韓国文学界に激震!! 三島由紀夫の『憂国』を盗用した大物女性作家への疑惑

2016年01月19日 話題
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2015年6月、韓国文学界で15年以上も触れられなかった盗作問題がネット上で炎上した。

渦中の人物は、韓国を代表する女流作家・申京淑(シン・ギョンスク)。彼女の短編小説『伝説』が、三島由紀夫の短編小説『憂国』の一部を盗用している疑惑が浮上したのだ。

火をつけたのは、『ハフィントンポスト』韓国版に掲載された「偶像の闇、文学の堕落」という記事。

筆者である小説家は、次の文章を比較している。

「二人とも実に健康な若い肉体を持っていたから、その交情は激しく、夜ばかりか、演習のかえりの埃だらけの軍服を脱ぐ間ももどかしく、帰宅するなり中尉は新妻をその場に押し倒すことも一再でなかった。麗子もよくこれに応えた。最初の夜から一ト月をすぎるかすぎぬに、麗子は喜びを知り、中尉もそれを知って喜んだ。」(三島由紀夫『憂国』より)

「二人とも健康な肉体の持ち主だった。彼らの夜は激烈だった。外から帰ってきた男は土埃のついた顔を洗う暇も惜しんで、いきなり女を押し倒すのが毎度のことだった。初夜から2ヶ月あまり、女はすでに喜びを知る体になった。女の清逸な美しさの中に、官能が芳しく豊かに染み込んだ。その実りは歌を歌う女の声にも脂っこく染み入り、もはや女が歌うのではなく、歌が女に吸われるようだった。女の変化を最も喜んだのはもちろん、男である。」(申京淑『伝説』より)

ネット上では「残念ながらパクリ確定」という意見が多く、作家や出版社に猛烈な非難の声が浴びせられた。

「伝説」が収録された申京淑の短編小説集『ジャガイモを食べる人々』

そもそも1985年にデビューした申氏は、韓国で最も売れている女性作家の一人だ。

代表作『母をお願い』(2009年)は日本を含め22カ国で翻訳出版されるなど、韓国文壇の権威ともいえる。しかし、作品を発表するたびに盗作疑惑が持ち上がっており、文学界ではそのことを事実上黙認してきた。

実は2000年にも盗作疑惑が?

騒動になった『伝説』は1996年発表の作品だが、実は2000年に、ある評論家が今回と同じく盗作疑惑を提起していた。

「今回と同じ問題を15年前に指摘しました。けれども、文壇の内部ではそれを知っていながら、何も変えようとはしなかった。今回の世間の反応に驚いています。15年も前のことなのに、ここまで騒がれると逆に途方に暮れますね」

当時はインターネットがあまり普及していなかったため、盗作問題が一般人に知られることはなかった。彼女はその間、精力的に執筆活動を行い、大手出版社や文壇に対する影響力を広げ、“国民的作家”の称号を獲得した。

ただ、そんな作家だからこそ、韓国人の怒りと驚きは収まらない。

当の申氏は盗作問題に対し、最初のインタビューでは「三島由紀夫は、『金閣寺』以外は読んだことのない作家。いくら記憶をたどっても『憂国』を読んだ覚えはない」とのコメントで火消しを図ったが、のちに「文章を何度も照らし合わせてみた結果、盗作疑惑が提起されても仕方ないと思った。いまや私も自分の記憶を信用できない状態」と弁解を述べるありさま。

その対応にも、不満の声が上がっている。

常に盗作疑惑を抱えながら、彼女が今まで自由に活動を続けられたのは、いったいなぜか。

申氏は、韓国の文学系三大出版社の看板作家でもある。莫大な利益をもたらす彼女を、各出版社はマネジャー役を買って出るほど積極的に守ってきた。

今回の一件に関しても問題の作品集を出した出版社は、「盗作と判断する根拠が弱い」と真っ先に申氏を弁護したが、ネットで大炎上すると「盗作の疑いを連想させるような内容であることは認める」という曖昧な謝罪文を発表。さらに非難を受ける事態になった。

一般人はもちろん、出版社の社員を名乗る人物や作家、評論家たちのSNSでは「よりによってパクったのが日本の右翼思想を持つ三島由紀夫だなんて、国の恥だ」「申京淑も出版社も、両方とも言っていることがチンプンカンプン。国民をバカにしているだろ」「15年前にしっかり反省してれば、こんな騒ぎにはならなかったのに」といった非難のコメントが絶えない。

まさに、“文学界の悲劇”とまでいわれる状況だったのだ。

申氏の名誉の回復は簡単ではないだろう。こんな状況では、韓国人が密かに期待しているノーベル文学賞受賞も当分は難しいかもしれない。

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