AI技術を利用して他人の顔を映像や画像に不正に合成する技術「ディープフェイク」が社会的な問題となっている韓国で、今度は地方議会議員を対象にした被害が相次いでいる。
11月17日、警察庁によると、今月に入ってソウル、仁川(インチョン)、釜山(プサン)、光州(クァンジュ)、大邱(テグ)などの基礎議会所属の30人がディープフェイクによる脅迫メールを受け、警察に届け出たため、ソウル警察庁サイバー犯罪捜査隊など各地方の警察が捜査を開始した。
被害者はすべて男性議員とされており、主な年齢層は20~40代だ。
今回のディープフェイク脅迫は、主に電子メールで行われた。メールには「あなたの犯罪の証拠を持っている」「どのような影響があるか知っているはずだ」「見たらすぐに連絡しろ」といった脅迫メッセージとともに、性的搾取画像に議員の顔を合成した不法合成物が添付されていた。
発信者は、この不法合成物を削除する代価として5万ドル(約770万円)相当の暗号通貨を要求し、QRコードを送ってアクセスを促したとされている。
ディープフェイクに使われた写真の多くは、その議員が地方議会のウェブサイトに載せた写真で、脅迫メッセージが送られたメールアドレスも議員のウェブサイトに公開されているものだった。
警察は、相次いで送られている脅迫メールが同一の人物や組織から送られたものかどうかについても捜査中だ。
韓国では現在、ディープフェイクの問題が深刻化している。オンラインの特性上、ディープフェイク動画が一度拡散してしまえば、完全に消去することが難しい。
何よりも対応が間に合わない現状もある。デジタル性犯罪物の削除を求める被害者の要請が年々急増しているなかで、主管官庁である女性家族部が来年度の関連予算を削減している有様なのだ。
女性家族部傘下の「デジタル性犯罪被害者支援センター」に寄せられたデジタル性犯罪物の削除要請件数は、今年1月から6月までの6カ月間で計16万5095件の削除要請が受理された。このままのペースで推移すれば、前年の1.5倍増となる。
しかしデジタル性犯罪物の削除支援に関する来年度の予算案は、今年に比べ2億ウォン(約2200万円)削減し、32億6900万ウォン(約3億6200万円)で編成されるなど、対応が遅れている。2023年も全体の31.2%にあたる7万5922件が削除されなかったと集計された。
被害が増えるも対策が追い付いていない状況のなかで、今度は地方議員までターゲットにされたことになる。将来的には国会議員や高位公職者を標的に拡大する可能性が高い。
ディープフェイク問題がこれ以上、深刻化する前に断固とした対応が急務だ。
(文=サーチコリアニュース編集部O)
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