約3年ぶりの再会だった。目の前にはKリーグ王者・全北現代でキャプテンを務めるイ・ドングッがいる。
今季ACLのグループリーグで浦和レッズと対戦したストライカーは、敵地とホームの両方で浦和レッズに勝利できたことに安堵しているようだった。
「ACLグループリーグの中でもJリーグ勢との試合はやはり重要になってきますから。2試合きっちり勝つことができてまずは良かったです」
Jリーグ勢の対戦を“ミニ韓日戦”と呼んでいた韓国メディアも、Jリーグ勢相手に4勝1分3敗の成績を収めたKリーグ勢に及第点を出していた。鹿島アントラーズに1勝1敗を喫してグループリーグ敗退濃厚な慶南FCについても、孤軍奮闘した邦本宜裕にだけは賛辞を惜しまなかったほどだ。
全北現代の“顔”イ・ドングッ
そんなKリーグ勢の中でもACLの常連で、3度目の優勝を期待されているのが全北現代であり、イ・ドングッが全北現代の一員となって今季で10シーズン目となる。
全北を常勝軍団に仕立て上げたチェ・ガンヒ監督は今季から中国の大連万達の指揮官となったが、今ではイ・ドングッこそが全北の“顔”だ。今季はキャプテンも務め、文字通りチームの精神的支柱である。
「もちろん、浦和戦を前にチーム全員でビデオ分析も行いました。浦和の3バックや最前線からスペースを活用してくる動きなどにいかに対応すべきかなど、準備を徹底しました。その甲斐あって敵地でもホームでも浦和に勝つことができましたが、今季の浦和は以前に比べると力が落ちているようにも感じたのも事実です。
僕がこれまで対戦してきた浦和は、とにかく全体的に攻撃的で外国人選手も強力。とても手ごわい印象がありましたが、今季はあまり際立った強さを感じませんでした」
ただ、それでも印象的だったのは槙野智章と興梠慎三だったという。
「槙野選手はフィジカル、駆け引き、メンタルの3拍子が揃ったDFですし、やはり興梠選手は良いストライカーですよね。彼は鹿島の頃から“良いFWだな”と思っていましたが、相変わらず得点をかぎつける嗅覚に優れ、どんなにマークが厳しくても、どこからでも決めてしまう決定力がある。間違いなくJリーグを代表するストライカーだと思います」
イ・ドングッが興梠の存在を知ったのは2010年のACLだった。
当時のACLグループリーグで、鹿島と全北が対戦。鹿島には同級生のイ・ジョンスだけではなく、小笠原満男や中田浩二など1998年10月の“チェンマイの夜”を明かした選手たちが多かった。イ・ジョンスや顔見知りの彼らから紹介され、「そのポテンシャルの高さに驚かされました」という。
「試合は1-2で僕たち全北が負けました。ACLでJリーグのチームと多く対戦しましたが、どういうわけかJリーグ勢との対戦で思い出すのは勝った試合よりも負けた試合、それも敵地で負けた試合ばかりなんですよ(苦笑)」
セレッソ大阪、柏レイソル、浦和レッズ、横浜Fマリノス、FC東京など、その後も多くのJリーグ勢と対戦したが、思い出すのは負けた試合ばかりだという。
ちなみにイ・ドングッはACL通算37得点を記録しており(5月20日時点)、その記録はACL最多となっている。2015年ACLグループリーグ対柏レイソル戦では豪快なオーバーヘッド・ゴールも決めたが、「あの試合も負け試合だった(苦笑)」。
「Jリーグのさまざまなチームと対戦しましたが、どこも手ごわく簡単な試合はひとつもなかった。それぞれ強みは異なっていましたが、共通していえるのは、Jリーグ勢はパス主体のスタイルで、ボールを動かす試合運びに長けているという点です。
Kリーグが“直接的で線が太いサッカー”だとしたら、Jリーグは“細くて曲線もある線が無数に編み込まれたようなサッカー”というイメージでしょうか。スタイルの違いがあるからこそ対戦すると厄介な相手になりますが、勝利できたときの喜びも大きくなります」
ACLを勝ち進めば、そんなJリーグ勢との対戦がさらに多くなる。全北はすでにグループG首位で決勝トーナメント進出を決めており、決勝トーナメント1回戦の相手はグループH・2位との対戦となる。
グループH・2位の座を争っているのは、中国の上海上港とJリーグの川崎フロンターレ。5月21日に行われるグループリーグ最終戦でその順位が決まるが、イ・ドングッは語る。
「中国チャンピオンの上海も強いですが、川崎もかなり手ごわい印象です。川崎の試合をテレビで見ましたが、付け入る隙がないというか今のJリーグの中で最も安定した強さがあるのではないでしょうか。
GKは(チョン・)ソンリョンですしね。ソンリョンからゴールを奪うのは簡単ではないでしょう。でも、その一方で対戦するのが楽しみですけどね」
文=慎 武宏
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