企画財政部と産業通商資源部は、こうした非関税貿易障壁のごまかしについて「韓国は標的ではなく、無関係だ」という立場を示した。韓国は米韓自由貿易協定(FTA)を締結している国であり、ダンピングや補助金などの非関税障壁はすでにFTAによって解消されているという主張だ。
しかし、トランプがFTAを事実上無力化している現状では、非関税障壁に関する議論が交渉のテーブルに上がる可能性は高い。
3月31日にアメリカ通商代表部(USTR)が発表した「2025年国別貿易障壁報告書(NTE報告書)」によれば、韓国は「保護貿易的な農業」「保護貿易的な技術」などの項目で、アメリカとの対立の可能性が高いと予想されている。
非関税貿易障壁のごまかしとして指摘される可能性が最も高い分野は、地図を含む位置情報データやオンラインプラットフォーム法など、韓国国内のデジタル規制だ。
業界では、グーグルマップなどアメリカ企業による地図データの国外搬出問題が焦点になるとみている。現行法では、国内の高精度地図データは国外に搬出する際、政府の許可が必要だが、これまでに輸出が許可された例は一件もない。
USTRは「韓国でナビゲーションなどのサービスを提供する外国企業は、韓国企業と対等に競争することが困難だ」とし、「主要国の中で位置情報データの国外搬出を制限しているのは韓国だけだ」と指摘している。
IT業界の関係者は「グーグルが今年2月に地図搬出の許可申請を行い、韓国政府も8月までには結論を出す必要がある」とし、「トランプ大統領が2月にデジタル分野での報復関税を示唆する覚書に署名したことからもわかるように、関心の高い分野であり、この問題は確実に取り上げられるだろう」と述べた。
現在、国会に係留中のオンラインプラットフォーム法も主要な争点の一つだ。この法律は、韓国国内で一定以上の売上を持つプラットフォームに対して、自社優遇、抱き合わせ販売、最恵待遇の要求などを規制する。
これらの規制が、グーグルやアップルなどのアメリカ企業を標的にしているという見方が強い。
NTE報告書では「この規制案は、韓国で活動する多数のアメリカ企業と、2社の韓国大企業に適用されるが、他の韓国企業や一部の外国企業は除外されている」とし、「アメリカ政府は透明性の向上と利害関係者の意見を取り入れる機会の確保を継続的に求めている」と述べ、議論の可能性を示唆した。
そのほかにも、ネットワーク使用料の課金、公的クラウドの受注など、アメリカ企業に不利な関連規制が不正行為の例として取り上げられる可能性がある。
毎年、USTRの指摘対象となってきたアメリカ産牛肉の輸入制限など、農・畜産業分野も交渉テーブルに上がる可能性が高い。
韓国は2008年以降、BSE(牛海綿状脳症)の発生リスクが高いとされる30カ月齢以上のアメリカ産牛肉の輸入を制限しているが、最近、アメリカの畜産業界がこの規定の見直しをUSTRに正式に要請している。NTE報告書でも、「暫定措置として課されていた30カ月齢の条件が16年間も維持されている」と問題提起していた。
為替操作や、輸出時に関税と同等の効果をもたらす付加価値税の問題についても、安心はできない。
通商業界では、アメリカがそれぞれ中国および欧州連合(EU)を狙った不正行為と見ているが、韓国は2024年11月にアメリカの為替監視対象国に含まれたことから、為替問題について自由な立場にはいられないとみられている。
付加価値税についても、EU(19%)よりは低いが、アメリカの州別平均売上税率(6%)より高いため、障壁と見なされる可能性がある。
ただし、非関税障壁は数十年にわたり、各国の通商慣行として維持されてきたものであり、アメリカの要求が一方的に受け入れられる可能性は低いという分析が有力だ。アンソニー・ガードナー元駐EU米国大使は『ウォール・ストリート・ジャーナル』を通じて、「非関税障壁は非常に複雑で、深い分析が必要なため、トランプ大統領が『なくそう』と主張しても効果はないだろう」と述べた。
対外経済政策研究院も報告書で、「外部からの圧力に屈して通商課題を検討するよりも、短期的な論点に巻き込まれることなく、中長期的な方向性を設定し、競争政策の基本方針を決めていく努力が望ましい」と提言した。
一方、アメリカと関税交渉を進めている日本は、来週の日米閣僚級協議で非関税障壁の改善案を提示するものとみられる。
4月22日付の『毎日新聞』は、「アメリカ側が最初の協議で自動車の安全基準やコメの義務的輸入に関する不満を示し、農産物の輸入拡大を要求した」と伝えたうえで、「来週の協議でコメの一定量を義務的に輸入するなど、非関税障壁の緩和策を正式に提案する予定だ」と報じた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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