文在寅政権に発足され4年…大統領や国会議員を捜査する韓国の「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」に“不要論”

2025年03月11日 政治 #時事ジャーナル
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大統領、閣僚、国会議員、将官級将校など高位公職者を捜査する韓国の「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が、発足4年で存続の危機に直面した。

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裁判所が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の拘束を取り消したことを受け、内乱罪の捜査を担当してきた公捜処の役割と存在意義をめぐる議論が、政界や法曹界で激化している。

与党「国民の力」は、公捜処の即時解体を求める法案を発議する方針を示し、オ・ドンウン公捜処長を職権乱用の疑いで告発する構えも見せている。一方で、今回の尹大統領に対する捜査で論争となった内乱罪捜査の規定を公捜処法に追加するなど、制度を補完するべきだという意見もある。

そもそも公捜処は、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2020年7月に正式に発足した。

検察改革の一環として導入され、判事・検察官・警察の高官などの腐敗犯罪を専門に扱う機関として設計された。しかし、公捜処は2024年1月時点で、逮捕令状の請求は5回すべて棄却され、有罪判決を勝ち取った事例もなかった。

主要な捜査対象だった高位公職者や政治家への捜査も遅々として進まず、公捜処の「無用論」が継続的に提起されていた。

オ・ドンウン公捜処長
(写真=高位公職者犯罪捜査処HP)オ・ドンウン公捜処長

廃止するのか、攻防が過熱

法曹界では、公捜処の廃止をめぐって意見が割れている。

成果が乏しいのだから、予算の無駄遣いをやめるべきだという意見がある一方、公捜処が機能していないとしても、即座に廃止するのは拙速だとの反論も出ている。

韓国弁護士協会の元報道官であるキム・ウォンヨン氏は3月9日、SNSで「公捜処はそもそも検察の権限を削ぐために作られた機関で、巨額の予算を使いながら成果はほとんどない」とし、「今後、状況が改善するとも思えない。直ちに廃止に向けた議論を始めるべきだ」と批判した。

実際、2025年度の政府予算案では、公捜処の捜査支援および捜査関連予算は14億3000万ウォン(約1億4428万円)にすぎず、検事の定員25人を考慮すると、1人あたり5720万ウォン(約577万円)の予算しか割り当てられていない。

しかし、公捜処が無能であっても、廃止は時期尚早だとの意見もある。元ソウル北部地検の検事であるキム・ギュヒョン氏は3月10日、SNSで「もし公捜処より優れた新しい機関があるなら、そちらを設立し、公捜処を廃止しても良い。しかしそうでないならば、公捜処が機能するよう改革すべきだ」と主張した。

公捜処の廃止をめぐる議論は、政治の場でも激しく対立している。

判事出身で「国民の力」のナ・ギョンウォン議員は、公捜処廃止法案を発議し、3月9日の記者会見で「オ・ドンウン公捜処長は大統領に対する違法捜査、違法逮捕、違法拘束の責任を徹底的に問われるべきだ」と述べ、「共に民主党の指示で大統領を違法捜査、不法拘束した公捜処は廃止されて然るべきだ」と主張した。

さらに、10日には、「国民の力」の「尹錫悦政権の非常戒厳発令による内乱疑惑の真相究明国政調査特別委員会」の議員らが、オ処長を不法逮捕・監禁、偽証、虚偽公文書作成などの疑いで告発した。

これに対し、野党側では「捜査手続きに問題があった可能性は否定できないが、公捜処を直ちに廃止するのは拙速だ」という意見が出ている。

「改革新党」のイ・ジュンソク議員は3月7日、SNSで「尹大統領の拘束取り消しは、検察の手続き上のミスによるものとみられる」とし、「このような重大な事案に対する公捜処と検察の捜査対応は非常に遺憾だ。混乱を招いた責任を取るため、検察総長と公捜処長の辞任を要求する」と求めた。

「廃止が正解ではない」

一部では、公捜処がこれまで検察の監視役を果たしてきた点を考慮すべきだと指摘されている。

3月8日、尹大統領の釈放を伝えるニュース
(写真=時事ジャーナル)3月8日、尹大統領の釈放を伝えるニュース

公捜処が廃止されれば、高位公職者の捜査機能は再び検察や警察に戻ることになる。公捜処が発足する前も、検察の政治的中立性や高位公職者の捜査の公正性をめぐる問題が指摘されていたため、公捜処の廃止は新たな課題を生む可能性がある。

刑事事件専門の弁護士であるチョン・グスン氏は「公捜処の成果が不十分なのは事実だ。しかし、今回の内乱罪捜査をめぐる問題を見ても、検察が高位公職者の捜査で十分な役割を果たしていないことがわかる。検察の権限を監視する機関は必要だ」と述べた。

また、「新たな機関を作れば、公捜処の二の舞になるだけだ。問題があるならば、大幅な法改正や人事改革によって公捜処を立て直すべきだ」と主張した。

公捜処の存続は、最終的には政界と国民世論の動向によって決まるとみられる。現在の問題が解決されなければ、公捜処廃止の議論がさらに勢いを増す可能性がある。一方で、公捜処の捜査権を拡大し、独立性を強化する方向に進めば、存続の可能性も高まるとみられる。

検察出身の弁護士であるアン・ヨンリム氏は「今必要なのは、拙速な廃止ではなく、捜査権の調整によって発生した重複捜査の問題を解決することだ。公捜処廃止法案が発議されても、野党が国会の過半数を占める状況では、実際に廃止するのは容易ではない」と指摘した。

そして「まともな捜査力を持った検事も不足しているため、高位公職者に対する捜査を進行するのも容易ではない。公捜処が信頼を回復するためには、自浄努力を行うか、外部からの改革を受けるなど、抜本的な措置が必要だ」と述べた。

(記事提供=時事ジャーナル)

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