アメリカが韓国を「センシティブ国家」リストに加える動き。中国やイラン、北朝鮮などと同列に…一体なぜ?

2025年03月15日 国際 #時事ジャーナル
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トランプ政権が核不拡散の原則を明確に打ち出している。

【注目】トランプのメッセージを“誤読”ばかりする韓国

「北朝鮮の完全な非核化」は、第1期政権時の2019年2月、米朝首脳のハノイ会談において「誠実な非核化措置なしに制裁緩和は不可」と明確にされた。そして第2期政権では、米日首脳会談や韓米日の外相会談において再確認された。

アメリカの戦略資産を展開する拡張抑止の誇示や、韓米の軍事的相互運用性を強化する訓練は継続されている。また、アメリカは中国とロシアに核軍縮を提案した。

米エネルギー省が韓国を「敏感国家(Sensitive Countries)」リストに加えようとしている動きが、3月11日に確認された。

「敏感国家」とは、アメリカの国家安全保障、核不拡散、地域の不安定化、経済安全保障への脅威、テロ支援を理由に検討・承認されるものだ。現在、中国、ロシアをはじめ、イラン、北朝鮮、インド、パキスタン、台湾、イスラエルなど25カ国が指定されており、アメリカの原子力関連人員や施設へのアクセス、先端技術の研究協力に制約が生じる。

この作業は、外国の核兵器・核燃料サイクルプログラム、核物質の安全管理など核関連活動を監視し、重要インフラの保護を担うエネルギー省情報防諜局が、核兵器開発・解体の総括機関である国家核安全保障庁(NNSA)とともに強固に支えている。

情報防諜局は情報共同体に属し、国家情報長官の指揮を受け、17の情報機関と密接に連携している。一度決定されれば覆すことは容易ではない。

トランプ大統領
(写真=トランプ大統領Instagram)

教訓を忘れたのか…制裁の危機に直面した盧武鉉政権

アメリカがなぜ今このような動きを見せるのか、ある程度推測できる。

盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の2004年にも同様の問題が発生した。韓国原子力研究院が2000年に核物質である高濃縮ウランの抽出に成功していた事実が、国際原子力機関(IAEA)の査察で明らかになったのだ。

アメリカ、イギリス、フランスなどの国連常任理事国は、これを国連安全保障理事会に付託しようとし、韓国は制裁の危機に直面した。政府は外交力を総動員し、予想外にも日本とドイツの支援を受け、不良国家の汚名を免れた(チョン・ヨンウ、2022年、『大統領の外交安保アジェンダ』)。

その後、2007年9月にアメリカの国家核安全保障庁が約4ポンドの高濃縮ウランをすべて回収したと発表し、一件落着となった。

核を保有しない国の核関連活動は、米中央情報局(CIA)などによって厳しく監視・牽制・阻止される対象であることを改めて認識させられる。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権では、大統領を筆頭に外交・安全保障ラインが「核武装も一つの選択肢」と示唆し、与党の有力政治家たちは公然と主張している。一部のシンクタンクや学者、右派系メディアが派閥的な論調を形成し、それを拡大・再生産した結果が今に至るのだ。

核兵器は1945年以来、一度も使用されていない。そのため、核戦略や主張は仮説や条件付きシナリオ、推測に基づかざるを得ず、強固な信念体系と確証バイアスが作用する。いかなる理屈をつけようとも、すぐに受け入れられるものではないが、政策が正しく機能するためには健全な議論が必要だ。

第一に、北朝鮮の核開発が70年続くなか、韓米同盟と国際社会の30年間の対応は、拡張抑止と対北朝鮮制裁に収束してきた。これは、韓米の歴代政府が厳しい現実認識と経験を基に一貫して積み重ねてきた知恵だ。

1978年、韓米安保協議会(SCM)は、核の傘の提供を拘束力のある外交文書に明記した。北朝鮮の最初の核実験直後の2006年12月には、拡張抑止の概念が明文化され、2009年には核の傘に加え、通常兵器の打撃力やミサイル防衛を含むすべての軍事能力を網羅する形へと拡張された。その結果、韓国が攻撃を受けた場合、アメリカは本土が攻撃された場合と同等の軍事対応を取ることになった。

