尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判事件で主審を務めることになったチョン・ヒョンシク裁判官は、現在の憲法裁判所裁判官6人の中で、尹大統領が指名した唯一の人物だ。
判事出身であり、2023年12月に就任した。保守的な傾向が強い裁判官として知られ、最近では真実和解委員長に任命されたパク・ソンヨン元自由先進党議員の義兄でもある。
法曹界によれば、憲法裁判所はこの事件の主審をコンピューター抽選方式で選定し、チョン裁判官が選ばれた。
裁判官6人のうち、ムン・ヒョンベ憲裁所長代行と現在別の弾劾審判事件を担当している裁判官1人を除く4人を対象に抽選が行われた。
憲法裁判所が12月16日午後まで主審を公開しなかったため、誤解が生じる事態もあった。
尹大統領が指名したチョン裁判官が主審を務めることになれば、「尹大統領に有利になるのではないか」という懸念が原因だ。翌17日の憲法裁判所のブリーフィングでは「なぜ主審を公開しないのか」「過去の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領や朴槿恵(パク・クネ)元大統領の際には主審を公開していたのではないか」といった記者からの質問が相次いだ。
主審は、弾劾審判の決定文に該当する判決文の草案を作成し、公開弁論で証人に直接質問をするなど、弾劾審判の流れをリードする役割を担う。
ムン代行は「弁論期日は裁判長が主催し、全裁判官が参加するため、主審が裁判のスピードや方向性に影響を与えることはない」と説明した。また、尹大統領の事件でのチョン裁判官の役割は、実質的には文書送付や事実調査申請などの事務的な業務を担当する「事務責任者」に近いとした。
過去の大統領に対する弾劾審判を担当した主審裁判官は、どのような役割を果たしたのだろうか。
盧武鉉元大統領は、憲政史上初めて弾劾訴追案が可決され、弾劾審判を受けた。その際の主審はチュ・ソンフェ裁判官であった。当時の判決では、裁判官7人以上が出席したものの、6人以上の賛成が得られなかったため、「棄却」との決定が下された。
盧元大統領の行為は憲法および法律(公職選挙法)に違反していたが、罷免に値するほど重大ではないと判断された。
2004年当時、裁判部は少数意見を公開するか否かについて、判決前日まで議論を行った結果、非公開とすることを決定した。チュ裁判官は判決後に「賛否の人数を教えてほしい」との質問に対し、「死ぬまで公開しないと裁判官同士で約束した」と述べ、「それを明らかにすれば法律違反として弾劾される可能性がある」と答えた。
一方、朴槿恵元大統領は、憲政史上初めて弾劾訴追案が認められ、罷免された。その際の主審はカン・イルウォン裁判官だった。
カン裁判官は与野党合意で任命されたため、政治的中立性が高いとの評価を受けていた。また、丁寧ながら鋭い質問と意見提示を通じて事件の実態を明らかにし、国民の注目を集めた。
当時の判決は8人が出席し、全員一致で弾劾を認める意見を出し、「罷免」との決定が下された。朴元大統領の違憲・違法行為が国民の信任を裏切るものであり、憲法擁護の観点から許容できない重大な法違反行為であるとの理由であった。
この事件の審理と決定文作成は、カン裁判官が主導的に進めた。国民に向けた報告書であるため、誰でも簡単に理解できるようにするべきだというカン裁判官の意向が強く反映されたとされる。
憲法裁判所は、ムン代行が主催した裁判官会議を通じて、弁論準備手続きの付与や捜査記録送付の要請などを決定した。このような裁判官会議は今後、週2回開催する案が検討されている。
最終的に事件の結論を出すための討議では、裁判官全員が上下の区別なく各自の意見を提示し、場合によっては反対意見や補足意見を決定文に記載する。
今回の主審指定は原則に基づく無作為抽選の結果であるが、もし憲法裁判所が弾劾訴追を棄却した場合、公正性や結論の妥当性にかかわらず、進歩陣営から批判の対象となる可能性があると懸念されている。
一方で、弾劾訴追を認めた場合には、尹大統領が直接指名したうえ、保守的とされるチョン裁判官が主審を務めた結果としての結論であるため、保守陣営も受け入れる可能性が高く、事後の論争を和らげる効果が期待される。
刑事事件を専門とする弁護士は、「盧元大統領や朴元大統領の場合、刑事事件としての争点はなかった。しかし尹大統領は現在、内乱罪の捜査対象となっている状況だ」と述べ、「憲法裁判所が弾劾審判に集中するとはいえ、内乱罪関連者の証言が具体的に報道されている現状を完全に無視することは難しいだろう」と指摘している。
(記事提供=時事ジャーナル)
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