「ヘル朝鮮」「スプーン階級論」に次ぐ新造語「起承転“鶏”」とは何を意味するのか

2017年06月01日 経済
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「ヘル朝鮮」「スプーン階級論」をはじめとして韓国の若者が自国を揶揄する言葉は数多くあるが、つい先日、テレビ番組『報道2001』で「起承転鶏(チキン)」というキーワードが紹介されていた。

「起承転鶏」とは、どんな仕事をしていようが最終的にはチキン店を開業するしかないという意味が込められた新造語だ。

公務員になるか財閥企業に入る以外は例え大学を卒業して就職しても、行き着く先はリストラや過労死で、結局はチキン店をやるしかないという韓国社会の現状を皮肉る言葉といえるだろう。最近は就職できない若者がチキン店をオープンすることも珍しくないそうだ。

多すぎる韓国のチキン店

実際に韓国にはチキン店が3万6000店(2013年)もあり、全世界のマクドナルドの店舗数よりも多いという報道もあった。

一人暮らし世帯の増加や配達文化の拡大によって、チキンは毎年のように人気宅配メニューで1位となっており、需要も多い。

大手チェーンのなかには、海外進出を果たしているチキン店も。日本に進出している大手もあり、5月20日には「ホシギ2羽チキン」の新大久保店や新宿店に、同チェーン専属モデルで人気ガールズグループGFRIENDが訪れ、サイン会などのイベントも行っている。

まさに韓国は“チキン大国”というわけだが、そのわりには肝心の鶏に対しての意識は高くないといわざるを得ない部分もある。

昨年11月から全国的な鳥インフルエンザが発生しており、3000万羽を殺処分したというニュースも話題になった。日本がわずか60万羽ほどで事態を収拾していたことと比較して、「韓国の鳥インフルエンザは“人災”」との指摘もあったほどだ。

最終的に「チキン店を開業する」という選択肢の少なさは気になるところだが、生計を立てられるのであればまだいいだろう。問題は、チキン店をオープンしてもすぐに廃業となっている現実だ。

韓国の中小企業研究院によると、自営業の廃業率は1年以内40.2%、2年以内53.7%となっており、5年以内に廃業する比率は70%に及ぶ。

チキン店の廃業ラッシュ

立して競争率の高いチキン店になれば、その廃業率はさらに高まる。「2016国税統計年報」によると、チキン店をはじめとする飲食店の廃業率は84.1%だ。

チキン店の半数は3年以内で廃業となり、10年生存率は20.5%しかならない。

そのため今やチキン店を新たに開業しようとする人も、維持できる人も、少なくなる一方で、「起承転鶏」はもはや「起承転“廃業”」(『MBC』)となっているのが現状だという。

そんな状況もあってか、最近はチキン店に代わってコーヒー店が増加傾向にあるというデータもある。ソウル市商圏分析サービスによると、2016年基準でコーヒー店は1万8406店で、前年よりも1506店も増加。抗税調の自営業者統計では、1年で20.12%も増えたとなっている。

韓国人のコーヒー好きは、アメリカ、カナダ、中国、日本に続いてスターバックスが1000号店をオープンしていることからもわかるだろう。前出の国に比べて韓国は、人口が圧倒的に少ないのだ。

業界関係者は「コーヒー店の場合、基本的な消費人口が多くて各売り場が消化できる顧客数が多い。それに比べてチキン店は、訪れる頻度がコーヒーに比べて高くない」と分析している。

しかし、チキン店がコーヒー店に代わっただけで、結局は「起承転廃業」という運命を辿ることになりそうだが…。

経済の不況が主な原因であることは間違いないが、根本的な問題は、埋めることができない韓国の経済格差にあるのだろう。韓国では日本やアメリカと違って、財閥企業に生まれなければ富豪になれないという現実があるのだ。

いずれにしても、「起承転鶏」という皮肉は、韓国の若者たちの絶望感から生まれたものともいえる。一日も早く彼らが希望を持てる社会になってほしいが、はたして…。

(文=慎 武宏)

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