「スシ」「サケ」と同じように、世界中で日本語読みのまま認知されている「折り紙」。日本の伝統文化として知られているが、そこに一石を投じようという動きがある。
韓国の“ジョンイジョプキ”(韓国の折り紙)だ。
韓国メディア『聨合ニュース』は1月16日、「韓国のジョンイジョプキ、折り紙と“全面対決”」という記事を報じている。
それによると「日本の“折り紙”は、一枚の紙を折ってさまざまな形を作る遊びとして、すでに全世界に知られている。しかし私たちの民族も、固有のジョンイジョプキ文化を発展させてきた。1000年を超える伝統のジョンイジョプキは、その形態や完成度においても日本の折り紙に引けを取らない」という。
韓国のジョンイジョプキを世界に広めようとしているのは、財団法人「紙文化財団」だ。
韓国では1980年代後半から「紙文化の再創造運動」が始まり、1989年3月に韓国ジョンイジョプキ協会が結成したという。2005年には紙文化財団が発足し、2010年から「ジョンイジョプキ世界化」を宣言している。
その後、2012年には世界ジョンイジョプキ連合も発足。キャッチフレーズは「ジョンイジョプキで世界化を、ジョンイジョプキで平和を」なのだとか。紙文化財団と世界ジョンイジョプキ連合は現在、アメリカ、中国、モンゴル、フィリピン、ロシアなど22カ国、45都市に支部を設置して、ジョンイジョプキに関する講演を行っているそうだ。
紙文化財団のノ・ヨンヘ理事長は、「私たちの紙文化の優秀性を世界に知らしめるために、海外に出て、ジョンイジョプキ世界化運動を繰り広げている」と語っている。
日本の折り紙と韓国のジョンイジョプキで“全面対決”しようということだろう。
実際に、『聨合ニュース』が昨年11月7日に報じた「韓国のジョンイジョプキは折り紙に勝てるだろうか」という記事では、「紙文化財団のノ・ヨンヘ理事長がモデルとしているのは、日本の伝統武術・空手を抑えて、世界的なスポーツとして発展したテコンドーだ」と解説されていた。
テコンドーが「チャリョッ」(気をつけ)、「アプチャギ」(前蹴り)といった韓国語の単語を全世界で通用させたように、世界ジョンイジョプキ連合の各国の講師たちは「サムガクチョプキ」(三角折り)、「ハクチョプキ」(鶴折り)などと韓国単語を使って指導しているらしい。
日本の折り紙ではなく、韓国のジョンイジョプキを世界に根付かせようとしているわけだ。
記事では「折鶴に代表されるジョンイジョプキは韓国から日本に渡ったと推定される」となっているが、同時に「ジョンイジョプキがいつ、どこから始まったのかはわからない」とも。ジョンイジョプキの起源には諸説あり、韓国でもはっきりとしていなかった。
しかし、そんなあやふやな歴史的背景を補強するためか、2017年11月11日には「第1回大韓民国ジョンイジョプキ歴史フォーラム」が国会議員開館で開かれている。
その場でジョンイジョプキの起源に関する研究結果が発表されたのだが、朝鮮民族のジョンイジョプキの源流は「三角帽子」で、その歴史は日本よりも早かったそうだ。
研究結果を発表した淑明女子大学のチェ・グムソク教授は、「朝鮮半島の紙の起源は紀元前1世紀よりも前と推測される」とし、以下のように続けた。
「高句麗の陽王21年(西暦610年)、使臣である僧侶・曇徴(タムジン)を通じて、製紙技術と紙文化が日本に伝えられたため、紙を日本に伝えたのは古代韓国である。したがって朝鮮民族のジョンイジョプキの歴史は当然、日本よりもリードしている」
また、韓中日比較文化研究所のイ・オリョン理事長は、「中国で作られた囲碁が日本を通じて西洋に伝えられたように、ジョンイジョプキもまた日本の折り紙を通じてヨーロッパに広がった」と話した。
つまり折り紙の起源は韓国で、広めたのは日本という分析だ。
なんとも結論ありきの研究結果に思えてしまうが、関連報道に触れた韓国のネット上でも次のようなコメントが見られた。
「日本は自ら作ったものは少ないけど、他国のものを使って改善するのがうまいね」
「当然、日本より早いだろ。地理的に日本は島国なんだから。なんで日本より早いことを誇っているのか」
「昔よく折った鶴や動物の折り紙は、全部日本から伝わったものというのが現実」
「いくらなんでもやりすぎだ。紙を折ることだけでいえば中国のほうが先。それを芸術に昇華したのが日本だろ」
「本当にひどい。こんな人たちが海外で“Do you know サイ?”とか言うんだろ」
「なぜないものを無理やり作り出そうとするのか」
やはり韓国ネット民たちも、少なからず違和感を持っているようだ。
いずれにしても、韓国が世界にジョンイジョプキという文化を広げようとしているのは間違いない。はたしてその思惑通りにいくのか、動向を注視したい。
(文=呉 承鎬)
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