「まるで巨大な『イカゲーム』のよう」…24歳女優の悲報で注目される韓国の“奈落文化”

2025年02月18日 社会 #時事ジャーナル
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映画『アジョシ』で注目を集めた女優のキム・セロンさんが、突然この世を去った。享年24歳だった。

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2月16日、キム・セロンさんはソウル城東区(ソンドング)の自宅で亡くなっているのが発見された。死因はまだ明らかになっていない。

ただ、2022年の飲酒運転事故以降、世間の厳しい批判を受けて事実上芸能界から退いた後、復帰を試みるも何度も失敗し、大きな挫折を感じていたのではないかとの分析が出ている。

特に彼女を追い詰めた要因として、韓国社会に根付く「奈落文化」があると専門家は指摘する。

「奈落文化」とは、芸能人がスキャンダルに巻き込まれると、世論の集中砲火を浴び、社会的に抹殺されることを指す。批判が始まると、個人のプライバシーや過去の経歴まで暴かれ、社会復帰が困難になるのが一般的だ。

韓国社会において、芸能人への関心と人気が諸刃の剣とされる理由がここにある。

キム・セロンさんのケースは、この現象を端的に示している。彼女の過ちに対する批判は、法的な処罰を超え、個人の再起そのものを不可能にするほど厳しいものだった。

キム・セロンさん
(写真=OSEN)キム・セロンさん

嶺南(ヨンナム)大学社会学科のホ・チャンドク教授は、「芸能人の『奈落』は、大衆が特定の人物に向ける一種の社会的制裁であり、世論の感情を発散する手段にもなっている」とし、「問題は、この過程が単なる叱責を超え、社会的な生存そのものを困難にする点だ」と指摘した。

芸能人がスキャンダルに巻き込まれると、メディアは大々的に報道し、大衆の関心を引きつける。その後、オンラインコミュニティやSNSで批判が急速に拡散し、広告主や放送局はイメージの悪化を懸念して契約を解除する。これにより、芸能人は単なる職業的損失を超え、公の場から完全に排除される。

韓国で芸能人は、単なる職業ではなく、大衆の期待と道徳的基準を満たさなければならない存在とされる。

ホ教授は「芸能人の過ちに対して世論が強い道徳的批判をするのは自然なこと」としながらも、「しかし、その批判が非難へと変わり、過剰になることで、芸能人の再起の可能性を完全に断ってしまう状況に変質している」と指摘した。

一度のスキャンダルで復帰がほぼ不可能な韓国

メディアの役割も「奈落文化」を助長しているとの批判がある。

芸能人にスキャンダルが発生すると、メディアは競って関連報道を展開する。しかし、問題はその過程で、扇情的なタイトルが使われたり、反論の機会が与えられたりしないまま、不十分な事実確認のもと疑惑が報道されるということだ。

こうして大衆の間で特定の芸能人に対する否定的な認識が強まると、法的処罰とは別に、当事者は復帰が事実上不可能な状況に追い込まれる。

韓国外国語大学ミネルバ教養大学のキム・イェリム教授は、「メディアが疑惑を報じる際、事実確認が不十分な暴露記事や、スキャンダル当事者の立場を十分に伝えないことがある」と指摘した。

さらに、「キム・セロンさんがカフェでアルバイトをしていたという報道のように、飲酒運転とは無関係な私生活まで報道された。こうした記事は人権侵害につながる可能性がある」と警鐘を鳴らした。

「奈落文化」のもう一つの重要な要素は、大衆による過度な非難だ。

SNSやオンラインコミュニティでは、特定の芸能人がスキャンダルを起こすと、数多くのコメントや投稿が瞬く間に拡散され、この過程で、批判を超えて嘲笑や人格攻撃が頻繁に起こる。

しかし、すべての社会が同じような反応を示すわけではない。アメリカでは、芸能人が法的処罰を受けた後、一定期間の自粛を経て復帰するケースが多い。一方、韓国では一度スキャンダルが発生すると、芸能界復帰はほぼ不可能に近い。

全北(チョンブク)大学社会学科のソル・ドンフン教授は、「芸能人だからといって、法律で定められた以上の社会的制裁を受けるべきではない」とし、「将来が見えなくなる状況に陥れば、大きな挫折を感じることになり、うつ状態にある場合、深刻な影響を及ぼす可能性がある」と指摘した。

「メディア・大衆・芸能界すべてが変わるべき」

キム・セロンさん
(写真=OSEN)キム・セロンさん

このような問題を改善するためには、メディアの倫理的な報道基準の確立が急務だという指摘がある。

大衆の視点に偏った記事ではなく、当事者の反論や立場を十分に反映したバランスの取れた報道を強化すべきだという意見が出ている。また、事件の本質と法的処罰の程度を明確に区別し、不必要な論争の拡大を防ぐことも重要とされている。

大衆の態度の変化も求められている。

成均館(ソンギュングァン)大学社会学科のク・ジョンウ教授は「芸能人の過ちを批判することは必要だが、彼らの再起の可能性を完全に断つような制裁は避けるべき」とし、「社会的な問題を起こした人物が相応の責任を果たした場合、再び活動できる道を開くべきだ」と述べた。

さらに、芸能事務所や放送局も、芸能人の私生活をより体系的に管理し、スキャンダルが発生した際には無条件の追放ではなく、適切な手続きを踏んで対応するべきだという指摘もある。

アメリカ・イェール大学精神医学科のナ・ジョンホ助教授は、「過ちを犯したからといって、再起の機会も与えず、社会から抹殺することが健全な社会とは思えない」とし、「失敗した人を切り捨て、何事もなかったかのように過ぎ去る今の社会は、まるで巨大な『イカゲーム』のようだ」と批判した。

また、「記事だけでなく、働いていたカフェにまで誹謗中傷が殺到するのを見たことがある。どれほどの命が犠牲になれば、社会全体が破壊的な羞恥心を植え付けることをやめられるのか」と問いかけ、「今こそ社会的な対話と考えが必要なときだ」と訴えた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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