なぜ20-30代の女性たちは尹大統領の弾劾デモに集まったのか、韓国での新しい影響力とは

2024年12月18日 社会 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾デモの中心にいる世代といえば、20~30代の女性たちだろう。

【写真】20-30代の参加で韓国のデモに訪れた変化

頭を剃るような過激な抗議ではなく、希望の歌を歌い、ろうそくの代わりにアイドルの応援棒を手にした彼女たちは、デモの歴史を新たに書き換えたと評価されている。

もう政治的な発言の主役は「586世代(50代、1980年代に学生運動を経験した1960年代生まれ)」から「20~30代の女性」へと変化している。「若い女性たちが韓国政治の希望」という政界のベテランからのメッセージは、今後も女性がより大きな政治的影響力を発揮する可能性を示唆した。

デモ現場で出会った女性たち

尹大統領に対する2度目の弾劾訴追案の採決を控えた12月14日、ソウル永登浦(ヨンドゥンポ)区の国会前では、20~30代の女性たちの姿を簡単に見つけることができた。

12月14日、国会前の弾劾デモ
(写真=時事ジャーナル)12月14日、国会前の弾劾デモ

「私たちが世界を変える」というプラカードには、女性たちが政治的な声をより積極的に上げていこうという意志が表れていた。

「間違いを間違いだと声を上げることを恐れない」。この日のデモに参加した20~30代の女性たちが共通して述べていた言葉だ。

友人と一緒にデモに参加したというパクさん(21)は、「一部の教授が『政治的な声を上げること』に慎重であるべきだと指摘した。学生たちが団体行動をすることについて懸念を示したのだ」と話しつつ、「しかし1980年代の民主化運動のときに20代が中心となったように、間違いを間違いだと声を上げられる人になろうという雰囲気に変わってきた」と語った。

彼女たちは、尹大統領が政権初期から反ジェンダー平等政策を推進してきたことに対して怒りを抱いているという。

イさん(34)は「尹大統領は大統領選の前から『女性家族部の解体』を公約に掲げるなど、反フェミニズムで人気を得た張本人ではないか」とし、「これまで抑え込まれていた怒りが今回の『非常戒厳』で爆発したのだ」と強い口調で訴えた。

怒りを表現する方法も、従来のデモとは異なっていた。彼女たちは「応援棒」を手に平和的なデモを目指し、希望に満ちた歌詞のK-POPを歌ったのだ。

アイドルグループ少女時代の『Into the new world』を熱唱したキムさん(19)は、「数多のわからない道の中で、かすかな光を追いかけていく。いつまでも一緒にいるよ。また巡り逢えた私の世界」という歌詞を歌いながら感極まったという。

彼女は「政治家に失望と怒りを感じたが、過激な方法で表現したくなかった」と語り、「明るく希望に満ちた方法でも政治的な声を上げられるのではないか」と問いかけた。

12月14日、国会前の弾劾デモ
(写真=時事ジャーナル)12月14日、国会前の弾劾デモ

こうしたデモの新しい形式は、より多くの女性たちを現場へと引き寄せた。慶尚北道から来たチョンさん(19)は「小学生の頃、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾デモに参加したが、怖かった記憶がある」と振り返り、「今回のデモはみんなが出てきて笑ったり、おしゃべりしたり、歌を歌ったりしているので、もう怖くない」と話した。

ナム・スジョンさん(仮名・18)も「デモの現場で同じ応援棒を持っていると、なんとも言えない連帯感を覚える。同じ女性たちがいることに大きな安心感を覚えた」と感想を述べた。

MZ世代は「民主世代」、新たな意味に

「脱政治世代」と呼ばれていた彼女たちは、どの世代よりも強く民主主義を望んでいた。

尹大統領に対する弾劾案が可決された直後に会ったユさん(19)は「すべての市民の努力のおかげで民主主義という結実を見ることができた」と述べ、「社会の一員としての役割を果たさなければと思い参加した。民主主義の勝利を忘れず、これからも韓国の未来を背負っていきたい」と決意した。

デモの現場では、制服を着た10代の若者たちのあどけない顔も目立った。高校の友人と一緒に仁川から来たというキムさん(17)は「休み時間や授業中にも、先生や友達と非常戒厳や弾劾について話をしている」と声を弾ませた。彼女たちは弾劾案が可決されると涙ぐみ、「とても幸せだ」と感激の言葉を漏らした。

これに関連して、既成世代の間では「MZ世代(1980年代初頭~2000年代初頭生まれ)」を「民主世代」と新しく定義しようという冗談も飛び交った。

キムさん(60)は「デモに多くの若い人たちが参加しているのを見て、MZ世代は個人主義的すぎるという偏見が打ち破られた」と述べ、「若者たちが国を国らしくするために先頭に立っていると感じた。これからは否定的な意味でMZ世代という言葉を使うべきではない」と強調した。

12月14日、国会前の弾劾デモ
(写真=時事ジャーナル)12月14日、国会前の弾劾デモ

専門家たちは、尹大統領に対する「怒り」とK-POPを通じて学んだ「連帯」が合わさり、このような新しいデモ文化が生まれたと分析している。

成均館大学社会学科のク・ジョンウ教授は「尹錫悦政権が発足して以降、相対的に20~30代の女性たちの声が多く無視され、その不満が蓄積していたようだ」と述べ、「今回の機会を通じて、自分たちの存在を認めてほしいというメッセージを政治界に投げかけた」と説明した。

さらに、「女性たちはこれまでK-POPのファンダムを通じて連帯する社会的スキルを多く身につけてきたようだ」とし、「自分が応援するアーティストを献身的に支える行動が、集団行動に積極的に参加する原動力となった」と付け加えた。

政界のベテランであるユン・ヨジュン元環境部長官は、CBSラジオ『キム・ヒョンジョンのニュースショー』に出演し、「今回、大きな希望を見たのは若い女性たちの力だ」と述べ、「今回のデモを牽引したのは若い女性たちの力ではなかったか」と強調した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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