24歳の女優に続き、人気歌手まで突然この世を去り…韓国で一度挫折した「ネット実名制」が再び議論に

2025年03月12日 社会 #時事ジャーナル
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女優のキム・セロンさん(24)に続き、3月10日には歌手のフィソンさん(本名チェ・フィソン、43)が突然この世を去った。

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警察はフィソンさんの死因を調査中だが、両者とも生前、悪質なコメントに苦しんでいたことが知られている。

近年、芸能人だけでなく、ユーチューバーやインフルエンサーといった一般人も、インターネット上での無差別な誹謗や虚偽情報による被害を訴えるケースが増加しており、「インターネット実名制」の導入が必要ではないかとの議論が再燃している。

韓国の主要ポータルサイトは、悪質なコメントを防ぐために様々な措置を講じている。

最も利用者の多いポータルサイトである「NAVER」は、大規模災害や社会的影響が大きい事件については、メディア側が先制的にコメント欄を閉じるよう、協力を要請している。「Daum」も24時間後に自動的に消えるコメント「タイムトーク」に不適切な内容が投稿されると、AI監視システム「セーフボット」が自動的に非表示にする対策を導入している。

しかし、それにもかかわらず、SNSやインターネット掲示板では依然として匿名性を悪用した悪質な投稿が絶えないのが現状だ。

キム・セロンさん
(写真=OSEN)キム・セロンさん

昨年12月に発生したチェジュ航空の旅客機事故の際も、オンライン上で悪質な書き込みが相次いだことから、投稿者のIDやIPアドレスを公開する「インターネット準実名制」の導入が必要ではないかとの声が上がった。

第21代国会では関連法案が議論されたものの、国会の会期満了に伴い自動廃案となり、制度化には至らなかった。

一般人も悪質コメントの被害者に

韓国では2007年に一度、インターネット実名制が施行された。当時は、会員数10万人以上のウェブサイトに対し、実名認証を義務化した。

しかし、2012年に憲法裁判所が「表現の自由を過度に侵害する」として違憲判決を下し、制度は廃止された。それ以降、韓国では自主規制や法的措置を中心とした対応策が取られている。

インターネットの急速な発展に伴い、人々がオフラインよりもオンラインで過ごす時間が増えていることから、再びインターネット実名制を議論すべきだとの主張が出ている。

特に現在は芸能人だけでなく、一般人も悪質コメントの標的となるケースが増えている。

2024年9月には、「モッパン(食べる放送)」で有名なユーチューバーのツヤン(本名パク・ジョンウォン)が、悪質な書き込みによる精神的苦痛を訴え、ネットユーザー20人を情報通信網法違反および侮辱罪の容疑で警察に告訴した。

また、彼女は「レッカー連合」と呼ばれる一部のユーチューバーに、「過去の情報を暴露しない条件で金銭を要求された」として、恐喝被害にも遭った。

ただ、インターネット実名制が表現の自由を制限し、監視社会につながる可能性があるとして、反対意見も根強い。

フィソンさん
(写真=OSEN)フィソンさん

特に中国のような権威主義国家では、実名制が政治的統制の手段として悪用されており、韓国でも同様の弊害が生じる恐れがあるとの懸念がある。また、2007年に実名制が導入された際には、海外IPを利用したり、偽名アカウントを作成したりして制度を回避する手段が取られ、実効性が低いことも問題視された。

さらに、個人情報流出のリスクも大きな懸念材料となる。2011年7月、SNS「サイワールド」で大量の個人情報が流出する事件が発生し、実名制の危険性が改めて浮き彫りになった。

「加害者への処罰強化が必要」

インターネット実名制の導入がすぐには難しい場合、オンラインプラットフォーム事業者に対して強い責任を求めることが代替策になり得るという見解がある。

欧州連合(EU)では「デジタルサービス法(DSA)」を通じて、プラットフォーム事業者が有害コンテンツの拡散を防ぐ責任を負い、不法・有害コンテンツやフェイクニュースに対応する体制を整えることを義務付けている。

また、現行法では悪質な投稿やコメントをした人物に対する処罰の水準が低いため、それを引き上げる必要があるとの指摘もある。

K-POPガールズグループIVEのチャン・ウォニョンに関する虚偽情報を拡散したYouTubeチャンネル「タルドク収容所」の運営者は、1月15日に懲役2年、執行猶予3年の判決を受けるにとどまった。

チャン・ウォニョン
(写真=OSEN)チャン・ウォニョン

この運営者は、チャン・ウォニョンだけでなく、歌手カン・ダニエルなど他の有名人に対しても誹謗中傷の投稿を続けていた。

刑事事件専門のナム・オンホ弁護士は、「悪質コメントの問題は今に始まったことではない。技術の発展により、悪質コメントを通じた攻撃の手法がディープフェイクなどへと変化し、悪質な投稿の拡散速度も以前よりはるかに速くなっている」と述べた。

さらに、「根拠のない虚偽情報を拡散するユーチューバーやX(旧ツイッター)ユーザーの中には、海外にサーバーを置いたサイトを利用している者もいる。こうした悪質な投稿の拡散者に対しては、インターポール(国際刑事警察機構)とも協力し、捜査を進める必要がある」と指摘した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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