いよいよ2月23日から開幕するAFCチャンピオンズリーグ。韓国でも注目が高く、Kリーグ勢からは全北現代(リーグ戦1位)、水原三星(リーグ戦2位)、FCソウル(FAカップ優勝)、浦項スティーラーズ(リーグ戦3位、プレーオフを勝利して本選へ)の4クラブが出場するが、今季のACLはKリーグにとって正念場になりそうだ。
というのも昨年、Kリーグではその存在価値を巡ってさまざまな意見が飛び交っている。昨年夏には「Kリーグはセーリング・リーグに成り下がってしまった」と嘆く声が起きた。
リーグの主軸選手たちが日本、中東、中国などに次々と引き抜かれていく状況は、「Kリーグ・エクソダス(Exodus=大脱出)」と呼ばれたほどだった。
しかも、近年は各クラブが運営面で厳しい状況にある。
Kリーグのほとんどがヒュンダイ、サムスン、SK、ポスコ、GSといった一流財閥傘下の“企業クラブ”なのだが、韓国経済の悪化でそれら一流財閥が業績不振にあり、その母体企業の経営難がそのままKリーグの各クラブの運営状態にも悪影響を及ぼしている。あの名門・水原三星すらも予算削減でかなり苦しい立場に立たされている状態だ。
奇しくもKリーグ勢から今季ACLに出場するのは企業クラブばかり。
だが、その財政事情のせいか、あっと驚くような戦力補強を実施したクラブは少ない。強いてあげるとすれば、Kリーグ2連覇中の全北現代ぐらいだろう。
全北現代が補強に積極的なのは、ACL制覇を強く意識しているためだ。全北現代の母体企業はヒュンダイ自動車。ヒュンダイ自動車は全世界150カ国に自動車を輸出しているヒュンダイ- キア自動車グループ宣伝のため、 ACLを重視しているとされており、 全北現代がACLを制した2006年時の経済波及効果は約600億ウォンにのぼるという調査結果もあったほど。現在、Kリーグでは多くのクラブがその存在意義が問われているが、少なくとも全北現代は親会社からも地方自治体からも愛されているようだ。
そのため現在でもACLを重視しており、昨季シーズン中にもアスレチック・ビルバオでのプレー経験もあるスペイン人FWウルコ・ベラ、韓国代表でカタール・リーグでプレーしていたイ・グノ、2008年~2012年まで全北に所属したあとUEAに渡ったブラジル人MFルイスなど、一説には300億ウォンを使って緊急補強した。
それでも準々決勝でガンバ大阪に敗れてACL制覇を逃した全北はシーズンオフ、大物外国人の獲得にも動いたとされる。
韓国メディアの報道によると、ロビン・ファンペルシーとフェルナンド・トーレスがその候補として上がり、交渉のテーブルにも立ったらしい。ただ、年俸550万ユーロ以上という条件で折り合いがつかず、結局は頓挫したものの、代って現役韓国代表や各クラブの主力選手を大量に引き抜いている。
元Jリーガーのキム・ボギョン、キム・チャンス、全南ドラゴンズからFWイ・ジョンホとDFイム・ジョンウン、済州ユナイテッドからブラジル人FWロペス、さらには蔚山現代から韓国代表の長身FWキム・シンウクも獲得。弱点とされてきた守備的MFにもオーストラリア代表のエリック・パータルを補強した。
それだけにチームを率いるチェ・ガンヒ監督もACL制覇に意欲を見せる。
先日、全北現代と新たに5年間の再契約を交わした指揮官は「今季はACLとリーグ3連覇が目標だ」と高らかに宣言した。
もっとも、全北現代がACLを制するためには、Jリーグ勢や中国勢を打ち破っていかなければならない。特に全北は近年、Jリーグ勢に苦戦している。
全北の対Jリーグ勢通算成績は6勝6分14敗。2010年以降になると、4勝3分11敗とさらに分が悪い。全北はFC東京と同じグループEに属するが、FC東京には2009年に全北現代でプレーしたハ・デソンもいることから、韓国メディアは「“知韓派”に注意せよ!!」(『聯合ニュース』)と警戒を強めている。
昨季ACLでは3クラブがラウンド16で姿を消し、頼みの全北現代までガンバ大阪に敗れ、「7年ぶりに4強進出クラブがゼロ、決まり悪い引き立て役になったKリーグ」(ネットニュース『news1』)、「1強まで崩れたKリーグ、アジア・チャンピオンは夢なのか」(ネットニュース『ノーカットニュース』)と、危機説が叫ばれたKリーグ。いずれにしても今季のACLは、全北現代をはじめとするKリーグ勢にとっては正念場になりそうな気配だ。
(文=慎 武宏)
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