韓国の女プロゴルファー、ユ・ヒョンジュ。メディアがこぞって「ゴルフ女神」「次世代セクシークイーン」と報じる人気選手だけに、もし日本でプレーすることがあれば、大きな注目を集めることだろう。
ちょうど今から3年前の2018年10月。韓国の水原(スウォン)で2度目のロングインタビューをしたことがあるが、本人もそうした注目と期待はヒシヒシと感じているようだ。
その当時の内容を3回にわたって再現する思い出インタビュー。3回目の今回は、ユ・ヒョンジュのゴルフ観について紹介したい。
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「自分自身も緊張しますし、周囲の雰囲気も緊張感があります。1年を決める試合なので、他の大会に比べてプレッシャーも大きい。選手たちの表情も硬くて、笑っている人もいないです。ただ、私がプレッシャーを感じたからといって、良いプレーができるわけではないと思うんですよ。最大限、“普段通り”と考えるように努めています。余計な力が入らないように。自分のゴルフができるようにしたいですね」
当時のユ・ヒョンジュは日本ツアーに進出すべく、クォリファイングトーナメント(QT)に挑戦中。ファーストQTを通過し、セカンドQTを目前に控えていた。その緊張感を語りつつ、“自分のゴルフ”という言葉を聞き逃すわけにはいかなかった。
以前取材した“韓国女子ゴルフ界のニューヒロイン”パク・キョルも、「周りを気にせず、自分のプレーにだけ集中すること」が信条だと語っていたが、ユ・ヒョンジュが目指すゴルフとは、一体どんなゴルフなのだろうかと、気になった。
「自分が主人公のゴルフですね。他人や外部の影響を受けず、自分のプレーに没頭しているときが、一番満足する瞬間です。もちろん自分の思い描いた通りにボールが落ちればいいですけど、たとえそうならなくてもゴルフに集中しているときが大切。ボギーになっても、自分自身が納得できればいい」
ユ・ヒョンジュには成績以上に大切にしているものがあるという。
「バーディーに喜んで、ボギーに落ち込む。そういうゴルファーは、優勝したら心底うれしいでしょう。ゴルフで結果を出すことがすべてだからです。でも成績が落ちると、それこそ自尊心までボロボロになってしまう。私はそういうスタイルではないようです。数字や成績に縛られるのも好きではないですね。ひたすら自分で感じて、自分が考えて、自分で選択するゴルフ。自分が主人公のゴルフをしたいという気持ちが強いです」
彼女がそんな思いを持つようになった背景には、“ゴルフを一度やめた”という過去が影響を与えている。
ユ・ヒョンジュは21歳のときに、一度ゴルフから完全に離れている。はっきりと誰とは明言はしなかったが、他人に「これをしなさい」「これはやめなさい」と統制されながらゴルフをしていることが嫌になったという。韓国での対面インタビューは今回で2回目だったが、初めて聞いた話だ。
「すべてを統制される人生を生きていると、“自分は誰なのか”と思うようになったし、たとえそれでいい結果が出ても幸せなのだろうかと思った。とても重要な問題です。誰かのセッティングで動くロボットのようになって、結果を残したとしても、そのセッティングした人が幸せなのであって、私が幸せではない。だから、ゴルフをやめた。2年間、ゴルフを一切やっていないんです。クラブを見たくもなかった」
しかしゴルフを離れてみて、気付いたことがある。すると再びクラブを握るしかない気持ちが生まれた。
「“私の限界ってどこなんだろう”、“自分が自主的にゴルフをやったらどこまで行けるのか”と考えるようになりました。そして再びゴルフを始めたんです。自分で自分の足りないところを見つけて、補い、挑戦する。同じゴルフをしても、やらされているのとは、まったく違います。今もその途中ですし、日本ツアー挑戦もそのひとつです」
そんなユ・ヒョンジュだけに、「ゴルフ選手はこうあるべき」といった枠組みが大嫌いなんだとか。
「韓国では私に対して“ゴルフ選手らしくない”と指摘する声も少なくないんです。でも私はその枠組みに入りたくない。他の人も“そこから出るべき”なんてことは思いませんが、その枠組みに無理やり合わせて髪の毛を黒く染めたりはしません。ファッションだって、ある意味、人生の一部じゃないですか。そこに制限を作る必要はないと思うんですよね。私のカラーのまま、ゴルフをしたいんです」
実際に彼女のSNSをのぞいてみると、ファッションや髪型にもこだわりが伝わってくる。ゴルフ選手らしくないかもしれないが、ユ・ヒョンジュらしいと感じるのは私だけではないだろう。
あれから3年。“ゴルフ女神”“次世代セクシークイーン”は今も、自分らしく生きることをゴルフを通じて実現しようと日々奮闘しているに違いない。
文=慎 武宏
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
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