これだけ審議が長引くのは「棄却か却下だから」との意見も…韓国・尹大統領の弾劾審判、飛び交う3つの憶測

2025年03月20日 政治 #時事ジャーナル
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尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾審判の判決が迫るなか、過去の大統領弾劾審判と比較して審理期間が長くなっており、その理由について世間の関心が高まっている。

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憲法裁判所での審議が長引くにつれ、瑞草洞(ソチョドン、憲法裁判所がある地域)や汝矣島(ヨウィド、国会がある地域)を中心に、様々な憶測が飛び交っている状況だ。

憲法裁判所は、憲法裁判所法第38条に基づき、事件受理後180日以内に判決を下さなければならない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の場合は判決までに63日、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の場合は91日を要した。

もし今週中ではなく、3月最終週に判決が下される場合、審議は100日を超えることになる。

一部では、法的争点が多いために裁判官たちが結論を出せずにいるとの分析もある。しかし、法曹界の見方は異なる。

尹錫悦大統領
(写真=共同取材団)尹錫悦大統領

多くの法律関係者は、弾劾訴追の過程で内乱罪が除外されるなどの論争があったとしても、弾劾が認められる要件は十分に揃っているため、裁判官の間で罷免の決定について大きな意見の対立はないとみている。

宣告が遅れている理由として、全員一致で結論を出す必要があるにもかかわらず、その合意点を見出せていないためではないかとの見方が強まっている。国民の関心が高まるなかで、裁判官が個人名を掲げて少数意見を出すのは難しく、全員一致で結論を出すことが後の混乱を避けるためにも重要だとされている。

①全員一致で「罷免」の可能性

弁論過程では、国会の弾劾訴追団側の核心証人であったホン・ジャンウォン元国家情報院第一次長の証言の信憑性が揺らぎ、弾劾を立証する証拠が不足しているのではないかとの批判もあった。

しかし、尹大統領が非常戒厳令発動直後に国会に軍を投入し、立法府の機能を麻痺させようとした点は明白であり、罷免決定に影響を与えることはないとの見方が多い。

審理が続くなか、尹大統領側は「反国家勢力を一掃するためだった」と主張した。しかし、実際に反国家勢力が国会や行政機関に侵入したという客観的証拠がないため、尹大統領側の弁護団が弾劾審判で戒厳令の正当性を十分に立証できなかったとの分析が出ている。

ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行
(写真=共同取材)ムン・ヒョンベ憲法裁判所長権限代行

検察出身のアン・ヨンリム弁護士は「主張を成り立たせるには証拠が必要だが、尹大統領側の弁護団の主張は論理性や説得力以前に、根拠が不足している」と指摘した。

一部では、憲法裁判所が罷免を決定すると国論が分裂することを考慮し、その選択肢を除外する可能性もあるとの見方がある。しかし、憲法裁判所は非常戒厳という超法規的措置の正当性を判断する機関であり、世論を基に判断することはないというのが専門家の一致した見解だ。

アン弁護士は「裁判官たちもニュースは見ているだろうが、判断は法に基づいて行われるはずだ」と述べた。

②「棄却」の可能性

これは与党を中心に出ている代表的な仮説だ。

3月19日、与党「国民の力」のユ・サンボム議員は「現状では、棄却や却下される可能性が高い構造になっていると判断している」と述べた。

少なくとも、6人の裁判官の意見が一致すれば判決を出せる状況にありながら、ここまで決定が遅れているということは、6人の意見が一致していないのではないかというのがこの主張の根拠となっている。

裁判所が3月7日に尹大統領の拘束取り消し請求を認め、釈放を決定したことを受けて、弾劾も「棄却される」との期待交じりの見方が本格的に広がり始めた。さらに、通常の審議期間を1週間以上超過したため、「裁判官の意見が激しく対立しているのではないか」との憶測が出回り、棄却説が急速に拡散している。

皮肉なことに、最大野党「共に民主党」を中心とした弾劾支持派の野党が、街頭集会やハンガーストライキを本格化させたことも、棄却説を後押しする要因となった。

ミン・ヒョンベ議員
(写真=李在明代表Facebook)ハンガーストライキを行い、病院に搬送された「共に民主党」ミン・ヒョンベ議員

当初、弾劾訴追案が可決され、弁論が行われた際には、野党内で棄却の可能性を公に語る議員はいなかった。多くの議員が、憲法裁判所が迅速に結論を出すと見ていたからだ。しかし、李在明代表の公職選挙法違反に関する控訴審判決が1週間後に迫り、野党の戦略も複雑になっている。

キム・ソジョン弁護士は「国会側は当初の弾劾訴追案に『内乱罪』を含めていたが、その後これを削除した。最も重要な弾劾事由とされた内乱罪を抜いたまま弾劾審判を進めること自体が議論の対象となっている」と指摘した。

さらに「主要証人の一人であったホン・ジャンウォン元国家情報院第一次長の証言が一貫性を失い、信憑性を欠いたことも影響を及ぼしている。朴槿恵元大統領の弾劾審判とは異なる要素が多い」と述べた。

③「却下」の可能性

高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は内乱罪の捜査権限を持たないにもかかわらず、手続き上の正当性を確保しないまま、尹大統領の捜査を進めたため、弾劾審判の判決にも影響を与える可能性があるとの見方もある。

しかし、尹大統領が受けている刑事裁判ではこの主張が認められ、「公訴棄却」となる可能性はあるものの、憲法裁判所の判断には影響を与えないと考えられている。

判決への対応をめぐる与野党の対立

国会が位置する汝矣島では、「憲法裁判所の決定を受け入れるべきだ」という主張と、「被害者である野党がなぜ受け入れなければならないのか」という主張が対立している。

「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長は3月17日、「弾劾が棄却された場合、暴動が起こると煽動する人々がいるが、共に民主党はこうした態度を改め、速やかに憲法裁判所の決定を受け入れると明言すべきだ」と述べた。

クォン・ヨンセ非常対策委員長(左)と李在明代表
(写真=大統領室通信写真記者団)クォン・ヨンセ非常対策委員長(左)と李在明代表

クォン・ソンドン院内代表も同日、「大統領弾劾の判決が下された後、現在の国家的混乱を収束させるためには、政界が弾劾審判の判決を正しく受け入れるべきだ」と強調した。

一方、『朝鮮日報』の記者出身で保守派の論客であるチョ・ガプジェ「チョ・ガプジェドットコム」代表は17日、「判決を受け入れるべきなのは加害者である尹錫悦だけだ。なぜ被害者である野党や国民、企業の代表が処分の結果を受け入れなければならないのか」と述べ、「野党と国民、企業の代表は被害者なのに、加害者と同等に扱い、『共に受け入れよう』というのは正義の原則に反する」と主張した。

「共に民主党」のキム・ミンソク最高委員は3月18日、「判決を受け入れると約束すべき本当の当事者は尹錫悦だ。自分とキム・ゴンヒ(大統領夫人)を守るためにこの騒動を起こした張本人ではないか」と述べ、尹大統領自身が直接判決を受け入れると約束すべきだと主張した。

弾劾審判の当事者である尹大統領側は18日、「結果とその理由がわからない状況で、事前に意見を述べるのは難しい」とし、「判決前に受け入れるかどうかについての立場を示す計画はない」と述べた。

大統領府も「落ち着いて見守る」「弁護団と尹大統領が協議すべき問題だ」とだけ、短くコメントした。

(記事提供=時事ジャーナル)

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