“内戦”の火種に?不正行為の摘発と監査権限をめぐって対立する2つの憲法機関…韓国の選管委と監査院

2025年03月04日 政治 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判が最終段階に差し掛かったなか、大統領の非常戒厳の標的のひとつであった「中央選挙管理委員会(選管委)」と大統領直属機関である「監査院」が、不正行為の摘発と監査権限をめぐって対立する構図となっている。

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2023年下半期に発生した「選管委高官の子女特別採用」問題以来、約1年ぶりの憲法機関同士の対決となる。

このような緊張関係が政界や支持層にも波及し、尹大統領の弾劾審判の判決後に起こりうる「内戦」のような状況をさらに悪化させるのではないかという懸念が出ている。

対立する2つの憲法機関

選管委と監査院の2つの憲法機関は、今回の弾劾局面において政治の中心的な存在となった。

監査院は、文在寅(ムン・ジェイン)政権と野党関係者を狙った「標的監査」疑惑をめぐって政界の関心を集め、その結果、機関の長であるチェ・ジェヘ監査院長が野党主導で史上初の弾劾訴追を受けた。

2025年自主監査責任者会議
(写真=監査院)「2025年自主監査責任者会議」

これに激怒した尹大統領は、弾劾審判の最終弁論で述べたように「野党の立法暴走を阻止しなければならない」とし、2024年12月3日に非常戒厳を宣布した。

特に尹大統領は、非常戒厳の標的を選管委にも向けた。

一部の支持層が主張する「不正選挙」疑惑や組織の腐敗問題を証明するため、戒厳軍を京畿道・果川(クァチョン)にある選管委庁舎に派遣したのだ。

大統領直属の監査院も、選管委の実態を明らかにするための職務監査に着手した。しかし、選管委が監査院を相手取り、権限争議審判を請求し、憲法裁判所は2月27日に選管委側の主張を認めた。これを受けて監査院も翌日、選管委に関する過去5年間の採用不正の監査結果を公開し、対抗措置を取った。

両憲法機関の対立は今回が初めてではない。過去30年間、監査院の監査対象に選管委が含まれるかどうかをめぐり、政界も巻き込んだ論争が繰り広げられてきた。

特に2022年の大統領選挙では、「ザル投票」問題(不在者投票の投票用紙がプラスチック製のザルなどに入れられ、不正選挙疑惑が浮上)に関連して、監査院が選管委に資料提供を求めたが、選管委は「職務監査の対象ではない」として反発し、関連監査は最終的に実施されなかった。

また、2023年に発生した「子女特別採用」問題に関しても、選管委は自らの改善策を発表しながら、監査院の監査を拒否する立場を示していた。

中央選挙管理委員会
中央選挙管理委員会

ただし、監査院が今回発表した選管委の不正監査結果は、規模が相当なものであり、弾劾局面の新たな争点として浮上している。

計878件の選管委の採用不正が摘発されただけでなく、選管委の前事務総長が政治家との連絡用に「セカンドフォン」を使用していた事実も明らかになった。監査院は、過去10年間に実施された経歴職公務員の採用において、地方選管委で662件、中央選管委で216件の不正または規定違反があったと発表した。

両機関の闘いは両党の闘いに

このような憲法機関同士の神経戦の流れは、与野党の政治関係者や両陣営の支持層にも波及している。

「不正選挙説」を信じる一部の保守支持者は監査院の動きを強く支持する一方、進歩(リベラル)支持層は憲法裁判所や選管委に力を与える姿勢を見せている。加えて、各党の議員たちもそれぞれ異なる憲法機関を支持し、対立を煽るような構図となっている。

まず、与党「国民の力」は選管委の国政調査と特別監察官制度の導入を党の方針として掲げ、野党に対し選管委の不正を正すための措置に加わるよう圧力をかける動きを見せている。

また、選管委の選挙システムに対する「特別点検法」の推進計画も発表した。「国民の力」のパク・スミン院内報道官は3月3日、国会で記者団に対し「特別監察官法を党の方針として推進し、選挙システム特別点検法の発議も進めている」とし、「この2つの法律によって、選管委に対する国民的な懸念と信頼の問題を回復できるだろう」と強調した。

一方、最大野党「共に民主党」は憲法裁判所の決定に合わせて、監査院法改正案(チョン・ヨンギ議員代表発議)を提出した。これは監査院の監査対象から選管委を除外する内容が核心となっている。

チョン・ヨンギ議員
(写真=チョン・ヨンギ議員Facebook)

チョン議員は「選管委は現行憲法上、明確に『独立的』な憲法機関と規定されており、それにふさわしい地位が保障されるべきだ」とし、「このように規定することで、監査院と選管委の間で生じる職務監査をめぐる対立を根本的に防ぐことができる」と改正案提出の背景を説明した。選管委職員の不正行為については、単純な捜査を通じて処罰すればよいという立場だ。

「共に民主党」はまた、「国民の力」が持ち出した国政調査のカードについても、その政治的意図が強いと見ている。ユン・ジョングン院内報道官は取材陣に対し、「国民の力が主張する不正選挙や選管委の体制について問題提起しようとする悪意が背景にある」と指摘した。

さらに、「共に民主党」は「セカンドフォン」疑惑の前事務総長が昨年、仁川(インチョン)江華(カンファ)郡守の補欠選挙で「国民の力」の予備候補として出馬したことを取り上げ、「むしろ国民の力こそ、この問題について説明すべきだ。犯罪行為については、検察と警察の捜査で明らかになるだろう」と反撃した。

特に政界の一部では、憲法機関を名指しした強硬な発言も相次ぎ、論争が広がっている。

「国民の力」のソ・チョンホ議員が3月3日、尹大統領の弾劾反対集会に参加し、「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)、選管委、憲法裁判所が違法行為と混乱を引き起こしている。すべて破壊しよう」と発言したのだ。

ソ・チョンホ議員
(写真=ソ・チョンホ議員Facebook)

これを受け、「国民の力」は党の公式見解ではなく「議員個人の意見」として事態の鎮静化を図っている。一方、「共に民主党」は「憲政を乱す暴言」として、ソ議員を国会の倫理特別委員会に提訴し、懲戒を推進する計画だ。

一部では、尹大統領の弾劾審判の判決が下される場合、現在の対立構造が「内戦状態」にまで発展するのではないかとの懸念も出ている。

第3勢力の政治関係者は『時事ジャーナル』の取材に対し、「巨大与野党が憲法機関を国会に呼び出し、自分たちに有利なように政治的に利用している。国会での合意が失われた状況で、数十年も膠着状態にあった問題が解決するはずがない」と指摘した。

明知(ミョンジ)大学シン・ユル政治外交学科教授も電話取材で、「弾劾局面の影響で、これまで続いてきた2つの憲法機関の対立が引き続き注目を集めている。これはその過程で生じた現象だ」と分析した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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