宣告当日だけで4人が死亡…韓国・尹大統領の運命を決める判決が迫り、思い出される“8年前の悪夢”

2025年03月18日 社会 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する憲法裁判所の弾劾審判の宣告日が迫るにつれ、緊張感が高まっている。

【注目】尹大統領が罷免しても復帰しても韓国は内乱状態へ

大統領罷免をめぐる対立が深まり、8年前の惨劇が再現されるのではないかとの懸念も強まっている。

警察は、2017年の朴槿恵(パク・クネ)元大統領の罷免当時の状況やソウル西部地裁での騒乱事件を振り返り、惨劇の再発を防ぐために総力を挙げる方針だ。

釈放された尹大統領が公邸に引きこもりを続けるなか、大統領と与野党の双方が憲法裁判所の決定を「受け入れる」との明確なメッセージを発するべきだという声が高まっている。

「弾劾賛否」で対立、憲法裁判所は最長の審議を継続

3月17日、法曹界によると、尹大統領の弾劾審判の宣告は3月20~21日が有力視されている。

憲法裁判所は宣告の2~3日前に、申立人側と被申立人側に確定した日程を通知し、その後メディアに公表するのが通例だ。憲法裁が大統領弾劾審判のなかで歴代最長の審議を続けており、この状況が来週まで続くとの見方もある。

尹大統領の釈放を伝えるニュース
(写真=時事ジャーナル)尹大統領の釈放を伝えるニュース

尹大統領の「運命の日」が当初の予想より遅れることで、弾劾賛成・反対の集会の雰囲気はさらに過熱している様相だ。

「尹錫悦即時退陣・社会大改革非常行動」は同日14時、光化門(クァンファムン)広場の北側で政界、宗教界、社会の主要団体と共に「尹錫悦即時罷免を求める各界緊急時局宣言」の記者会見を開いた。

最大野党「共に民主党」の国会議員全員が連名で賛同の意を示し、「祖国革新党」「進歩党」「基本所得党」「社会民主党」も参加した。

警察の非公式推計によると、約1200人が参加したこの集会で、彼らは「内乱首謀者・尹錫悦を罷免せよ」と訴え、「憲法裁判所は弾劾訴追案が可決されてから93日が経った今日になっても、宣告日程すら明らかにしていない。内乱勢力の思惑通り、3月末から4月までこの状況が続けば、社会は深刻な混乱に陥るしかない」と強調した。

さらに「憲法裁判所の罷免決定だけが、極端な混乱を早期に終息させ、市民の失われた日常を取り戻すことができる」とし、憲法裁判所に迅速な宣告を重ねて求めた。

尹大統領の弾劾に賛成する市民たち
(写真=時事ジャーナル)尹大統領の弾劾に賛成する市民たち

一方、弾劾反対派の団体は、憲法裁判所近くの安国(アングク)駅5番出口で集会を開いた。

「自由統一党」や「オムマ部隊」などは、3月10日からこの場所で徹夜抗議を続けている。警察の非公式推計では、約300人の参加者が太極旗と星条旗を掲げ、「弾劾棄却」「尹錫悦万歳」といったスローガンを叫んだ。

尹大統領の支持者で構成された「大統領国民弁護人団」も、午前9時から憲法裁判所前で弾劾反対のリレー記者会見を開いた。弾劾反対汎国民連合と「自由統一党」も、それぞれ憲法裁判所近くやソウル龍山(ヨンサン)区・漢南洞(ハンナムドン)の尹大統領公邸周辺で弾劾反対の集会を開いた。

警察は、尹大統領の釈放以降、平日でも集会の参加者が増えている点に注目し、宣告日前後のタイミングに合わせた非常対応戦略を立てている。8年前、朴槿恵元大統領の罷免に反対する支持者が、弾劾審判の宣告当日に4人死亡した前例があることから、物理的衝突や人的被害を最小限に抑える対策に総力を挙げる方針だ。

まず警察は、尹大統領の宣告日には「甲号非常」、前日には「乙号非常」を発令し、非常態勢を維持する計画だ。最も高いレベルの非常勤務体制である「甲号非常」が発令されると、警察力の100%動員が可能となり、警察官の休暇も中止される。宣告当日は全国で機動隊337部隊、約2万人が投入される見込みだ。

憲法裁判所の周辺には機動隊を投入し、安全フェンスを設置したうえで車両バリケードを設置し、半径100メートル以内を事実上、「無人地帯」にする計画だ。憲法裁判所と憲法裁判官の安全確保のため、専属警護隊、刑事、警察特殊部隊も前線に配置される。

特殊部隊を憲法裁判所の内部などに追加配備する案も検討中とされている。

「西部地裁襲撃が学習効果に…過激行動の懸念」

尹大統領に対する弾劾審判の宣告は、拘束令状の発付時とは異なり、結果の公表に時間差を設けることができない状況であることを考慮し、裁判官の警護を強化し、積極的な警察権を発動すべきだという分析が出ている。

