「箱根駅伝の最大の美徳とは…」。日本の駅伝文化を見つめる韓国の眼差し

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昨日から始まっている第98回東京箱根間往復大学駅伝競走。“箱根駅伝”は日本の正月の風物詩となったが、韓国でも箱根駅伝は紹介されている。

駅伝は韓国語で「ヨクジョン」というのだが、韓国のポータルサイト最大手の検索窓に「ハコネ ヨクジョン」と打ち込むと、過去記事からウィキペディア韓国版の「箱根駅伝」説明、さらには一般人が撮影・掲載した関連動画などがヒットする。

日本旅行体験者の個人ブロガーのレポートでは「毎年1月2日と3日、東京近郊は午前中に麻痺します」というのものから、「感動を呼ぶスポーツ、日本の正月の風物詩“箱根駅伝”」というタイトルまであって興味深い。

女性のスポーツ参加増加。ランニング人口も

もともと韓国にはマラソン好きが多く、日本同様にマラソンと言うと「人生の縮図」「人間ドラマ」というイメージが強くて中高年に人気だったが、最近はユ・スンオク、レイヤンらフィットネス・タレントの影響を受けてスポーツを始める人々たちが増えている。

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特に20~30代の女性たちの間のスポーツ実施率が伸びており、複数の韓国メディアによると、韓国のランニング人口は500~600万人になり、小規模から大規模なものまで含めると、年間400回以上のランニング大会(ハーフマラソンなども含め)が行なわれているほどだ。

2017年ナイキ・ウーマンハーフマラソンでの一枚

その中には“ヨクジョン“も含まれているが、残念ながら韓国に箱根駅伝ほどにメジャーな“ヨクジョン”大会はない。

韓国には「箱根駅伝」級がない

昨今、韓国マラソン界は世界的なランナーをまったく輩出できずにいるが、韓国の陸上関係者は「箱根駅伝のような大会が韓国にないことも原因のひとつ」と、指摘していたこともあった。

韓国から見ると、「日本は箱根駅伝を通じてレースのスピードをアップグレードさせ、長距離選手層の底辺を広げる効果を得ている」というのだ。

野球世界ランキングでも日韓の格差が広がっている。その原因として“甲子園”を引き合い出す韓国球界関係者がいたが、長距離走でも同じようなことが言えるということなのだろう。


実際、韓国の駅伝大会は“箱根駅伝”とは比べものにはならない。

古くはソウルと仁川までを競った『京仁(キョンイン)駅伝』、ソウルから木浦(モクポ)間を走った『京湖(キョンホ)駅伝』などがあったか、今はない。

もっとも有名だった釜山(プサン)からソウルまで走る『釜山-ソウル間 大駅伝継走大会』も、2016年大会でその幕を下ろしている。全国規模の知名度を誇る駅伝大会は皆無で、各地域の体育会や陸上競技協会などが主催・主管する駅伝大会ぐらいである。

例えば2018年11月に行われた『第27回江原(カンウォン)駅伝大会』は、1区間7キロで3日間・合計372・1キロを走るレースだが、取り上げたのは地方メディアだけだった。

かつてスポーツ新聞『スポーツ朝鮮』は、「日本の駅伝はテレビで生中継されることが多くも、それが陸上競技を人気スポーツにする一助にもなっている」と評価していたが、韓国の“ヨクジョン”はローカル・イベントの域を脱せられずにいる。

それだけに正月の朝から全国ネットで生中継があり、東京から箱根までの沿道に観衆が集まり声援を送る箱根駅伝が、韓国人の目には新鮮に映るのかもしれない。

『風が強く吹いている』は韓国でも

過去に箱根駅伝の魅力を特集した韓国メディア『ノーカットニュース』の記事の中にも、こんな文面があった。

「箱根駅伝のもっとも大きな美徳は、ひとりではなく“みんな”で走るということだ。走者たちはタスキを継ぎながら興奮と一体感を味わい、ひとつの目標に向かって全員が全力を尽くして努力しながら、走りと心で疎通する。(中略)

マラソンは人生であり、人生とは孤独な旅路であるが、ひとりでは生きていけないのもまた人生だ。タスキを繋げながら展開される箱根駅伝は人生と似ている」

ちなみに韓国では、箱根駅伝を題材にした三浦しをんの小説であり、映画化・アニメ化もされた『風が強く吹いている』がアニメ専門ケーブルテレビ局で放映されたこともある。

文=慎 武宏 

*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。
 

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