韓国外食業界の“目玉”とされるチキンフランチャイズ各社が、次々とM&A(企業の合併・買収)市場に売却案件として登場している。
最近では、KFC(ケンタッキーフライドチキン)コリアが韓国のプライベート・エクイティ(PE)運用会社「オーケストラ・プライベート・エクイティ(オーケストラPE)」に買収されてからわずか2年で再び売却先を探している。
現在、外食業界のM&A市場には、ピザナラチキンコンジュ、ノラントンタクなど、数百の加盟店を保有するチキンブランドが新たなオーナーを待っている状態だ。
4月2日、韓国の投資業界(IB)によると、オーケストラPEは最近、KFCコリアの売却主幹社としてサミル会計法人を選定した。
オーケストラPEは2023年4月、約1000億ウォン(日本円=約102億円)でKGグループからKFCコリアを買収したが、わずか2年で“売却カード”を切ることになった。同社はKFCコリアの売却希望価格を、買収価格の4倍以上となる4000億ウォン(約408億円)台を提示予定とされている。
KFCコリアはオーケストラPEに買収された後、収益性の改善に注力してきた。売上が低い店舗は閉店し、立地を再調整するなどの店舗運営効率化がその代表例だ。買収当時にKFCグローバル本社のオーナーであるヤム・ブランズを出資者として迎え入れ、韓国国内での自主運営権の相当部分を大幅に確保できたために可能だった。
以前、KGグループがグローバルPE運用会社CVCキャピタルからKFCコリアを買収した際は本社との摩擦が大きく、事業運営に困難を抱えていたが、それとは対照的な状況となっている。
自主性を確保したオーケストラPEは、昨年からフランチャイズ事業も展開。KFCの韓国進出45年目で新たな試みを始め、昨年4月のフランチャイズ店第1号「文井(ムンジョン)駅店」を皮切りに、1年間で15のフランチャイズ店を新規出店した。
こうした多様な試みは、業績改善として表れている。KFCコリアは昨年、売上2920億ウォン(約298億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却償却前利益)460億ウォン(約46億9813万円)を達成したと推定される。前年比の売上は18%、EBITDAは47%増加した数値だ。
オーケストラPEはこれらの業績を根拠に、売却価格を4000億ウォンと設定したとみられる。
IB業界では企業価値を算定する際、EV/EBITDA倍率を適用す。
2019年、マムスタッチを運営するヘマロフードサービスのEV/EBITDA倍率は10倍、2022年のバーガーキング売却時には約12倍だった。これを考慮し、EV/EBITDA倍率を10倍程度とし、4000億ウォン程度で交渉に入るとの見方が出ている。
もっとも、買収から2年も経たない時点で再び売却に出されたことは、業界でも「やや意外だ」との声が出ている。
これはKFCに限った話ではない。現在の韓国M&A市場ではチキンフランチャイズの売却案件が続々と出てきている。
2~3年前から売却先を探しているピザナラチキンコンジュの運営会社リッチビームは昨年、PEファンドのSGプライベート・エクイティと売却交渉を進めた。
当時は株式100%を2200億ウォン(約224億円)で譲渡する構造だったが、高額な価格がネックとなり、最終的に取引は不成立に終わった。
リッチビームは特定のアドバイザリー会社を立てずに経営権売却を進めており、複数の会計法人などに対し「筆頭株主の持分を買い取る買い手を連れてくれば、主幹社の地位を与える」と提案していたという。
ノラントンタクも新たな買い手を探している。
ノラントンタクの運営会社ノランフードを保有するPEファンドのコストンアジアとQキャピタルパートナーズは、売却アドバイザーとしてサムジョンKPMGを選定し、株式100%を市場に売り出した。両社は2020年、ノランフードを約700億ウォン(約71億円)で買収している。
有名チキンフランチャイズが続々とM&A市場に登場していることについて、業界ではさまざまな解釈が出ている。
一般的に、PEファンドはポートフォリオ企業を4~5年ほど保有した後、エグジット(投資回収)を行うのが通例だ。業界では、各フランチャイズを保有するPEファンドが、好実績を記録している間に売却した方が良いと判断したのではないかとの見方が出ている。
まず、業界の景気悪化が最大の理由に挙げられる。物価高と景気低迷で外食業界が厳しいなか、投資金回収のために急いで売却案件に出しているという意味だ。
また、フランチャイズ本社と加盟店オーナーとの間で対立が深まっている点も、経営権を持つ企業にとっては負担として作用している。
一方で、これらのチキンブランドは数百店舗の加盟店を保有しているため、現金回収が容易であるという点では競争力がある。短期間で企業価値を高めて利益を出し、売却するというPEファンドのビジネスモデルにとっては“うってつけ”といえる。
IB業界では、現在売りに出されているチキンフランチャイズを食品企業が買収に動く可能性も指摘されている。ポートフォリオの多角化を図るなかで、知名度のあるブランドを傘下に収める狙いがあるとされる。
(記事提供=時事ジャーナル)
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