「暴力か集団暴力か、確認してみろ。(省略)圧死?」(イ・イムジェ前龍山警察署長)
「特異事項はないとのことです」(龍山警察署長無線副官)
159人が亡くなった「梨泰院(イテウォン)惨事」当時、龍山(ヨンサン)警察署の関係者たちが交わした会話内容が明らかになった。
「人が押し潰された」などの繰り返しの無線送信や、「人々が何層にも重なり助けを求めている状況」という現場報告があったにもかかわらず、イ・イムジェ前龍山警察署長は圧死事故を認識できていなかったことが確認された。
『時事ジャーナル』が入手した判決文によると、2022年10月29日、ソウル龍山区の梨泰院で発生した大規模圧死事故の前後において、警察の「安全感覚の欠如」問題が露呈していた。
ソウル西部地裁は、事故から約2年後の今年9月30日に「十分に予見可能な事故」であったとして、事故責任者たちに対し、初の有罪判決を下した。
業務上過失致死傷の容疑で起訴されていたイ・イムジェ前署長とソン・ビョンジュ前龍山署112治安総合状況室長には、それぞれ懲役3年と懲役2年が言い渡された。同じ罪で起訴されていたパク・インヒョク前112治安総合状況チーム長には懲役1年、執行猶予2年が言い渡された。
事故発生から16分が経過した時点(22時31分)。ソン前室長は「人が入り乱れ、何層にも重なり、手を伸ばして助けを求める状況」と梨泰院派出所長から電話を受けた。ソン前室長はすぐに(22時32分)イ前署長に電話をかけ、1分42秒にわたって「死傷の可能性」を含めて状況を報告した。
しかし圧死事故に関する無線は、すでにその前から続いていた。公訴事実によれば、イ前署長が乗車していた公用車内では、悲鳴混じりの無線内容が流れていた。
当時、イ前署長は三角地(サムガクチ)駅周辺での集会現場管理を終え、梨泰院派出所に移動中だった。車内には龍山署112自署無線、行事無線、ソウル警察庁指揮無線、警護無線などの無線機が設置されていた。
イ前署長は結局、22時36分になって初めて「利用可能な全人員を送れ」と無線で指示を出した。しかし指示後も、彼の無線を補佐した副官には「暴力か集団暴力か、何なのか確認してみろ」と指示を出した。
前述の無線内容が流れる状況においても、圧死事故を適切に認識できていなかったのである。
それを受けて無線副官は、龍山署112室に電話をかけ、暴力事件かどうかを確認した。112室は「そうではなく、圧死しそうだという通報が続いている」と回答。副官が再び「特別な状況なのか」と尋ねると、112室は「特別な状況ではないが、通報が続いている」と答えた。
このやりとりを聞いたイ前署長が「圧死?」と尋ねると、副官は「特異事項ではないそうです」と答えた。イ前署長は23時頃に流れた「60人がCPR(心肺蘇生)中」という無線で、事故の深刻さを初めて知ったと主張している。
警告は惨事発生の4時間前から繰り返されていた。
事故当日18時34分から事故直前の22時12分まで、圧死事故を懸念する通報は計11件寄せられていた。「本当にどうにかして道を開けてください。人が死にそうです」「人が多すぎて転倒して怪我をしてパニック状態です」「大事故が目前です」「圧死しています。カオス状態です」といった内容の通報が殺到していたが、龍山署112室はこれらの通報にも無線指令を出さなかった。
裁判所は、事故が予見可能であったと厳しく指摘した。「2014年のセウォル号沈没事故以降、韓国で発生した最大の人命事故であり、1995年の三豊百貨店崩壊事故以降、ソウル都心で発生した最大の人命事故」と述べ、「その責任は決して軽いものではない」と強調した。
さらに「この事故の被害者の中には、事故発生後の22時42分および23時頃に119通報した死亡者も確認された」とし、「被告たちが業務上の注意義務を果たし、救助および救助支援活動をしていれば、被害者の多くは死亡を免れたり、負傷したりせずに済んだ可能性がある」と指摘した。
イ前署長については「龍山区の治安を総括する龍山警察署長として、総合的・効果的な対策を立て、事故を予防および対応する責任があった」と指摘し、「事故を十分に予見すべきであったにもかかわらず、安易な認識で梨泰院ハロウィンデーへの備えを怠ったために、最終的に悲惨な結果を招いた」と厳しく批判した。
ただし、イ前署長が事実関係をほぼ認め、責任を痛感している点が考慮され、量刑に反映された。
また、梨泰院惨事によって平凡な日常を失った遺族を悼んだ。裁判所は「梨泰院惨事は、新型コロナによる社会的距離確保措置がようやく解除された後、初めて迎えるハロウィンデー前の土曜日に発生したもので、被害者たちはハロウィンデーを楽しむために友人や恋人、知人とともに梨泰院を訪れた私たちの平凡な市民であった」と述べた。
続けて「誰もが自由に歩ける日常的な場所であったその通りで、大半が20~30代の被害者たちは、もはや過去の平凡な日常に戻ることができなくなった」とし、「遺族や知人たちは大切な人を一瞬で失い、言葉にできない苦しみを味わっており、事故の報を受けた国民の衝撃と喪失感は、哀悼の域を超え、大規模災害に対して無力な国家機関への怒り、社会全体の安全体制に対する不信にまで高まっている」と批判した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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