アメリカで韓国人など475人拘束…「金は来い、人は来るな」トランプ米大統領の“明確な矛盾”

2025年09月13日 国際 #時事ジャーナル
このエントリーをはてなブックマークに追加

ドナルド・トランプ米大統領の最近の行動は、「明確な矛盾」を露呈している。

【注目】米・日・台を含めた4カ国で、韓国の企業だけが“没落”

外国企業による大規模な投資は歓迎する一方で、その投資を可能にする人材の流入は徹底的に統制しようとする「二重戦略」を展開しているのだ。

「追放の香りが心地よい」というトランプの本音は、「金は来い、人は来るな」という一言に要約できる。投資は歓迎するが、技術と人材は統制対象と見ているわけだ。

米ジョージア州の現代自動車・LGのバッテリー工場での取り締まり事態は、それを象徴的に示している。

トランプ政権は工場建設に投入された韓国人エンジニアや技術者を大量に逮捕し、「不法移民の取り締まり」を名分に掲げた。しかし、その多くは短期ビザで合法的に入国した特殊技術人材だった。

結局のところ、アメリカは同盟国に「投資は来い、人材は来るな」というメッセージを投げかけたのだ。

「投資は歓迎、人材は統制」のトランプ

トランプ大統領のこうした行動は、一時的な政策ではなく、国内向けポピュリズムと対外交渉の圧力が同時に作用する「多重布石戦略」といえる。

支持層には「アメリカ国内の工場を増やし、不法移民も取り締まった」という二重の成果をアピールできる。対外的にも「投資せよ、ただしアメリカの規則(移民・労働・関税)に従え」という圧力をかけているのだ。

つまりトランプは、資本は受け入れるが人材は最小限に抑え、アメリカ国内の人材で代替せよという「二重のシグナル」を送っているのである。

トランプ大統領(左)と李在明大統領
(写真=李在明大統領Instagram)トランプ大統領(左)と李在明大統領

ここには緻密な政治的計算も読み取れる。国内では「雇用を守り不法移民を取り締まる強い指導者」として印象付けられ、対外的には「アメリカのルールに従え」という圧迫を強める。その恐怖政治は「金は来い、人は来るな」という奇妙なスローガンの上に成り立っているのだ。

一方、メディアはこの徹底的かつ利己的な計算が「自縄自縛」となって跳ね返る可能性を警告する。不法移民の追放政策と製造業投資誘致が衝突し、海外企業のアメリカ国内活動が萎縮しかねないからだ。すでに多国籍企業は予測不能な取り締まりリスクに身構えている。

フィナンシャル・タイムズ(FT)は「移民・税関捜査局(ICE)の急襲時、足首や手首、腰に拘束具をはめられた労働者の劇的な映像は、アメリカで事業を行う、あるいは投資を計画する外国企業に萎縮効果を与える」と報じ、「労働者の拘束はトランプの支持層にメッセージを送り、国際企業にアメリカのビザ規定を尊重させるための衝撃を与える狙いがあるのは明白だ。しかしこれはむしろ米製造業を活性化させようとする大統領の計画に『逆効果』を及ぼしかねない」と分析した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、アジア企業が必要な専門家なしでアメリカ工場を建設すれば、より長い時間と多大な費用がかかると展望した。「アメリカは外国資本がもたらす先端プロジェクトを必要としているが、そのプロジェクトを可能にする外国人材は制限しようとしている」と指摘し、厳格な移民取り締まりとアジア製造大国からの投資誘致という目標は必然的に衝突すると報じた。

今回の事態の本質の一つは、トランプ政権の「移民政策」にある。特に技術と人材への「警戒的視点」だ。トランプ大統領は工場急襲直後、「彼らは不法滞在者であり、ICEはやるべきことをした」と正当化。国境管理の責任者トム・ホーマンも「不法入国は犯罪であり、職場での取り締まりをさらに増やす。不法滞在者を意図的に雇用すること自体が犯罪だ」と警告した。

「拘束騒動、製造業ルネサンスを潰す恐れ」

トランプ政権は、外国人熟練労働者の長期滞在や大規模流入を警戒し続ける姿勢を示したことになる。

今回のICEの取り締まりは、不法移民だけでなく合法的に入国した短期ビザ労働者まで対象とした。B-1ビザなどで入国した韓国・日本・台湾の人材が工場の試運転や特殊技術の設置を担当していたが、彼らも摘発の対象となった。

AP通信は、彼らが「設備稼働や設置のための短期技術専門家」であり、一般労働ではなく特殊業務を担っていたことを強調した。

ワシントン・ポスト(WP)は今回の急襲が数千の米製造業雇用を奪い、むしろトランプ大統領の「製造業ルネサンス」構想を崩しかねないと指摘。カリフォルニア大学の経済学者ジョバンニ・ペリは「トランプ政権の関税政策は多くの企業のアメリカ工場誘致を狙っていたが、今回の事件で企業は投資に一層慎重になる」と分析した。