リュ・サムヨン元総警は3月17日、MBCラジオ『キム・ジョンベの視線集中』に出演し、「非常に懸念される状況だ」とし、「ソウル西部地裁のときも警察の車両バリケードと警察力が突破され、裁判所内部が完全に蹂躙されたため、憲法裁判官には同じことがあってはならない」と警戒を示した。

1月19日未明、ソウル西部地方裁判所で発生した「裁判所暴動」
(写真=共同取材)1月19日未明、ソウル西部地方裁判所で発生した「裁判所暴動」

宣告当日、憲法裁判所の周辺には約40万人の市民が集結すると予想されており、警察の人員2~3万人では物理的対応に限界がある可能性も指摘された。

リュ元総警は「(尹大統領弾劾に)反対する立場では、西部地裁襲撃の経験が学習効果となり、より過激な行動に発展する可能性がある」とし、「西部地裁でも拘束令状が発付されたと知ると、(令状を出した)裁判官を探し回ったではないか。もし(弾劾が)認められれば、多くの人々が憲法裁判所に乱入し、裁判官を捜し回る可能性がある」と警告した。

警察も様々なシナリオを考慮し、西部地裁での暴力騒動や朴槿恵元大統領の弾劾当時の状況を反面教師とし、警察力の投入と運用に積極的に反映する方針だ。

ソウル市も市民の安全のために、宣告当日は安国駅を閉鎖すると発表した。

8年前の悪夢が繰り返される懸念

憲政史上初の大統領罷免が決定された2017年3月10日、憲法裁判所の宣告直後、周辺は激昂した支持者たちが入り乱れ、最終的には多数の死傷者を出す惨劇へと発展した。

当時、支持者集会を主導した「朴槿恵を愛する会(パクサモ)」の会長らに対する判決文には、当日の状況が詳しく記されている。

宣告当日の午前、「大統領・朴槿恵を罷免する」という判決が下されると、主催者側は11時21分ごろ、「国民抵抗権を発動する」としながらも、「暴力は使わない」と激昂した雰囲気を鎮めようとした。しかし、その30分後、状況は一変し、ステージ上では「無条件で突撃せよ。憲法裁判所が死ぬか、我々が死ぬか、突撃だ」と叫び始めた。

朴槿恵元大統領
(写真=OSEN)朴槿恵元大統領

集会は正午を境に急激に暴力的な様相を呈し始めた。主催者側はデモ隊を阻止する警察に暴力を振るい、物理的衝突へと発展した。

憲法裁判所へ向かおうとしたデモ隊は、警察の車両バリケードに阻まれると、「トラックで押し潰せ。押せば警察は圧死する」などと叫び、ついにはある参加者が警察バスに乗り込み、バリケードに50回以上突撃するという危険な事態に至った。

デモ隊は衝突によって生じたバリケードの隙間をかいくぐり、警察の防衛線を突破しようとし、警察がそれを阻止するなかで激しいもみ合いが発生した。

混乱の極みに達した現場では、12時28分ごろ、警察放送車両の上に設置されていた鉄製スピーカーがデモ参加者の頭上に落下し、1人が死亡した。集会参加者が瞬く間に押し寄せるなか、多くの人々が地面に倒れ、さらに3人が命を落とした。

死傷者が続出する状況でも主催者側は参加者を煽り、「故人のために50人が前に出てバスをひっくり返さなければならない」と扇動を続けた。

最終的に、朴元大統領の弾劾宣告当日だけで4人が死亡し、現場で重傷を負った1人も1カ月後に死亡したことが確認された。警察官33人を含め、計63人が大小の負傷を負った。

暴力事件を主導した罪に問われた「パクサモ」のチョン・グァンヨン会長は、最高裁で懲役1年6カ月、執行猶予2年の判決を受けた。起訴された30人のうち8人が拘束、22人が不拘束操作を受けたが、バスでバリケードに突撃した者を除き、全員が執行猶予の判決を受けた。

宣告日が迫るなか、与野党は判決を「受け入れる」というメッセージを発しているが、尹大統領は直接的な立場を明らかにしていない。

尹錫悦大統領
(写真=写真共同取材団)尹錫悦大統領

裁判所の拘束取り消し決定と検察の即時抗告放棄により釈放された尹大統領は、憲法裁判所の決定を待ちながら、漢南洞の公邸にこもり、内乱関連の刑事裁判への対応に集中しているとされる。

尹大統領の法律代理人であるソク・ドンヒョン弁護士は2月19日、「憲法裁判所の結果に大統領は当然従う」と述べ、「受け入れない、または受け入れられないという状況は想定できない」と明言していた。

与野党の重鎮らは国会に対し、尹大統領の弾劾審判決定を受け入れる旨の決議文を採択するよう促す、声明文を発表した。

彼らは「尹大統領と与野党代表などの指導者は、憲法裁判所の弾劾審判決定が自身の意見と異なるからといって、これを否定したり、国民を誤導したりするようなことが決してあってはならない」とし、「大統領弾劾審判がどのような結果になろうとも、国民全体が受け入れ、国家的な混乱や対立、分裂がこれ以上生じないことを願う」と訴えた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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