2016年5月に東京都小金井市で起きた、音楽活動をしていた女子大学生がストーカーに刃物で刺された事件は記憶に新しいが、韓国でも衝撃的なストーカー事件が起きた。
犯人の男(27)が被害者の女性Aさん(31)に初めて会ったのは2013年の夏。
Aさんは当時、全羅北道のキャバクラに務めており、男がその店を訪れた。
彼は自分を接客してくれたAさんに一目惚れ。少し年上だが上品で都会的なルックスに魅了されたという。
その日、気分良くお酒を飲んだ男は、彼女のことが頭から離れず、すぐにお店を再訪問した。
2度目に会ったとき、男は連絡先の交換を求め、Aさんは「営業用」の連絡先を渡したという。
それから2人は恋人同士のようにカカオトークで連絡を取り合っていたが、2015年5月を境に男の行動がおかしくなっていく。
まず、電話番号の一部をAさんとまったく同じものに変更した。
さらに、彼女が退勤する時刻にお店の周辺で待ち伏せし、尾行。そればかりかカフェでAさんが異性と会っていると「コーヒーが喉を通るのか」とメッセージを送りつけたりもしたそうだ。
恐怖を感じた彼女は男を着信拒否し、接触を避けるようになった。
それでも男は通信が遮断されていなかったカカオトークを利用し、「なぜ俺を避けるんだ」という内容のメッセージを4年間で5000件以上も送り続けた。
そして今年2月1日。男はついに凶行に出る。
Aさんはすでにキャバクラを辞めて自身のお店を開いていた。そのお店を突きとめた男は、午前3時に同店を訪問。突然、彼女の携帯電話を奪い取り、顔面を殴ったのだ。
通報を受けた警察はこれを単純な暴行事件として処理したが、それを逆恨みした男は5月28日に再びお店を訪れ、今度は携帯電話を破壊してAさんに暴行を加えた。通報を受けた警察は男を検挙。男は「彼女が自分に会ってくれず、警察に通報までしたから腹が立った」と供述している。
警察は今回の事件に関して、「常習的に脅迫メッセージを送り脅威を与え暴行した容疑で男に対し拘束延長を申請」している。
ただ、韓国では現実的にストーカー行為を処罰する方法が軽犯罪として取り扱うほかに存在しない。
韓国法曹界によれば現行法上ストーカーを処罰できる根拠は、軽犯罪処罰法の「持続的に苦しめる」という文言だけなのだという。
今回の事件で言えば、男は暴行罪で処罰はされるものの、ストーカー行為そのものへの処罰は罰金10万ウォン(約1万円)以下に過ぎず、韓国では「処罰が軽すぎる」と批判が噴出している。
今回の事件に関して、警察はこんなコメントもしている。
「ストーカーは自身の行為を犯罪ではなく求愛だと考える傾向がある」
「ストーカー行為は性暴力や暴行、監禁、殺人などにつながる可能性があるため、重く処罰しなければならない」
だが、実際に法整備は進められていない。
韓国の国会で何度かストーカー処罰に関する法律が発議されたことはあったが、すべて可決には至らなかった。ストーカー規制法が改定され続けている日本と比べると、非常に対照的だ。
ストーカー行為が被害者に恐怖と苦痛を与えることは間違いない。ストーカー行為を抑止する早急な対策が求められている。
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