「出勤ラッシュ時の地下鉄乗車デモ」で注目を集めた韓国の全国障がい者差別撤廃連帯(以下、全障連)が、障がい認定制度の実質的廃止などを要求するため、乗車デモを継続する意向を明らかにした。
7月7日午後3時ごろ訪れたソウル鍾路区(チョンノグ)の国政企画委員会(以下、国政委)の前には、全障連の会員たちが「障がい者も市民に移動する民主主義」などの文句が書かれたチョッキを服の上に着てデモを続けていた。
この日はソウルに今夏初の猛暑警報が出されたが、彼らは屋外でマイクを握り、声を上げ続けていた。
全障連の会員たちは障がい認定制度の実質的廃止などを要求するとし、プラカードを掲げた。 現場で取材に応じた社会運動団体「障がいと人権足裏行動」のキム・ジョンハ活動家は「障がい認定制度廃止などが新政府の国政課題に入らなければならない。このために国政委前でデモを進めている」と説明した。
同氏は「国政委前でのデモだけでなく、地下鉄乗車デモも週に1回実施する計画だ」とし、「乗車デモは、ソウル特別市のオ・セフン市長が重症障がい者の公共雇用先を大量になくしたことに対する抗議で始まったことだ。オ・セフン市長に対するデモからスタートしたので、市庁駅などで(デモを)進める予定」と伝えた。
出勤途中の市民から不便を訴えることに対する意見があるのかという問いには、「申し訳ない気持ちを持っている」とコメント。そのうえで、「我々が要求している内容は障がい者だけが該当する問題ではなく、弱者になる可能性がある全員の問題だ」として「市民には申し訳ないが、今が平等社会に進む熟考の時期だと考えて暖かく見て下さるとありがたい」と話した。
キム・ジョンハ氏はデモを通じて、障がい認定制度の実質的廃止を新政府に要求していると説明。「障がい者の生活を助ける制度である“活動支援サービス”が15区間に分かれている。区間別に受けられる支援サービスが異なり、事実上、障がい認定制度がまだあると見なければならない」と述べた。障害の程度により1~6級で分類された障がい認定制度は、障がい者の個別の需要をきちんと反映できないという批判により、2019年7月1日から段階的に廃止された経緯がある。
続けて、キム活動家は「“活動支援サービス”の区間を一律的に分けておいたことも問題だ。海外では障害を持った一人一人に相談などを経て必要なサービスを支援してくれる。我々もそうすべきだ」と主張した。
一方、全障連の地下鉄乗車デモを批判する市民もいた。
全障連は2021年から現在まで、ソウル地下鉄4号線の恵化(ヘファ)駅などを中心に、午前8時頃から地下鉄の運行を阻むデモを続けている。今月2日にはソウル地下鉄3号線の景福宮(キョンボックン)駅で、障がい認定制度廃止などを求めて地面に横たわる「ダイ・イン(die-in)」デモを実施した。
この日、国政委前の全障連によるデモ現場を通っていたパクさん(42)は、「それでも、この時間には地下鉄で(デモを)しないようで良かった。出勤途中の地下鉄だけでしないでほしい」と話した。
出勤時に恵化駅を常に通るという会社員キムさん(30)もやはり、「なぜ罪のない市民の出勤を人質にしてデモをしなければならないのか。障がい者の人権向上は当然実現されるべきだが、このようなデモは支持されにくいと考える」と意見を述べた。
これに対し、全障連は一部政治家による“つるし上げ”が市民の不満を大きくしたと主張。キム・ジョンハ氏は「改革新党のイ・ジュンソク議員などが、すべての障がい者関連問題があたかも全障連のせいであるかのようにつるし上げる“嫌悪政治”をした」とし、「それでも全障連を支持して下さる市民がいる。そんな市民たちは“私は会社に30分遅刻してしまうが、障がい者は30分移動することさえ難しい”と考えている」と訴えた。
全障連は今後も、地下鉄乗車などをはじめとするデモを当分継続するものと見られる。キム・ジョンハ氏は「非障がい者には法的・社会的に保障されることが、障がい者には保障されない状況だ」とし、「この状況がいつ終了するかわからないので、全障連のデモもいつ終わるかわからない」と付け加えた。
(記事提供=時事ジャーナル)
■毎年500人ずつ減少、生存者は640人に…日本へ強制動員された元徴用工、韓国で急減中
前へ
次へ