「どの子でも構わない」うつ病を患った韓国の小学校教員が復職後に児童を殺害…次々と予兆をスルーした責任は?

2025年02月12日 社会 #時事ジャーナル
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韓国・大田(テジョン)の小学校で、教員が児童を刃物で刺し殺害する事件が発生したなか、加害教員が深刻なうつ病を患っていたことが判明し、教育部の管理体制に対する批判が高まっている。

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精神疾患を抱える教員が職務を適切に遂行できるかを審査する「疾病教員審議委員会」を経ずに復職したうえ、復職後には暴力的な行動が見られたにもかかわらず、形式的な調査しか行われなかったためだ。

2月11日、大田広域市教育庁によると、8歳のキム・ハヌルちゃんを刃物で刺し、殺害した40代の女性教員A氏は、2024年12月9日にうつ病による6カ月間の病気休職を申請していた。

A氏の警察への供述によると、2018年からうつ病の治療を受けており、休職中には自殺を考えたこともあったという。

ところが、突然休職を中断し復職したA氏は、復職からわずか3日で「イライラした」と警察に供述した。理由は、自身が授業から外されたことだった。

彼女は「どの子でも構わない」と考え、犯行対象を物色し、「最後に教室を出る子に“本をあげる”と言って視聴覚室に誘い込み、首を絞めたうえで刃物で刺した」と供述したという。

A氏、犯行前にコンピュータ破壊や暴力行為も

問題は、A氏が精神疾患を完全に治療しないまま復職したことだ。A氏は業務に復帰するため、学校側にうつ病の診断書を提出した。学校側は「業務に支障はない」と記載された精神科の診断書を確認し、復職を許可したと伝えられている。

大田教育庁は11日、緊急のブリーフィングで復職を許可した理由について、「休職・復職業務規定に従い、医師の診断書を添付して教員が復職申請をすると、30日以内に復職させることになっている」と述べ、「精神科の専門医が『日常生活が可能な程度に回復した』と判断したため、復職を許可した」と強調した。

この過程で、審議委員会は開かれなかったことが確認された。審議委員会は、精神的・身体的疾患がある教員が教職を適切に遂行できるかを判断する仕組みだ。現在、ソウル、光州(クァンジュ)、世宗(セジョン)、大田など一部の教育庁で運営されている。

大田教育庁の審議委員会規則によると、審議委員会は委員長を含む10人以内の委員で構成され、医療専門家、法律専門家、公務員、教職団体から推薦された者、保護者団体の関係者などが含まれる。

審議は、医師の診断書、学校長の意見書、医療専門家の意見書、関係者の意見聴取を通じて行われる。その後、教員の意見を積極的に取り入れ、疾患の治療や療養などがしやすい勤務環境を整える必要がある。

教室
(写真=photoAC)写真はイメージ

しかし、大田教育庁は2021年以降、審議委員会を開いたことがないことが明らかになった。これは、ソウル市教育庁も同様だ。

A氏のように、本人の請願により病気休職に入った場合、審議委員会の対象には含まれないという点も制度の欠陥として浮き彫りになった。請願による病気休職は、休職申請書と診断書の提出だけで可能だ。復職時も、休職中に診断を受けた病院で回復したとの診断書を提出するだけでよい。

学校に復職したA氏は暴力的な行動を見せたとされる。犯行前の2月5~6日にかけて、インターネットの接続が遅いという理由でコンピュータを破壊し、同僚教師が近づいて「何かあったのか」と尋ねると腕をひねるなどの暴力行為を行っていた。

これらの行動に対して、A氏を制止する措置は取られなかった。警察への通報はなく、A氏の異常行動の報告を受けた教育庁も、直接面談することはなかった。

大田教育庁のチェ・ジェモ教育局長は11日午前のブリーフィングで、「教師が非常に不安定な状態にあったため、対面での調査は行わなかった」とし、「学校の管理者が間接的にコミュニケーションを取るほうが良いと判断した」と説明した。

結局、A氏に下された措置は「副校長の隣で勤務すること」だけであった。A氏は学校側から再休職を勧められたが、それを受け入れなかったとされている。何の制裁も受けることなく、最終的にキム・ハヌルちゃんを残忍に殺害するに至った。

教育部長官「学生の安全対策を徹底的に見直す」

教育部は、事件発生後になって対策を講じる姿勢を示した。イ・ジュホ社会副首相兼教育部長官は、11日に予定されていた国会交渉団体の演説出席などの主要日程のほとんどをキャンセルし、午前中に大田教育監と会い、状況を共有した。

イ長官は「今回の事態の深刻さを重く受け止め、二度とこのような悲惨な事件が起こらないよう根本的な対策を講じる」と述べ、「教育部と教育庁は、学生の安全を徹底的に点検し、安全対策を綿密に検討していく」と改めて強調した。

各教育庁も相次いで安全管理対策を発表した。大邱(テグ)教育庁は、今回の事件の加害者が精神疾患を抱えた教員であったことを受け、教員の心理ケア対策を講じる方針を明らかにした。また、保護者から子どもの帰宅に関する同意書を受け取り、希望者に限って付き添いを許可する計画だ。

写真はイメージ
(写真=photoAC)写真はイメージ

イム・テヒ京畿道(キョンギド)教育監は、フェイスブックに「深刻な精神疾患がある場合、教壇に立つべきではない」と投稿し、「採用段階での検証を強化し、勤務中に問題がないかを周囲の評価を通じてチェックする仕組みを整える」と表明した。

そのうえで、「今回の事件は特殊なケースであり、安易に一般化されることで、学校で懸命に働く教師たちが傷つくことがないよう願う」と付け加えた。

こうしたニュースに、低学年の子どもを持つ保護者の間では不安が広がっている。

小学校2年生と4年生の子どもを持つ49歳の主婦は、「最も安全な場所だと信じていた学校で、こんな恐ろしい事件が起こったことに衝撃を受けた」と語り、「第2のハヌルちゃんを出さないためにも、政府は徹底した対策を講じるべきだ」と訴えた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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