国際社会の反発も大きい。韓国の政界やメディアは「アメリカが同盟国の企業を標的にした」と反発し、日本や台湾の経済界も「予測不能な政策は海外投資環境を萎縮させる」と警告。欧州メディアも「トランプの恐怖政治は同盟も敵も区別しない」と国際的波紋を懸念した。

海外メディアと専門家たちは、今回の事件をトランプ式の経済論理と移民統制論理の衝突と見ている。

WSJは「外国の製造業投資を望みながらも、その投資を可能にする外国人材は阻もうとするという根本的な矛盾が露わになった」と分析。これにより、アメリカ国内でも専門人材ビザの発給を拡大すべきだという要求が強まっている。外国資本を歓迎しながら、それを稼働させる熟練人材を制限する矛盾した政策が、結局はアメリカの製造業ルネサンス戦略を脅かす可能性があるという指摘だ。

ロイターは、韓国企業がB-1やESTA(電子渡航認証制度)ビザを活用してきたのは「不法というよりは現実的な選択だった」と指摘した。特に移民取り締まりの根拠ではなく、制度的な圧迫から生じた状況であることを強調した。すなわち、これまで不完全な代替手段に依存してきたのは制度的な限界のためだとし、制度的な空白を突いたのだ。

FTもまた、このような便法的慣行を「オープンシークレット(公然の秘密)」と表現し、「投資を迫りながらもビザの選択肢を開かないアメリカの政策が企業活動を難しくしている」と指摘した。

「就労ビザ拡大なしに経済成果は望めず」

政治・学界からも改善要求が出ている。WPは労働力不足問題の解決のため「アイアンカード」制度を提案した。これは特定産業で一定期間勤務すれば、永住権を迅速付与する仕組みだ。

ペンシルベニア大学ウォートン校の研究陣は「低熟練から高熟練への移民構造転換でアメリカ全体の賃金と生産性が高まる」と報告した。

李在明大統領
(写真=李在明大統領Instagram)

経済専門家たちは、H-1Bビザの制限が海外人材の流出を招き、むしろアメリカ国内の高熟練労働者の生産性や賃金を低下させると指摘している。情報通信産業協会(ITI)は「ビザ拡大はGDP(国内総生産)の増加と雇用創出、税収拡大につながる」と強調した。ブルッキングス研究所も「移民労働はアメリカ人の機会を奪うのではなく、むしろ増やす」と述べ、学界全体の研究結果を紹介した。

コロンビア大学の研究陣も、高熟練移民がイノベーションと起業精神を促進し、地域経済に活力を吹き込む「はしご効果」を生むと分析した。

トランプ政権も遅れて対応に乗り出す様子を見せている。キャロライン・レビット米大統領報道官は9月9日(現地時間)、今回の事態の再発防止策に関連して、国土安全保障省と商務省が共同で対応に入ったと明らかにした。国土安全保障省は移民政策を統括し、商務省は外国企業の対米投資を担当する。

実際、トランプ大統領も事態発生当初とは異なり、その深刻性を認識したようだ。彼は今回の事態について再び声明を出し、「我々は皆さんが優れた技術的才能を持つ非常に賢い人材を合法的に招き、世界水準の製品を生産することを奨励する。そして我々は皆さんがそうできるよう、人材を迅速かつ合法的に受け入れられるようにする」と述べた。

しかし、その本音は明らかだという分析が出ている。トランプ政権の最優先方針である「アメリカ・ファースト」に基づき、最終的には現地でのアメリカ人雇用を増やす方向にある。

実際、彼は「高度人材を育成する方法は、その分野に熟練した人を呼び寄せ、一定期間滞在させて助けを受けることだ」とし、「専門家を呼び込み、我々の国民を訓練して、アメリカ人が直接できるようにする方策を整えなければならない」と強調した。技術教育の伝授を通じた自国民の雇用保障が、最大の優先課題であるということだ。

世界のメディアは今回の事態を契機に、アメリカの本当の意図を改めて問い直している。投資は歓迎するが人材は排除するという政策が果たして持続可能なのか、という点だ。

世界各国の企業はすでに米国内投資のリスクを再評価し始めている。トランプの恐怖政治が生み出した二重基準は、単なる移民問題ではなく、グローバル供給網と国際秩序を揺るがす火種となっている。

結局、アメリカ内外から発せられるメッセージは明白だ。「外国資本だけを引き入れて人材を遮断する二重戦略は持続可能ではない。専門人材ビザの拡大なくしては、製造業ルネサンスも経済成果も期待できない」ということだ。

(記事提供=時事ジャーナル)

日本を「地獄」と叩いた韓国歌手、日本公演へ…その“二枚舌”を意外な人物が痛烈批判

韓国ソウルで所得格差が深刻化…上位20%は1000万円超えも、下位20%は300万円届かず

韓国を動かしているのは誰か 経済界ではサムスン電子会長が10年連続1位

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research