韓国で文在寅(ムン・ジェイン)政権当時に蔓延していた「不動産トラウマ」が、再び現政権に覆いかぶさっている。
韓国政府が「融資抑制」と「投機根絶」を骨子とする10・15不動産対策を施行してから1週間も経たないうちに、政策設計者と与党側高位級人事らの「高額不動産保有」の実態が明らかになったためだ。
ダブルスタンダードという批判が急速に広がるなか、最大野党「国民の力」では不動産対策特別委員会まで発足させ与党批判を集中させている。
最近、論争の中心にいる人物はイ・サンギョン国土交通部第1次官だ。
ソウル全域と京畿道12地域を投機過熱地区・土地取引許可区域に指定した10・15不動産対策に対し批判世論が起きると、イ次官は10月19日にあるYouTube番組に出演し、「今(家を)買おうとするからストレスを受けるのだ。金を貯め、住宅価格が安定したらその時に買え」「市場が安定し所得が積み上がれば機会は回ってくる。今回の対策についてあまり失望する必要はないと思う」と発言した。
このように国民には「投機根絶」を強調しておきながら、イ次官本人は事実上、配偶者を通じて「ギャップ投資」(大きな保証金を大家に預ける制度「チョンセ」を抱えた住宅購入)を行っていた事実が明らかになった。
イ次官の妻ハン氏は2024年7月、今回の不動産対策の規制対象地域である京畿道・城南市柏峴洞のパンギョ・プリジオ・グランブル専用面積117平方メートルを33億5000万ウォン(約3億3500万円)でチョンセを抱え購入した。当該マンションの現在の時価は約40億ウォン(約4億円)まで上昇し、1年で約6億ウォン(約6000万円)の差益が生じたと伝えられている。
これに加え、不動産政策を総括する政府高位関係者も、大半がソウル江南圏の高額マンションを保有していることが明らかになった。
特に高強度規制政策設計作業の核心的役割を担ったキム・ヨンボム大統領室政策室長は、ソウル瑞草区瑞草洞の瑞草レミアンアパートを、ク・ユンチョル経済副総理兼企画財政部長官は開浦洞の再建築団地を、イ・オクウォン金融委員長は同団地をチョンセと融資を抱えて購入し数億ウォン(数千万円)の利益を得たと伝えられている。
政府と運命共同体格の与党指導部も同様の論争で批判を浴びた。
与党「共に民主党」のキム・ビョンギ院内代表は政府の10・15不動産対策を擁護し、「借金して家を買うことが正しいのか」と述べたが、その発言直後、彼が松坡区に40億ウォン台の再建築予定マンションを所有したまま、選挙区である銅雀区にチョンセで住んでいる事実が知られた。
これに対してキム院内代表は「実際に居住していたのでギャップ投資とは距離がある」と釈明したが、野党側は「それが民主党のいう投機だ」と反発した。
このような不動産論争は、過去の文在寅政権でも足かせとなったことがある。
当時、「投機との戦争」を指揮したキム・サンジョ大統領府政策室長は、賃貸料5%上限の「賃貸借3法」が施行される直前にマンションのチョンセ保証金を14%引き上げた事実が明らかとなり更迭された。
また、2住宅者であったキム・ジョウォン大統領府民情首席は、青瓦台(大統領府)の方針に従わざるを得ず、ソウル蚕室のマンション売却を決定したが、市場価格より約2億ウォン(約2000万円)高く売りに出したことが明らかになり、「売却のふり」論争を残したまま青瓦台を去った。
当時のトラウマが再現される可能性があるという危機感から、与党も鎮火に乗り出した。
「共に民主党」ハン・ジュンホ最高委員は、イ・サンギョン次官の論争について、10月22日の最高委員会議で「最近、イ次官の不適切な発言で国民の皆様にご心配をかけた」と頭を下げた。そして「高位公職者は一言一句が国民の信頼と直結するという事実を忘れてはならない」「我々与党はより謙虚に国民の声に耳を傾け、責任ある姿勢で国政を正していく」と述べた。
「共に民主党」キム・ヒョンジョン院内報道官は10月21日、国政監査対策会議終了後のブリーフィングで「与党側人事の不動産リストが流布し批判が提起されている」という質問に対し、「本質的でなくメッセンジャーを攻撃する行為だ」と応酬。そして「年末までに供給策を用意すると言っていなかったか。対策を用意するまで(今回の政府対策は)時間稼ぎ用であったと理解すればよい」と述べた。
すでに「国民の力」は、不動産イシューに火力を集中させるため陣容を整えた状態だ。
同党の不動産対策特別委員会委員長はチャン・ドンヒョク党代表、副委員長はキム・ドウプ政策委議長が自任して引き受けた。また、国会企画財政委・政務委・国土交通委の野党委員であるパク・スヨン、カン・ミングク、クォンヨンジン議員をはじめ、チョ・ウンヒ、キム・ウンヘ、チョ・ジョンフン議員など重量級人事を特委委員に大挙配置した。
チャン・ドンヒョク代表は、初の特委会議で10・15不動産対策について「すでに失敗と判明した文在寅政権の誤った規制をそのままコピーし悲劇を繰り返そうとしている」と批判した。
そして「民主党院内代表から国土部次官まで、自分たちはギャップ投資のはしごを踏み、主要地域の不動産を持っている」とし、「不動産に対する歪んだ信念を貫徹しようとする偽善であり傲慢だ」と指摘した。また「住宅地獄を強要する李在明(イ・ジェミョン)政権と共に民主党の暴走を防ぎ抜く」と強調した。
チョ・ジョンフン議員もフェイスブックを通じて、キム院内代表の釈明に言及し、「急いで反論しても本質は隠せない。自分は江南のマンションは握っておきながら、青年の持ち家のはしごは蹴り落とすという二重性だ」とし、「“借金なしで家を買う世の中”とは、今の金持ちだけが家を買う世の中だ。10・15対策には1住宅者のチョンセローン規制まで入った。結末は一つだ。金持ちはソウルへ、無住宅者はソウルの外へではないのか」と反問した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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