新ドラマの始まりに期待がかかる今も、根強い影響力を見せている日テレ系ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』。平均視聴率11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、3月10日の最終回の視聴率は15.4%を記録して有終の美を飾った。
最終回放映終了から3週間近くなるが、作品が与えた影響と熱量、余韻は今も冷めない感じがする。実は韓国の日本ドラマ好きの間でも『3年A組』は多くの関心を集めた。
韓国では日本より約1週間遅れで、ケーブルテレビ局『チャンネルW』が放送した。『チャンネルW』は、『3年A組』と同じ枠で放映された『トドメの接吻』も放映しており、「それが今まで人気1位だったが、『3年A組』はそれを超える勢い」だったという。
実際、SNSや日本ドラマのコミュニティには、『3年A組』に関するさまざまな声が散見でた。
例えば「これほど先が読めない日本ドラマは初めてかも」という意見だ。
以前も紹介した通り、どんでん返しの連続であるストーリーはもちろん、脚本を手がけた武藤将吾に注目が集まるなど、その結末を巡って何かと盛り上がっていた。
出演俳優たちへの賛辞も多かった。
もともと知られていた菅田将暉や川栄李奈、永野芽郁のほかにも、今田美桜や新條由芽といった比較的知名度の低い女優にも注目が集まっており、日本と同じく次世代スターが続々と発掘される作品となっている。
最近、韓国で「あだち充の漫画に出てきそうな清純なビジュアル」とされる日本人女優、YUKIKA(寺本來可)ような“原石”を探すような感覚でドラマを楽しむファンが多かった。
韓国でも最近、“奇跡の世代”と呼ばれる女優やアイドルたちが頭角を現しているが、それと重ねる視聴者たちも多かったようだ。
「日本ドラマによくある非現実的な演出だが、面白いから良し」「ネットの恐ろしさは韓国でも共通する。韓国でも同じようなテーマでドラマを作るべき」という意見もあった。
最近、韓国では日本でも大ヒットしたドラマ『リーガルハイ』がリメイクされているが、『3年A組』も同じようなリメイクへの期待を抱かせているわけだ。
面白いものでは、「第1話に出てきたあの朝礼体操(=本格ダンス)って、何か意味があるのだろうか?最近あまり出てこないから寂しい。まさか何かの伏線じゃないよね?」という書き込みもあった。
韓国では以前、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で流行った“恋ダンス”のカバー動画が続出していたこともあったが、『3年A組』の朝礼体操に関しても、「K-POPアイドルグループのダンスみたいで新鮮だ。いや、衝撃だ(笑)」「朝からやるには激しすぎると思うけど(笑)。意外と中毒性が高い音楽だよね?」と、関心を示すのはさすがといったところだろうか。
ただ、個人的に印象的だったのは、こんな書き込みだった。
「こんな先生を持つ3年A組がうらやましい」
「毎回私の胸を打つ柊の言葉。彼の言葉を聞いた生徒たちはどんな大人になるのだろう?」
「現実にはいないと思うけど、柊のような担任の先生がいてほしかった。一生忘れられないだろうな」
日本でも柊一颯が放つ一語一句が、ときに胸に刺さり、ときに心に響いて話題になってきたが、韓国の視聴者たちの心も揺さぶっているわけだ。
韓国でも最近、教育問題を扱ったドラマ『SKYキャッスル』が社会現象を起こすほどの大ヒットとなったが、描く題材が少々異なるとはいえ(『SKYキャッスル』は学閥至上主義を描いていた)、「教育現場」を舞台にしたドラマが同じ時期に日韓両国で話題になったのは偶然だろうか。
いずれにしても、生徒たちだけでなく視聴者にも“考えることの大切さ”を訴えかけてきた『3年A組』。韓国では2月に正月休みを挟んだ影響でさらに1週間ずつ延ばされ、3月26日・27日(27日は再放送)に最終回がオンエアされた。
気になって検索サイトやSNSに韓国語で「3年A組」と打ち込んで検索してみると、韓国の日本ドラマ・ファンたちも大絶賛だった。
「世の中の人たちがこのドラマの最終回を見て良心の咎めを少しでも感じてくれたら」
「3年A組最終回、本当に狂ったように泣いた。 本当の犯人はとてつもなく大きな存在。絶対捕まえられない犯人。柊の言葉に共感することは多かった」
「私にとって人生最高の日本ドラマ。内容とセリフが毎回教訓。SNSで何も考えず書いた悪意的なコメントで、純粋な弱者を傷つけ痛めつけていることを改めて考えさせられた」
「柊が本当に伝えたかったメッセージは、少なくともドラマを見たすべての視聴者たちにはしっかりと伝わったのではないか。マインドボイス利用者たちに訴えたメッセージは、ある意味、今を生きる私たち全員が真剣に考えるべきことかもしれない」
韓国にも届いた柊のメッセージ。日本と韓国の若者たちが同じドラマを見て共感し、何かを考えるきっかけを与えてくれた『3年A組』。韓国からも3Aロスの声が聞こえてきそうだ。
(文=慎 武宏)
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