このままでは尹大統領が罷免しても復帰しても韓国は内乱状態へ…“最終判決”を受け入れるべき理由

2025年03月16日 政治 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾をめぐる憲法裁判所の最終判決を前に、「韓国版キリングフィールド」「内戦」「国民抵抗権」など、危険な言葉が飛び交っている。

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このままでは、どのような判決が下されても、2021年に世界を驚かせたアメリカのトランプ支持者による連邦議会襲撃事件や、最近のソウル西部地裁での暴動事件を超える事態が発生する可能性が少なくない。

すでに剃髪、断食、テロの脅威など、心理的な内戦状態を超え、物理的な内乱状態へと進んでいる“憲法裁判所発の後遺症”を防いだり、最小化したりするためには、憲法裁判所の判決結果がどのようになろうとも、双方が受け入れる努力が必要だ。

しかし、そんなことが可能なのか疑問視されている。

どちらの結果になっても対立激化

最近の弾劾をめぐる動きを見ると、賛成派も反対派も「憲法裁判所の判決を受け入れない」と宣言しているかのように見える。

尹錫悦大統領
(写真=写真共同取材団)尹錫悦大統領

尹錫悦大統領は今年1月1日、自筆の獄中書簡で「皆さんと共にこの国のために最後まで戦う」と述べた。

彼の法律代理人であるソク・ドンヒョン弁護士は、海外メディアとの懇談会で「8年前の朴槿恵(パク・クネ)弾劾の時とは異なり、怒った保守層の国民が街に繰り出すだろう」とし、「ほぼ内戦状態になる」と警告した。

保守派の集会で頻繁に発言しているチョン・ハンギル講師は3月12日、「弾劾棄却を100%確信する」と述べ、「国民抵抗権は国民主権が重大な挑戦を受けた際の最後の手段として、実力で抵抗することだ」と主張した。

同日、ナ・ギョンウォン、チュ・ギョンホ、カン・スンギュ、キム・チャンギョムなど与党「国民の力」議員たちは、国会で「国民抵抗権緊急セミナー」を開催したが、そのタイトル自体が「判決不服」を示唆している。

依然として現職大統領として国民統合と国政安定を主導すべき尹大統領も、3月8日に釈放された際、両手を固く握りしめ、「野党との闘争」を促す姿を見せた。

保守陣営は、弾劾が認められることは到底受け入れられず、その理由と正当性は十分にあると主張している。例えば、高位公職者犯罪捜査処の捜査権問題、最大野党「共に民主党」李在明(イ・ジェミョン)代表の弾劾推進の常態化、ムン・ヒョンベ憲法裁判官など「ウリ法研究会」の左派ネットワークの影響などが挙げられている。

「共に民主党」も同様だ。

3月末の公職選挙法違反に関する控訴審判決を前に焦りを見せる李在明代表は、弾劾成立に向けた総動員を指示し、3月12日には景福宮近くのテント集会で「もし弾劾が棄却され、職務に復帰したらどうなるのか。何の理由もなく国民を啓蒙するために戒厳を宣言することを容認するのか。それが正当なのか」と声を荒げた。

「共に民主党」李在明代表
(写真=時事ジャーナル)「共に民主党」李在明代表

「共に民主党」の女性議員の剃髪、汝矣島(ヨウィド)から光化門(クァンファムン)へと続く所属議員や党職員500人以上の決意を示す徒歩行進、HID(北朝鮮工作員対策部隊)による李在明暗殺計画の通報を受けた身辺保護要請などから、「共に民主党」と李代表の決意が読み取れる。

彼らは、どのようなことがあっても弾劾棄却を受け入れられない正当な理由があると主張している。戒厳宣言の疑惑、軍の国会や選挙管理委員会への侵入、政治家の逮捕指示などがその根拠となっている。

特に、キム・ヨンヒョン前国防部長官をはじめとする主要な内乱関係者が全員収監されているなかで、内乱の主導者が釈放され、職務に復帰することなど想像すらできないという意見もある。

