政府の支援によって家庭や保育園に派遣される専門人材を、韓国では「政府派遣保育教師」と呼ぶ。
共働き家庭の増加に伴い利用者は増えており、政府主導という点で高い信頼を得てきた。
しかし、その派遣教師によって2人の子どもが虐待を受けていたことが、本サイト提携メディア『時事ジャーナル』の取材で明らかになった。
被害児童の母親Aさんは、派遣教師Bを児童虐待犯罪の処罰等に関する特例法違反で告訴。検察が略式起訴し、仁川(インチョン)地裁は6月24日、罰金1000万ウォン(約100万円)の略式命令を下した。正式裁判には至らなかった。
検察が裁判所に提出した資料によると、Bによる虐待行為は計9件に及ぶ。
「被害男児C君(2)の足を引っかけて床に倒す」「体を強くひねって床に倒す」「被害女児Dちゃん(2)の頭を強く回したり、両腕をつかんで無理やり立たせる」「Dちゃんの後頭部を押して床に倒し、頭を2回叩く」といった身体的虐待である。
これらの場面は、Aさんが念のために自宅へ設置していたホームカメラにすべて記録されていた。
Aさんは『時事ジャーナル』の取材に対し、「政府の事業だからこそ子どもを安心して任せたのに非常に失望した。事業への信頼も落ちてしまった」と吐露。さらに「加害者が子どもを暴行したのに罰金刑で終わってしまった。裁判所は児童関連機関への3年間の就業制限を命じたが、その期間を過ぎれば再び就業できるのも問題だ」と憤りをあらわにした。
事件後、Bは政府派遣事業から即座に除外された。ただ、それだけでは不十分だとの指摘もある。政府の保育事業への信頼を守るためには、派遣人材への教育プログラムを強化し、現場で適切に保育が行われているかを常時点検する仕組みが必要だと専門家は提言する。
さらに法曹界からは「保護者が虐待の兆候を見つけた場合、まず証拠収集を優先すべき」との助言も出ている。韓国弁護士協会認定の刑事法専門、アン・ヨンリム弁護士は「子どもが虐待を受けた疑いがあるなら、まず証拠を確保し、その上で速やかに刑事告訴することが重要。刑事裁判で有罪が認められれば、その後に損害賠償請求訴訟を起こすことも可能だ」と説明した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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