韓国で、高齢女性による売春が物議を醸している。
彼女たちはソウル一帯で売春を行っており、日本の「リポビタンD」のような韓国の栄養ドリンク「バッカスD」を差し出しながら客に近づくことから“バッカスばあさん”と呼ばれている。
そもそも彼女たちの存在は韓国国内では1990年代から問題視されてきたが、最近再びスポットライトが当たったきっかけは、複数の海外メディアが彼女たちの売春行為について取り上げたことだった。
例えばカナダのVICEは、「韓国の性産業」と題したドキュメンタリー番組で、売春が横行しているソウル市鐘路(チョンノ)区のタプコル公園を訪れた。
番組の中で崇實(スンシル)サイバー大学のイ・ホソン教授は、「彼女たちのかばんの中身は、すべてバイアグラだ」「一日中、公園で待機して、通り過ぎる高齢男性に売春を持ちかける」と説明。「“バッカスばあさん”だけでなく“焼酎ばあさん”、“コーヒーばあさん”などもいる。それだけ高齢者を相手にした娼婦が多いということだ」と話している。
売春を行っている高齢女性は、鐘路区だけでも400人ほどいるという。
また、シンガポールのチャンネル・ニュース・アジア(CNA)は、「韓国のおばあさん売春婦」というドキュメンタリー番組で、売春婦のパクさん(78)を直撃。
彼女はインタビューに対し、「警察に捕まるリスクはさておき、年を取ってこんなことをするのが、とても恥ずかしい」「政府の支援で、食べるのには困っていないが、薬代を稼ぐために売春をしている」と告白している。
独り身で関節炎を患っており、働くことは難しいのだという。
実際、韓国の高齢者の貧困化は深刻だ。経済協力開発機構によれば、韓国の高齢者貧困率は2015年時点で49.6%、加盟国の中でワースト1位だった。この数字は、加盟国平均の12.6%の約4倍に上っており、日本の19.4%と比べても、その深刻度は明らかである。
ただ、“バッカスばあさん”たちの稼ぎは、多いとはいえない。14年にイギリスBBCが彼女たちを取り上げた番組では、性交渉までこぎつけた場合、2~3万ウォン(約2000~3000円)を受け取ると伝えられている。
それでも彼女たちは生きるために売春を続けているわけだが、韓国のネット上には、さまざまな意見が寄せられている。
「国家が役割を果たしていない状況で窮地に陥った人々の選択を、非難はできない」「子どもや高齢者、障害者といった弱者には、福祉を保障するのが当然なのに……」「売春する女性だけでなく、買う男性側の落ち度についても指摘しなくてはならない」「当事者についてよく知らないまま同情するのはよくないよ」「若ければ娼婦と後ろ指をさすくせに、高齢者は生計の維持のためだからかわいそう? それはおかしい」といった具合だ。
2016年には“バッカスばあさん”を主人公にした映画『バッカス・レディ』も公開されているほど慢性的な問題となっている高齢女性の売春問題。
韓国社会には早急な対策が求められている。
(文=サーチコリアにユース編集部)
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