キム・ヨナの出現でフィギュアスケートが絶大な人気を誇る韓国。だが、実際にはフィギュアスケート“不毛の地”と呼ばれて久しいことをご存じだろうか。
キム・ヨナが脚光を浴びたことはあったが、彼女の活躍は例外的なもので、全体のレベルは決して高いとはいえない。
北京五輪でも、女子シングル2枠、男子シングル2枠の出場権を獲得したものの、メダルが確実視される選手はいない。
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なぜ、韓国ではフィギュアが発展しないのか。
最も大きな要因としては、選手が競技に打ち込める環境が整っていないことがあるだろう。2010年に開かれたG20ソウル・サミットで広報大使を務めた際、キム・ヨナが李明博元大統領に話した言葉が象徴的だ。
「フィギュア選手が練習できる専用リンクを作っていただけませんか」
キム・ヨナがそう発言したくなるのも無理はない。
というのも韓国代表のフィギュア選手たちは、泰陵(テルン)選手村スケートリンクで練習していることが多いのだが、このリンクはショートトラックやアイスホッケー競技と共同で使用しているのだ。
また、リンクの状態も安定せず、選手の間では「天気によって氷の質があまりに変わるので練習に支障がある」と不満が溜まっているのだという。
日本の浅田真央が母校・中京大のアイススケート専用リンクで自由に練習できていたことと比べると、その環境は十分だとはいえないだろう。
もっとも、それでも代表選手はまだ良いほうだ。
代表に選出されていない選手たちは、各地のスケート場をその都度借りて練習しているのである。
今回の北京五輪で五輪初出場となるユ・ヨンが歴代最年少優勝(当時11歳)を達成した際には、彼女が年齢制限によって代表入りできず、泰陵選手村スケートリンクを使用できていないとして物議を醸していた。
フィギュア選手のマネージメント会社であるAll That Sportsの関係者は、「フィギュアに適した氷の質は、アイスホッケーなどとは異なります。幼い選手たちが韓国での練習を経て初めて国際大会に出場すると、フィギュアに最適化されたリンクに馴染めず何度もミスをしてしまうほどです」と証言している。
実際、北米やロシアなどのフィギュア先進国には、自治体が運営するフィギュア専用リンクが存在している。リンク設備が不十分であることは、韓国フィギュアのレベルが上がらない一因だといえるだろう。
韓国メディア『マニアリポート』で取材部長を務めるイ・ウンギョン氏はかつて、『NAVER SPORTS』で連載中のコラムの中で、こう綴ったことがあった。
「日本も北米やロシアに比べると、アイスリンクが豊富な方ではない。しかし、韓国の立場からすれば、日本でさえ羨ましい」
ただ、問題はリンクが不足していることのほかにもある。選手を育成するシステムも未熟だ。
例えば日本には、1992年からスタートした日本スケート連盟主催の「全国有望新人発掘合宿」がある。荒川静香や浅田真央、羽生結弦まで日本を代表する選手たちが輩出されている強化プログラムだ。
また、ロシアを見ても、2010年のバンクーバー五輪以降、代表レベルのエリート選手たちが練習するクラブではコーチの給与を市が負担するなど、公的なバックアップが充実している。“フィギュア世界女王”メドベージェワもこの政策の中で育成された選手だ。
しかし、韓国ではこうした試みは見られない。キム・ヨナも世界的に成功してからはスポンサー収入などを得るようになったが、そこまでの道のりは、自費で国内外での練習を行うなど困難を極めた。
経費の問題は、アイスリンクが不足している問題とも直結している。大部分がソウルで生活しているフィギュア選手たちは、練習のために地方のリンクに移動するとなれば、コーチの移動費や宿泊費、さらに未成年者の場合は保護者の分まで負担しなくてはならないのだ。
前出のイ・ウンギョン氏は、こう嘆いていた。
「結局、韓国フィギュアの国際的な競争力は、選手個々人の直接的なお金と時間、努力によってのみ成長している」
ただ、それでも韓国がフィギュアスケートにかける期待が大きいのは事実だ。期待ばかりが膨らみ続ている問題もあるが、はたして韓国フィギュアの環境は改善されるだろうか。
引き続き、注目していきたい。
(文=サーチコリアニュース編集部)
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