再犯率の高いイメージのある犯罪といえば、性犯罪だろう。実際のところ、性犯罪の再犯率はイメージほど高くないという話もあるが、有名芸能人が盗撮で何度も捕まっているところなどを見ると、やはり「治らない」と思わざるを得ない。
お隣・韓国では、こうした性犯罪の再犯を防止するために「電子アンクレット」(位置追跡電子装置)が採用されている。
韓国では2008年から性犯罪者に適用されており、2009年からは未成年者の誘拐犯、2010年からは殺人犯、2014年からは強姦犯などが刑期を終えた後に着用を義務付けられ、再犯防止に役立てているのだ。
2015年には、芸能人として初めて電子アンクレット装着者が出た。
2015年7月10日に刑期を終えて刑務所から出所したコ・ヨンウクが、その人だ。 コ・ヨンウクは1990年代に人気を博した音楽グループ「Roo'Ra(ルーラ)」のラッパーで、タレントとしても活動した人気者だった。ところが2012年12月に、当時13歳の女子中学生にセクハラ行為を働いていたことが発覚。また、2010年7月から2012年7月にかけて、未成年3人を自身のオフィステルや車に連れ込み、酒に酔わせて強姦・暴行・姦淫した容疑で起訴され、裁判の末、懲役2年6カ月と電子アンクレット装着3年などの実刑判決を受けた。
出所したコ・ヨンウクの左足元には電子アンクレットがしっかりと装着されていたが、性犯罪者すべてに装着が義務付けられているわけではなく、実刑判決を受けたなかでも未成年者に対して暴行したり、常習性の可能性がある者たちを監視するために例外的に装着されるという。
非常に効果的に思えるが、電子アンクレットで犯罪者の日常を統制できるかといえば、100%ではないという。 装着者は居住地から最も近い場所に位置する保護観察所で日常を管理され、万が一、位置追跡ができない場所に行けば電子アンクレットから警告信号とアラームが発せられ、保護観察所から即座に電話がかかってくる仕組みになっている。
装着者は夜23時から朝6時まで外出禁止となるが、近年、電子アンクレットの毀損が増えているとも。2015年7月時点で294人の装着者を管理しているという大邱(テグ)市の保護観察所によると、2008年には1件もなかった電子アンクレットの毀損事例が、2012年には5件、2013年には6件もあったという。この事実は電子アンクレットの課題を浮き彫りにした。
また、監視人員も少ない。大邱市の保護観察所関係者によると、「大邱市内の監視対象者を担当する職員は5人しかいない。その人員で対象者の確認と出動を並行させるのは不可能だ」と嘆いている。
しかも、装着期間を終えた者が再犯するケースもある。 2015年7月13日にも、2014年3月まで電子アンクレット装着者だった大邱在住の44歳の男が、取り外しから1年足らずで再び性犯罪に走っている。
そんな危険人物たちの存在を事前にキャッチできるように、韓国の女性家族部(「部」は日本の「省」に相当)は2014年8月に「性犯罪者アラームe」というアプリを開発。スマートフォン向けに、電子アンクレット装着の性犯罪者の情報を公開しているだけでなく、性犯罪者の居住地域に入った場合はアラームで知らせてくれるという代物で、性犯罪者の動向をリアルタイムで確認できるものだ。
再犯防止のために利用されている韓国の電子アンクレット。被害に遭う人が一人でも減ることを願うばかりだ。
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