韓国最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補が、フェイクニュース対応機関「民主派出所」に続いて、先制的に虚偽情報を発掘する「民主消防署」を立ち上げた。
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大統領選の局面において情報量が増えているなかで、「フェイクニュース」や「偏向報道」への対応レベルを引き上げる意図によるものだ。
ただし政界では、「共に民主党」が「偏向的である」と独自に判断したメディアを捜査機関などに直接通報する行為は不適切だとの指摘も出ている。
先立って「共に民主党」は、2024年12月の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による非常戒厳令宣言以降、「民主派出所」を発足させ、市民の通報をもとにフェイクニュースへの対応を行ってきた。最近では選挙対策委員会レベルで「民主消防署(仮称)」の立ち上げ準備も進められており、対応レベルをさらに引き上げた。
該当組織は、様々な虚偽情報を先制的に発掘する役割を担う予定だ。
「共に民主党」は、「派出所」に寄せられた案件についてブリーフィングも行っている。
党の選対は5月12日、ソウル汝矣島の国会記者会見場で「ファクトチェックネット・民主派出所デイリーブリーフィング」を通じて、虚偽・歪曲報道および悪意的なYouTubeコンテンツに対する党レベルでの異議申し立ての現状を公開した。
特に、李在明候補の公約のみを否定的に取り上げたメディアや、保守系候補の支持率を単純合算して比較報道した一部メディアに対して、インターネット選挙報道審議委員会を通じて異議申請を行ったと明かした。
「偏向的な報道」と判断される場合には、選挙放送審議委員会への審議申請も進めた。特定候補に対する人格攻撃や過激な主張を拡散したYouTubeチャンネルに対しては、グーグルに対してポリシー違反および名誉毀損として通報し、公職選挙法違反の疑いで法的対応も検討しているとした。
キム・ヒョン「共に民主党」選対フェイクニュース対応団長は、「(共に民主党は)虚偽・捏造のフェイクニュースに対して問題提起しているのであり、批判報道に対して問題を提起しているのではない」とし、この組織の趣旨を強調した。メディア弾圧との懸念に対しては、「それは国民の力がそう主張しているが、国民の力もフェイクニュースの監視をしている。我々が行うと“メディア批判”なのか」と反論した。
実際、「国民の力」も対抗措置を取っている。
「国民の力」は前日、「民主派出所」に関するブリーフィング終了直後、同じ場所で「国民サイレンセンター」の組織拡大・改編案を発表した。4月21日に発足した「国民サイレンセンター」は、「共に民主党」による不当な告訴・告発や言論仲裁委員会への提訴などで被害を受けた言論人および市民に対して法的支援を行う専用窓口だ。
「国民の力」国民サイレンセンター長のイ・サンフィ氏は、「(共に民主党は)自分たちに少しでも不都合な者をあぶり出し、排除するためにあらゆる違法かつ反民主的な手段を総動員して弾圧している」と述べ、「国民の言論と自由を守るために、国民サイレンセンターの機能を大幅に拡大・強化することを決意した」と説明した。
同センター長は、先に「共に民主党」が「国民の力」に対して「ダブルスタンダード的発想」だと指摘した件について、「190議席を持つ巨大な立法権力が語ることは、非常に威圧的にならざるを得ない」と反論。そして「(共に民主党が)選挙に有利に働くよう事前に遮断しようという意図もあるだろうが、今の李在明陣営が見せる抑圧的な姿勢をけん制しなければ、その脅威はさらに拡大しかねない」と批判した。
大統領選の局面において、「フェイクニュース」対応をめぐる論争はさらに広がりを見せている。実際に訴訟が発生すると、政界でもこれをめぐる攻防が展開されるようになった。
特に李在明候補側がフェイクニュースへの対応を行うと、「国民の力」がこれに異議申し立てを行うという構図が続いている。
代表的な例が、李在明候補の父親に関する疑惑を提起して告訴されたジャーナリスト、ソ・ミョンス氏に対して、「国民の力」が法的支援に乗り出した件だ。
「国民の力」は4月28日、ソ・ミョンス氏を「李在明の“言論封じ”第1号被告発人」と名付け、党メディア法務団長のチェ・ジウ弁護士が法的代理人を務め、今後のすべての民事・刑事訴訟を全面的に支援すると発表した。
チェ・ジウ弁護士はこれに関して「ソ・ミョンス氏は安東(アンドン)在住者の証言、被害者家族の証言などを通じて事実関係を確認した」とし、「(疑惑の提起は)客観的事実に合致するか、少なくとも合理的根拠および論理原則に基づいた合理的な疑惑の提起だ」と主張した。
両大政党が党レベルでの対応力を拡大するなかで、「フェイクニュース」と「偏向報道」を明確に区別するべきだとの指摘も出ている。
聖公会大学・新聞放送学科のチェ・ジンボン教授は、「明確な客観的事実が存在しているにもかかわらず、それを歪曲して報道すれば、それは虚偽・捏造情報(フェイクニュース)だ」とし、「批判の領域までもフェイクニュースとみなすべきではない」と指摘した。
チェ・ジンボン教授は、「共に民主党」が前日のブリーフィングで提示した事例について、「フェイクニュースというより、公正報道ではないと判断すべき部分」だとしながらも、「フェイクニュースでなくても、公正さが保たれていないのであれば、言論仲裁委員会や放送通信審議委員会に問題を提起することはできる」と説明した。
「偏向報道」への「共に民主党」の対応については、専門家の意見が分かれている。
政治評論家のパク・サンビョン氏は、「偏向報道に対して問題を提起しなければ、さらに悪化しかねない。メディアが公正報道に対して責任を持つことで、メディアと選挙環境が発展する」と述べ、けん制の重要性を強調した。
一方、青年政治クルー代表のイ・ドンス氏は、「単に偏って書かれたという理由でメディアに口枷をはめるように見えると、中道層からは『民主党が暴走しているのでは?』という疑問が生まれかねない」とし、「偏向かどうかの判断は最終的に有権者の判断に委ねられるべきであり、共に民主党がいちいち判断する姿を見せると、かえって逆効果になる」と慎重論を展開した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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