韓国政界で論争を呼んでいる李在明(イ・ジェミョン)大統領夫妻出演のバラエティ番組『冷蔵庫をよろしく』が、10月6日夜に放送された。
李大統領はKフードを広める目的で、就任後初めてバラエティ番組に出演したとされる。
この番組は9月28日に事前収録されたが、野党側は「国家電算網の大規模障害の対応中に撮影をしていた」として強く批判している。
放送で李大統領は「秋夕(チュソク)といえば、最初に思い浮かぶのは“豊かさ”だ。国民の皆さんが楽しい秋夕を過ごせることを願っている」と挨拶した。続けて「我が国にとって文化は資産。K-POPやドラマも重要だが、真の核心は“食”にある。味の好みは固定されやすく変化しにくいため、食は産業的にも持続可能性がある」と語った。
今回の出演について、世界の視聴者に韓国料理の魅力を広め、Kフード輸出に役立てたいという趣旨だと李大統領は説明。シェフたちに依頼した料理テーマも「世界に広めたいKフード」と「世界に広めたい韓国食材、シレギ(大根や根菜の葉を乾燥させたもの)」と設定した。
番組内で、李大統領は妻キム・ヘギョン夫人が作る料理の中で最も好きなメニューとして、「シレギ・サバ煮付け」を挙げた。「シレギは思い出の味であり、美味しくてビタミンも豊富な健康食だ。原産地を“韓国”と明記すれば、いくらでも輸出できるはず」と強調した。
このほか、白菜、トドク(ツルニンジン)、大豆、シイタケなどの韓国食材を紹介しながら「白菜は本当に優れた食材だ。キムチはもちろん、チヂミにしても美味しい」と述べ、さらに「子どもの頃、トドクをよく掘って食べた」と思い出を語った。
また李大統領は、「最近、息子に勧められて『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』(アニメ映画)を観た」と話し、共演者の一人が「キンパを食べるシーンがあり、それが在外韓国人にとって最も胸が熱くなる場面だ」と共感を示す場面もあった。
一方、キム・ヘギョン夫人は、最近アメリカ・ニューヨーク訪問時に子どもたちと一緒にキンパを作ったエピソードを紹介し、「海外ではこれまで(東洋料理といえば)“スシ”だったが、今では皆が“キンパ”と言うようになった」と語った。
番組では、バラエティらしい軽い笑いもあった。進行者が「お二人は夫婦喧嘩の最中でも途中でご飯を食べるそうですね」と話すと、キム夫人は「喧嘩の途中で食事を逃したことが、そもそも喧嘩の原因になることもある」と応じた。
さらに「夫婦喧嘩をすると、(李大統領が)長文の手紙を書く習慣がある。だいたい“反省文”だ」と話すと、李大統領は「私が悪くて喧嘩になることが多いから」と笑った。そしてスタジオでの調理を始める前に「できれば妻に合わせてください。家庭内政治では私は完全に負けているから」と冗談を飛ばした。
番組放送を前に、政界では与野党の攻防が続いていた。
野党「国民の力」のチュ・ジヌ議員は、「李大統領が撮影を行ったとき(9月28日正午ごろと推定)は、国家情報資源管理院の火災により、電算網647件、対国民サービス436件が停止し、金融・物流・出入国・防疫などに支障をきたした前例のない事態だった」と指摘した。
さらに「大統領室もバラエティ番組の撮影が不適切だと認識していたため、法的措置をちらつかせて撮影日まで隠そうとした。私が追加証拠を公開して初めて、2日後に事実を認めた」と述べた。
これに対し、カン・ユジョン報道官は「チュ議員の主張は明白な虚偽情報の流布行為」とし、「大統領室は根拠のない疑惑を掲げ、国家的危機を政争化し、虚偽を流布した行為に法的措置を検討している」と反論した。
その後、大統領室の公式サイトには当時の大統領日程が公開された。内容によると、国家情報資源火災発生(9月26日午後8時20分)→李大統領帰国(同日午後8時40分)→初期鎮火(27日午前6時30分)→記者団への通知(27日午前9時39分)→大統領主宰の緊急対策会議(28日午前10時50分)→『冷蔵庫をよろしく』収録(同日午後と推定)→中央対策本部(中対本)会議主宰(28日午後5時30分)という流れだった。
それでも「国民の力」は攻勢を続けた。チュ議員は「バラエティ収録が中対本会議より優先された前例は初めてだ。冷蔵庫が重要なのか、電算網が重要なのか。大統領がのんびりバラエティに出ている場合なのかと国民は不安を感じている」と批判した。
さらに「国民の力」チャン・ドンヒョク代表も「李大統領の48時間の動き、結局は嘘だった。国民が知りたいのは李在明大統領夫妻の“冷蔵庫の中身”ではなく、“大統領の頭の中身”だ」と強い言葉で非難した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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