2月10日、韓国・ソウルで『君の名は。』の興行を記念し、新海誠監督の再訪韓記者会見が行われた。
「1ヵ月間で350万人もの観客が映画を見てくださったことを幸せに思います」と感想を述べた新海監督は、「50回見たという韓国のファンがいた。情報量が多い映画ではあるが、4回見れば十分だと思う」「2月のソウルがこんなに寒いとは思わなかった。今度はもっと暖かいときに来たい(笑)」「次回作はまだプロットの段階」など、いろいろなコメントを残した。
ところが、とある韓国人記者が思いもよらぬ質問を投げる。それは『軍艦島』という韓国映画についてだった。
今年7月に公開予定の『軍艦島』は、端島(軍艦島)に強制徴用された朝鮮人たちが脱出を試みる姿を描く作品なのだが、『産経新聞』は2月8日、『軍艦島』の予告編を紹介しながら「『明治日本の産業革命遺産』が2015年7月にユネスコ世界文化遺産として登録が決まったことに対し、韓国は官民を挙げて阻止に働いた。映画はその運動の一環」という記事を掲載。
これに対し、韓国メディアも「日本メディア、公開もしていない映画を批判」(『京郷新聞』)、「監督のリュ・スンワン、“『軍艦島』は事実をもとに製作…産経の報道は残念”」(『OSEN』)と反論しているところだったのだ。
そんな『軍艦島』について新海監督にコメントを求めるのはお門違いだが、新海監督は今の『軍艦島』事態についてこう答えた。
「『軍艦島』のことはよくわからないが、日本人であれ韓国人であれ、観客とコミュニケーションを取ることが監督としての僕の仕事だ。歴史や政治的な問題はどの国にも存在する。ただ、それらを超えたところに個人と個人の関係があると思う。
僕には韓国の友人もたくさんいるけど、政治的な話題になると会話にならないときもある。だからといって彼らと会わなかったりはしない。僕にとっては相変わらず良い友人だ」
「映画を通じて、人間と人間の感情交流を成し遂げ、コミュニケーションをしなければならない。“日本という国は納得できないが文化は好きだ”、“韓国という国が納得できないけど映画は好きだ”という、人間的なアプローチから始めるべきではないか」
新海監督のコメントは、「さすが」と言わざるを得ない。
SNSでも「新海監督に出来る最善の答えだった」「ホントその通りだよね」「感心したよ」「むしろこんな質問をした記者に変わって謝りたい」という声が寄せられている。
この質問をした記者にはネット民による集中砲火を浴びているようだ。
「監督に失礼すぎる」「どうせ新海監督が日本人だからこんな質問しても許されると思ったんだろ」「政治家でもない映画監督にどうして政治問題を聞くの?」といった具合だ。
愚問に“賢答”で対応した新海監督。早くも次回作が楽しみである。
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