慰安婦被害者の名誉と人権の回復し、歴史認識を正そうという趣旨のもと結成された市民団体「チャクサモ」の代表を務める韓国人大学生チョン氏が、映像を盗用したという疑惑にさらされている。
チョン氏は今年7月に開催された「第1回光州市大学生参与都市ブランドコンテンツ競演大会」に、自身が代表を務めるチャクサモチームとして『光州は民主人権の象徴である』と題した映像を出品。
奨励賞を受賞したのだが、その映像が他人の作品を盗用したものだったという疑惑が浮上しているのだ。
韓国では批判の声が高まっているが、批判の矛先は映像盗用疑惑そのものではなく、チョン氏の“前科”に向けられているように見える。
というのも、チョン氏はかつて、慰安婦像を犯罪行為に悪用したことがあったのだ。
事件が起こったのは2015年のこと。この年、チョン氏はチャクサモの活動の一環で終戦70周年を記念して、光州市庁前に慰安婦像を建設する計画をスタートした。
チョン氏はオンラインコミュニティ上で募金活動を進め、およそ1300人の賛同者から合計3300万ウォン(約330万円)の寄付金を集めた。
慰安婦像は同年8月14日に建立され、チャクサモの計画は無事達成されたように見えたが、その2カ月後、チョン氏にある疑惑が浮上する。
寄付金を横領したというものだ。
当時、チャクサモが利用するオンラインコミュニティには、こんな抗議文が掲載された。
「慰安婦像の制作に使われた金額の詳細な内訳も公開されておらず、剰余分の行方もわからない。すべての内容を明らかにし、領収証とともに公開してほしい。寄付金を1000万ウォン以上集めるには官庁に登録をしなければならないのに、それが未登録であることも疑問だ」
この書き込みを発端に騒動が広まると、チョン氏は同サイトで横領の事実を次のように自白した。
「大金が急に手元に入り、出来心から友達に酒でもおごってあげたくなってしまった。これまでコーヒー1杯でさえ高くて飲むのをためらっていたから、ある瞬間に、このぐらいなら問題ないだろうとタガが外れて使ってしまった。100万ウォン(約10万円)ぐらいは私的な用途に流用した」
つまるところ、慰安婦をビジネスに利用したようなものだ。
しかし、チョン氏は寄付計画の未登録については罰金刑が科されたものの、横領については罪に問われなかった。
証拠不十分により無嫌疑処分を受けたのだ。
それでも、チョン氏が寄付金を横領したことは本人が自白しているように、紛れもない事実だろう。だからこそ、今回の映像盗用疑惑にも批判が高まっているわけだ。
しかもチョン氏が盗用した映像は、慰安婦像の序幕式で使うために寄贈されたものであったらしく、映像の製作者は「大会に出品するためにあげたものではない」「なぜ許可もなく使うんだ」と怒りをあらわにしている。
ネット上のコメントも辛らつだ。
ネット民からは「絶対に罰を受けるべきだ」「慰安婦像を私的に利用するなんて…恥を知れ」「慰安婦被害者のおばあさんたちを食い物にする売国奴め」といった声が上がっている。
横領や映像盗用そのものへの批判に収まらないコメントが目立つことは、韓国人が慰安婦問題に対して特別な感情を持っていることを表しているのだろう。
はたして今回、チョン氏の横領事件が再注目されたことは、韓国の国民意識にどのような影響を及ぼすだろうか。
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