2023年4月には、韓米両国が首脳レベルで拡張抑止を合意し、核協議グループ(NCG)を稼働させ、アメリカの核戦力と韓国の最先端通常兵器を統合した拡張抑止の強化を進めている。

金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領
(写真=シンガポール政府)金正恩国務委員長(左)とトランプ大統領

一方、金正恩(キム・ジョンウン)政権は6回の核実験を実施し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、戦略巡航ミサイル、戦術核の開発を進め、「核国家」としての地位を既成事実化し、交渉の意思はないと公言している。しかし、吸収統一への恐怖や包囲されているという意識の中で、体制内部の脆弱性は蓄積されている。

戦術核の配備には追加の核実験が不可欠であり、ICBMもまだ不完全だ。いわば、内面が病んだボディビルダーのような状態といえる。これは、拡張抑止と制裁の効果を示す証拠だ。

「核潜在力」という用語自体を禁忌とする日本

第二に、現在の国際秩序は、中国の台頭とロシアの修正主義的な行動により、アメリカが圧倒的な優位を確保することが難しくなっている。米中が戦略的競争を繰り広げ、それぞれが制限的な秩序(bounded order)を構築するなか、韓国はその狭間に位置している。

そして、その最前線に韓国の安全保障と国益がかかっている。このような状況で、米中が韓国の独自の秩序形成を容認するだろうか。アメリカが核不拡散条約(NPT)の破壊を黙認するだろうか。

国際自由主義秩序の模範国家であり、IT強国かつ貿易国家である韓国が核武装を目指すというのは、北朝鮮の核保有を認めることと変わらず、「金正恩の道」を歩むようなものだ。AI時代に最先端の科学技術を誇る韓国にとって、核武装は時代遅れであり、韓国版「苦難の行軍」ともいえる国際社会からの孤立を自ら招く結果となる。

これは、20・30世代と60・70世代のナショナリズムに迎合する無責任で極めて危険な短絡的思考である。

オ・セフンソウル市長
(写真=オ・セフン市長Instagram)「韓国は日本と同レベルの核潜在力を持つべき」と語ったオ・セフンソウル市長

第三に、核武装へ向かう中間段階として「核潜在力(nuclear latency)」を持つべきだという主張は、原子力の平和利用という本来の目的を歪めるものだ。国際社会はこれを核拡散と見なす。

韓国は、ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理といった核燃料サイクルのプログラムにおいて、日本ほどの待遇を受けていないと不満を抱いているが、その行動は日本のようではない。

日本は「核潜在力」という用語自体を禁忌としている。日本は核不拡散体制を完全に遵守しながら、国際社会とアメリカの信頼を積み重ねている。

筆者は、韓米原子力協定の再交渉(2015年)を控えた2010年、米エネルギー省の「アメリカ核未来ブルーリボン委員会」の委員であるパー・ピーターソン教授に助言を求めたことを覚えている。彼はこう語った。

「信頼が最も重要だ。アメリカとR&D(研究開発)を進め、継続的に意思疎通しながら信頼を築いていけば、将来的に望む核燃料サイクルのプログラムを得ることができる」

拡張抑止の説明には、冷戦期にイギリス国防相を務めたデニス・ヒーリーの発言が引用される。「アメリカの報復能力への信頼のうち、5%はソ連の抑止に使われ、95%はヨーロッパ人を安心させるために使われる」。韓国内での抑止に対する懸念は、連携され、調整された抑止態勢を構築することで解消できる。そして、抑止とは、単なる威圧ではなく、節度と交渉の促進を含む概念だ。

アメリカは巨大な官僚国家だ。大統領や閣僚が政策決定者であることは確かだが、アメリカ国内の主流(mainstream)の流れを直視することが賢明といえる。

アメリカの同意と支持、そして国内の結束を維持しながら、抑止と外交的解決策を並行して運用し、金正恩委員長の態度変化を粘り強く促していけば、北朝鮮の核問題は制御可能だ。核保有の強みと、それに伴う戦略的不安定性、そして莫大な機会費用を総合的に考慮するべきだ。

●チョン・ギョンファン成均館大学兼任教授(国家情報安保政策研究センター長)

(記事提供=時事ジャーナル)

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