それにしても、憲法裁判所が罷免または棄却のいずれかの決定を下した場合、実際に準戦時状況や内戦状態が発生するのだろうか。

これと関連し、現職の国会議員が有力メディアに出演し、具体的な「戦争シナリオ」を提示したことも驚きを呼んだ。「弾劾が棄却されたら国が崩壊する。不正に抗議する数百万人の市民が街に繰り出し、警察力では抑えきれなくなる。結局、(尹大統領が)再び戒厳を宣言せざるを得なくなるだろう。今回は戒厳軍の中でも反乱軍が生じ、戒厳軍と反乱軍、そして市民の間で内戦が発生する。韓国はアメリカ、中国、北朝鮮の利害が衝突する場所であり、それらの国が介入する可能性もある。したがって、憲法裁判所の弾劾棄却は決してあってはならない」と発言した。

一時は噂に過ぎなかった第二、第三の戒厳や戒厳軍の衝突、市民蜂起、アメリカ・中国・北朝鮮の介入可能性が公の場で語られた。「国民の力」内で戒厳反対と弾劾賛成の立場を最も強く表明してきたキム・サンウク議員も、懸念を示している。

尹大統領の弾劾に反対する保守派の市民たち
(写真=時事ジャーナル)尹大統領の弾劾に反対する保守派の市民たち

海外からも懸念の声が高まっている。AP通信やフィナンシャル・タイムズなどの主要メディアが「憲法裁判所の判決後の状況」を詳しく取材しているほか、ムーディーズなどの国際信用格付け会社がフランスに続き、韓国の格付けを引き下げる可能性を示唆しており、チェ・サンモク大統領権限代行とイ・チャンヨン韓国銀行総裁は緊張を高めている。

経済の急成長を遂げ、BTSやBLACKPINKの国として世界的な人気を誇る韓国で、思想的な対立による混乱が発生すれば、これまで築き上げてきた産業化・民主化の成果だけでなく、Kカルチャーや国家の品格までもが一瞬で崩れ去る恐れがある。

判決後の被害を最小限に抑えるために

このような不幸な事態を防ぐためには、何よりも戒厳・弾劾の政治対立の中心にいる尹錫悦大統領と李在明代表が率先して模範を示すべきだ。

19世紀、奴隷解放をめぐる争いの中で4年間にわたり100万人の死者を出したアメリカの南北戦争の収束事例が思い浮かぶ。

リンカーン大統領が率いた北軍は激しい戦いの末に南軍を打ち破ったが、勝利を祝う一切の行事を禁止し、敗れたロバート・E・リー将軍を丁重に扱った。その結果、アメリカは戦争の後遺症を最小限に抑え、短期間で国論統合と連邦政府の安定を実現することができた。

北軍の総司令官であったユリシーズ・グラント将軍は、包容力と融和のリーダーシップを発揮した功績が評価され、第18代アメリカ大統領に当選した。

現在の韓国の状況では、政治家の行動よりも国民の役割がより重要になっている。

尹大統領の弾劾に賛成する市民たち
(写真=時事ジャーナル)尹大統領の弾劾に賛成する市民たち

憲法裁判所の判決が自分の思い通りにならなくても、冷静に自制心を持ち、判決を受け入れることで、国内の分裂による傷を癒やしていくべきではないだろうか。解放から80年以上にわたって苦労して築き上げてきた先進国・韓国を維持し、さらに発展させていかなければならない。

できれば、与野党の政治指導者たちが率先して判決を受け入れる雰囲気を作り出していくことが望ましい。

戦略的にも、憲法裁判所の判決をまず明確に受け入れることを公に宣言する側が、国民の支持を得やすく、また中道層の拡大にも有利に働くだろう。

もし憲法裁判所の最終判決が出たにもかかわらず、必死に抵抗し続ける政党や政治家がいれば、多くの国民や中道層から見放され、次の選挙で不利な立場に追い込まれることを肝に銘じるべきだ。韓国最高の憲法機関である憲法裁判所の最終決定を受け入れないことこそ、国家体制の否定であり、国民の意思を無視する行為にほかならない。

最後に、融和と統合の象徴とされるリンカーン大統領の言葉を紹介する。

「私は常に厳格な正義よりも慈悲のほうが大きな実を結ぶと信じている」「武力はすべてを征服するが、その勝利は長続きしない」「誰も他人を支配するほど立派ではない。敵を打ち負かす最良の方法は、その敵を友に変えることだ」

この戒厳・弾劾の政治対立の中で「真の勝利」を望むのであれば、今の韓国の現実に当てはまるリンカーンの助言を静かに噛みしめるべきではないか。

(記事提供=時事ジャーナル)

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